6 / 8
5話 ハンターと加護の謎
しおりを挟むレクスを館に残し、俺はドラゴンの様子を見にきた。どうやらだいぶ回復したようで、死霊たちと呑気に戯れていた。
『よう火龍、だいぶ元気になったな』
『お主は……まだ名前を聞いておらんかったが、何と礼を言ったらよいか……』
『俺はジニアス、礼なんかいらないよ。それより、ちょっと聞きたいことがあるんだけど』
『吾輩は神龍のフォボス、して聞きたい事とは?』
上位だとは思ったが神龍かよ、その神龍がなぜ手負いだったのか――
『フォボスか、で、その神龍がどうして傷だらけだったんだ? それと、どこから来た?』
『吾輩は洞窟に棲んでおった、そこへ人間たちが訪れるようになり、いつしか邪気によって魔物が棲みつき、ダンジョンと呼ばれるようになった』
なるほど、洞窟がダンジョンになったってことか。大体の原因は人間が関わっている、冒険者という職業が大半の時代だったからだろう。
だとすると、フォボスがラスボスってことになるが、レクスのいう賢者と戦ったドラゴンなのだろうか――
『ふ~ん、そうなんだ――あのさ、ちょっとした昔話があってね、ラスボスと戦った賢者が、ダンジョンごと消えたってことらしいんだけど、それってもしかして、フォボスが関係してたりする?』
フォボスは暫し沈黙する――
『昔話か――あれは、冒険者がいきなり戦いを挑んできおってな、この傷はその時に負ったものだ。確かエルフォルクという賢者もいたと思うが……』
レクスの予想は的中した。でも戦ったのは冒険者で賢者ではないらしい。しかし、どうも記憶が曖昧みたいだが、もう少し詳しい情報が欲しい。
『その賢者はその時どうなったか、覚えてる?』
『……あの時、吾輩より先に、賢者は杖をかざし、別の異空間を呼び出したように見えたが……』
『異空間?』
『ああ思い出したぞ、吾輩は咄嗟に転移魔法を使ったのだ。だがここまで時間の空白が生じるとは思わなんだ、これは異空間による影響やも知れんな』
神龍が言うんだ、信憑性はある。なら賢者も冒険者も生きている可能性があるってことだ。
でも、異世界事情なんて俺は知らないし、ましてや冒険者もダンジョンとかも、テレビやゲームで得た知識しかない、それも低レベルの初級編だ。
今は話を聞くに留めたほうが良さそうだ。
そうだ、女神の言っていた"イリーガルハンター"のことを聞いてみよう、神龍なら何か知っているかもしれない。
『それとさ、フォボスはイリーガルハンターって知ってる?』
『また随分とレアな職種だな。確か"非合法の狩人"だったか、死者を蘇らせ、魔力を持つものを狩る闇のハンターだ』
『へえ~』
魔力を持つもの、まさに今の俺だ。だから女神は要注意と言ったのか――
『ただ、ハンターになるには条件がある。治癒士の魔力と、黒星石という、特殊な鉱石を持っていなければならない』
『なるほど、なんにせよ、俺たちには脅威だ』
『そうだが、特別な加護があれば対処可能だ』
おっ?
『へー、特別なねえ……その加護ってどんな?』
『冥王の加護だ。魂の管理人で、死に関係するあらゆる状態を無効化する力を持つ。つまり無敵状態になるということだ』
ちょっと、何そのおいしい話――正に特典。これは相当レアな加護なのでは?
ということで、俺は無謀にも、フォボスにこれまでの経緯と俺の正体を暴露した。
するとフォボスはカッカと笑い、俺の転生話を興味津々に聞いていた。
どうやら神龍でも、"異端者"という転生スキルは知らないようだった。
それと、加護を授かったことは秘密にした、まだ俺の身に何も起こっていないからだ。
フォボスは物知りだ、きっと必要な存在になる。
『どうだろう、俺と交友関係を結んでくれない? フォボスの知恵と力を借りたいんだ』
『――良かろう、吾輩もこの世を観てみたい。交友とは友ということで良いか? 吾輩はずっと友を望んでいたのだ』
『うん、友達としてよろしくな!』
それから、俺の正体はフォボスにしか明かしていないとの言うと、フォボスは大層よろこんで、俺を友達から親友に昇格させた。
それなりに信頼は得られたらしい。
ついでに俺の家族構成も話しておいた。当然と魔王の存在は承知していたが、シルヴァ母さんについては、ダンジョンで見かけたくらいにしか覚えていないという。
『そうか、あのエルフは賢者の仲間か……』
俺が思うに、賢者がダンジョンを消滅させた、そう考えれはダンジョンが忽然と消えた謎も筋が通る。しかしなぜ冒険者まで……。
とにかくと、俺はフォボスには明日の朝また来ると言って樹海を離れた。
さて、レクスにフォボスのことをどう話そうか、流石にノンフィクションはキツイだろうから、脚色を交えて話すとしよう。
翌朝――
俺は朝食の時に、レクスにフォボスのことを話すと、少し驚いた様子だったが、その後はただ黙って聞いていた。きっとシルヴァ母さんのことを考えていたのだろう。
食事が済むと、俺とレクスは樹海へ向かった。見れば死霊に囲まれた人間の姿があった。
「……マジ?」
おそらくフォボスと思われる、妖艶でピッカピカのイケメン野郎が俺に手を振る。
異世界って……。
「もしもしフォボスくん、その姿はなんぞや……」
「やあ、吾輩の親友ジニアス、おはよう。人間に化けた方が良かろうと思ってな」
レクスはあんぐりと口を開けて放心状態、まあそうなるよね。
「ほ、ほらレクス、神龍のフォボスに挨拶して」
「あ、はい、は、初めまして、執事のレクスでございます。この度はシルヴァ様にご協力くださるとのこと、誠にありがとうございます」
そう、レクスには消えたダンジョンの真相を探りにフォボスはやって来た、という設定にして話た。
フォボスには伝えていないけど察してくれたようで、上手く話を合わせてくれた。
「吾輩はジニアスに協力するのだ、間違えるでないぞ。其方は魔人と聞いたが、もしやマギの世界の魔人か?」
「あ、はい、良くご存知で。マギの世界でも神龍の方々は神秘で有名でございました、そのお方に認知されていたとは、恐悦至極に存じます」
あのさ、マギだかなんだか知らないが、名刺交換的な挨拶はやめろって、業界人かよ。
「ほらふたりとも、レクスはいつも通りで、フォボスはもっとフレンドリーに話すこと」
「了解した。ではレクスよ、暫し面倒になる、よろしく頼むな」
「お任せください」
やれやれ、ようやく一歩前進だ。
「坊ちゃま、そろそろクラブのお時間です」
半歩後退……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる