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「なんて顔をしているんだ」
そう言ったのはユーリだった。
私とユーリの間にいる人々が、私達の視線を遮らないように移動した。
「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」
「えっ?」
マヌケな音が私の口から零れていた。
婚約までの経緯を考えれば、あり得ない事だったから。
「何を言っているの? もう結婚式の招待状は出してあるのよ。 ただの結婚式とは違うのよ!! どれほど大切な事か分かっていなませんの?」
ニヤニヤと慌てる私を見る視線に私は絶望を覚えた。
ユーリとの婚約は決して愛情からではなく、大人の都合でしかなかった。 それでも私にとっては10歳からの全てがこの結婚のためにあったと言ってもよくて……私の全てが否定されたかのようで……苦しい……。
「あぁ、だから、結婚式はする。 だがお前とではない、彼女エリスとだ!! 僕はずっとお前ではなく彼女を愛していた。 彼女はお前とは違って繊細で儚くて……僕がいなければ生きていけない……。 だけどお前は違う!! 僕なんかどうでもいい。 ずっと、そうだった。 何時だって僕を放っていた!! その間、僕を支えてくれたのがエリスだったんだ」
ユーリと寄り添うエリスは、何時もの……頼りない表情で、不安そうにユーリを見つめていた。 ユーリは大丈夫とでも言うように何かを語りかけそして、エリスを抱きしめている。
「元々、家同士の約束。 僕の妻となるのは、お前でもエリスでも良いはずだ。 お前が望むなら今まで通り我が家で働いてもいい、僕の義姉となるのだから今まで通りの生活は保障しよう」
「実家は……どうするのよ……」
訳が分からなくなっていた。
私はオルエン商会の未来の当主と婚姻するはずだった。 実家であるロイド伯爵家の領地は気候が良く農作物が豊かな地域だが、それもインフラ管理と、商会との繋がりがあってこその豊かさ……肥沃な大地は何時だって自然災害と共にあった。
「何の問題もない。 彼女は予定通り女伯爵の地位に就く」
「では商会の方は?」
「うるさいな!! 問題はないと言っているだろう!! 僕がオルエン家で、僕が商会そのものだ!! 伯爵家が商会となり、商会が伯爵家となる。 これまで以上の結びつきでより良い成長を遂げるさ!! それより、本当にお前は可愛げがないな……婚約を破棄すると言っているのに、商会が、伯爵家が、そんなんだから……僕はお前との未来を考えられなかったんだ。 こんな強欲な女……幾ら家同士の約束と言っても愛せる訳がない」
「強欲……」
周囲の視線がユーリの言葉を肯定し私を責める。
伯爵家の娘として、貴族令嬢として、オルエン商会の未来の女夫人としての日々は忙しく、強欲とは無縁ではあったけれど、世間に見せていた華やかな姿の大半は何時だってエリスが担っていて……私ではないのだと、違うのだと言っても通用しないだろう。
彼女は私を演じ、私は彼女を演じていたのだから。
呆然としている私にユーリは続けた。
「だがエリスは違う。 未来の女伯爵でありながら、お前のような傲慢さはない!! 僕を支え、寄り添ってくれた。 女伯爵となるプレッシャーに悩むエリスは……オルエン家の当主となる僕を良く理解してくれた。 彼女は……僕にとってなくてはならない人になった。 それに比べてお前と言う奴は女らしさの欠片も無い欠陥品じゃないか!! そんなお前と結婚しなければならないと言われ、どれほど僕が絶望を感じ、苦悩の日々を送っていたか……」
ぐしゃりと髪をかきむしり、わざとらしい演技が繰り広げられていた。
「それは……」
悪かったですね。
冷ややかに言おうとすれば、私の言葉を双子の妹のエリスが遮る。
「ユーリ様!!」
責める妹の声が空々しい。
「あぁ、すまない……君の姉だと言うのに、余りに君と違い過ぎて……」
「ゴメンなさい……お姉さま。 全て私が、恋に落ちてしまった私達が悪いの。 私、彼の事が好きなの……愛してしまったの。 でも、いいでしょう? お姉さまは彼を愛していないのだから。 えぇ……お姉さまは、彼よりもお金を愛していたのでしょう? だから……。 いえ、違う……私はお姉さまを責めたかったのではないの……そう、謝りたかったの……ゴメンなさい。 私は彼が好き……愛している、愛し合っているのよ。 許して、お姉さま」
呆然とするしかなかった。
確かに愛しているかと言われれば、答えに詰まった……。 何しろ私は何時だって忙しくて……。 それでも、それは何時だってユーリとエリスのためで……。
頭の中が思考がグルグルと巡って、まともに考えがまとまらない。
こんなとき何を言えば良いのでしょう??
ボソボソとした囁き、向けられる視線の中には私への同情もあって、救われたと言う気持ちよりも惨めさだけが増していく。
夫と定められた相手なだけで、愛がどうこうなんて考えたこともない。 それでも……認める事が出来なかった。
「エリス!!」
「姉さま、姉さまなら、私の幸せを祝って下さいますわよね?」
疑いようもない言葉、何処までも甘ったるく甘え絡みついてくる。
こんなの認められる訳がない!! 私の人生はなんだったのよ!! そんな思いを遮って来る。
「私はお姉さまで、お姉さまは私。 私達は何時だって2人で1人なのだから、私の幸せはお姉さまの幸せでしょう?」
幼い頃から繰り返された言葉が、私を追い詰め……私の思いを声にする熱量を奪っていく。 その間もユーリは語り続けていた。
「あぁ、僕が君を愛し、君が僕を愛したばかりに……だけど、コレは止めようのない運命なんだ。 どうか傷つかないで……エリス。 いや……僕は君の悲しみも全て愛している」
「でも……私は、お姉さまとは違って、貴方を愛する事しかできない……ただ、貴方を愛するだけの女に過ぎない。 そんな私でも、本当にいいの?」
「君が、君で無ければ嫌なんだ。 そんな君が良いんだ」
二人の世界が繰り広げられていた。
三門芝居も他人事なら物語のように美しく思えるのかもしれない。 徐々に人々の思いが、2人を祝福する方向へと向かっていき、私は虚しさと共に途方に暮れ……祝福する事も、怒りに身を任せる事も出来ずにいた。
そんな私の耳元に優しい囁きが届いた。
「お茶でも一緒しませんか? お嬢さん」
きっと私達は、妹と弟の馬鹿馬鹿しい暴走に苦笑いするしかない……そんな顔をしていた事でしょう。
そう言ったのはユーリだった。
私とユーリの間にいる人々が、私達の視線を遮らないように移動した。
「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」
「えっ?」
マヌケな音が私の口から零れていた。
婚約までの経緯を考えれば、あり得ない事だったから。
「何を言っているの? もう結婚式の招待状は出してあるのよ。 ただの結婚式とは違うのよ!! どれほど大切な事か分かっていなませんの?」
ニヤニヤと慌てる私を見る視線に私は絶望を覚えた。
ユーリとの婚約は決して愛情からではなく、大人の都合でしかなかった。 それでも私にとっては10歳からの全てがこの結婚のためにあったと言ってもよくて……私の全てが否定されたかのようで……苦しい……。
「あぁ、だから、結婚式はする。 だがお前とではない、彼女エリスとだ!! 僕はずっとお前ではなく彼女を愛していた。 彼女はお前とは違って繊細で儚くて……僕がいなければ生きていけない……。 だけどお前は違う!! 僕なんかどうでもいい。 ずっと、そうだった。 何時だって僕を放っていた!! その間、僕を支えてくれたのがエリスだったんだ」
ユーリと寄り添うエリスは、何時もの……頼りない表情で、不安そうにユーリを見つめていた。 ユーリは大丈夫とでも言うように何かを語りかけそして、エリスを抱きしめている。
「元々、家同士の約束。 僕の妻となるのは、お前でもエリスでも良いはずだ。 お前が望むなら今まで通り我が家で働いてもいい、僕の義姉となるのだから今まで通りの生活は保障しよう」
「実家は……どうするのよ……」
訳が分からなくなっていた。
私はオルエン商会の未来の当主と婚姻するはずだった。 実家であるロイド伯爵家の領地は気候が良く農作物が豊かな地域だが、それもインフラ管理と、商会との繋がりがあってこその豊かさ……肥沃な大地は何時だって自然災害と共にあった。
「何の問題もない。 彼女は予定通り女伯爵の地位に就く」
「では商会の方は?」
「うるさいな!! 問題はないと言っているだろう!! 僕がオルエン家で、僕が商会そのものだ!! 伯爵家が商会となり、商会が伯爵家となる。 これまで以上の結びつきでより良い成長を遂げるさ!! それより、本当にお前は可愛げがないな……婚約を破棄すると言っているのに、商会が、伯爵家が、そんなんだから……僕はお前との未来を考えられなかったんだ。 こんな強欲な女……幾ら家同士の約束と言っても愛せる訳がない」
「強欲……」
周囲の視線がユーリの言葉を肯定し私を責める。
伯爵家の娘として、貴族令嬢として、オルエン商会の未来の女夫人としての日々は忙しく、強欲とは無縁ではあったけれど、世間に見せていた華やかな姿の大半は何時だってエリスが担っていて……私ではないのだと、違うのだと言っても通用しないだろう。
彼女は私を演じ、私は彼女を演じていたのだから。
呆然としている私にユーリは続けた。
「だがエリスは違う。 未来の女伯爵でありながら、お前のような傲慢さはない!! 僕を支え、寄り添ってくれた。 女伯爵となるプレッシャーに悩むエリスは……オルエン家の当主となる僕を良く理解してくれた。 彼女は……僕にとってなくてはならない人になった。 それに比べてお前と言う奴は女らしさの欠片も無い欠陥品じゃないか!! そんなお前と結婚しなければならないと言われ、どれほど僕が絶望を感じ、苦悩の日々を送っていたか……」
ぐしゃりと髪をかきむしり、わざとらしい演技が繰り広げられていた。
「それは……」
悪かったですね。
冷ややかに言おうとすれば、私の言葉を双子の妹のエリスが遮る。
「ユーリ様!!」
責める妹の声が空々しい。
「あぁ、すまない……君の姉だと言うのに、余りに君と違い過ぎて……」
「ゴメンなさい……お姉さま。 全て私が、恋に落ちてしまった私達が悪いの。 私、彼の事が好きなの……愛してしまったの。 でも、いいでしょう? お姉さまは彼を愛していないのだから。 えぇ……お姉さまは、彼よりもお金を愛していたのでしょう? だから……。 いえ、違う……私はお姉さまを責めたかったのではないの……そう、謝りたかったの……ゴメンなさい。 私は彼が好き……愛している、愛し合っているのよ。 許して、お姉さま」
呆然とするしかなかった。
確かに愛しているかと言われれば、答えに詰まった……。 何しろ私は何時だって忙しくて……。 それでも、それは何時だってユーリとエリスのためで……。
頭の中が思考がグルグルと巡って、まともに考えがまとまらない。
こんなとき何を言えば良いのでしょう??
ボソボソとした囁き、向けられる視線の中には私への同情もあって、救われたと言う気持ちよりも惨めさだけが増していく。
夫と定められた相手なだけで、愛がどうこうなんて考えたこともない。 それでも……認める事が出来なかった。
「エリス!!」
「姉さま、姉さまなら、私の幸せを祝って下さいますわよね?」
疑いようもない言葉、何処までも甘ったるく甘え絡みついてくる。
こんなの認められる訳がない!! 私の人生はなんだったのよ!! そんな思いを遮って来る。
「私はお姉さまで、お姉さまは私。 私達は何時だって2人で1人なのだから、私の幸せはお姉さまの幸せでしょう?」
幼い頃から繰り返された言葉が、私を追い詰め……私の思いを声にする熱量を奪っていく。 その間もユーリは語り続けていた。
「あぁ、僕が君を愛し、君が僕を愛したばかりに……だけど、コレは止めようのない運命なんだ。 どうか傷つかないで……エリス。 いや……僕は君の悲しみも全て愛している」
「でも……私は、お姉さまとは違って、貴方を愛する事しかできない……ただ、貴方を愛するだけの女に過ぎない。 そんな私でも、本当にいいの?」
「君が、君で無ければ嫌なんだ。 そんな君が良いんだ」
二人の世界が繰り広げられていた。
三門芝居も他人事なら物語のように美しく思えるのかもしれない。 徐々に人々の思いが、2人を祝福する方向へと向かっていき、私は虚しさと共に途方に暮れ……祝福する事も、怒りに身を任せる事も出来ずにいた。
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