親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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記憶と状況理解とゲーム知識。

16話『お母さんが仲間になった!』

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顔色が悪くなった私に、お母さんは申し訳なさそうに言った。



「実は、私も婚約破棄されたのよ」



私も申し訳ない顔をした。



「そうだろうと思った。

 ちなみに、お母さんの記憶はいつ戻ったの?」



お母さんは白い目をしてつぶやいた。





「婚約破棄された瞬間」





ふぁっ!? 



そ、それって、どうなの? 神様? 私よりヒドくない?

私もお母さんと同じ目をしていた。









(あれ? でも……)



「お母様はお父様と結婚してるわよね?」





お父様の話をするときは、なぜか口調がお上品になる。

シュンとしたお母さんは、かなり言い難いそうだった。





「貴女には複雑な話になるでしょうけど、私はバースを愛しているの。

 もちろん、前世のあの人も好きだったわ」



どちらかと言うと、お母さんのほうが複雑な顔をしていた。


「気にしないで、お母さん。

 私にはお父さんもお父様も両方本当の父親なんだから。

 それに、今世でもお母さんの子供になれたんだもん!超ラッキーだよね!」





そもそも、お父様がいなかったら、エミリアは産まれていないのだ。

まぁ、前世の父と兄があの後どうなったか気になるが……強く生きてくれ!



それに、前世の記憶があるぶん、お母さんのほうが複雑な心境だったと思う。

お母さんは少し安心したような表情に戻った。



「ありがとう、エミリア」



それから、紅茶を飲みながら少しだけ前世の話で談笑した。







「それで、いつ婚約破棄されそうなの?」



急に話が変わったり、戻ったりするのはお母さんのクセだ。





「その件についてね、ちょっと相談したいことがあるの」





私は、記憶が戻る前のこと。記憶が戻ったあとのことを話した。





「それで、会わせたい人がいるの」





お母さんは真剣に私の話を聞いてくれた。

そして、険しい顔つきで言った。



「わかったわ。つれてきなさい」



少しだけ、お母さんの顔色が悪かった……。



私が部屋を出ると、お母さんは侍女に今からお客様が来ることなど説明した。

玄関からではなく、地下室からと伝えると卒倒しそうなほど驚かれた。



そりゃあ、いつの間にか知らない男が地下室にいるんだもん。

ビックリするよね。

侍女たちは元は下級貴族のご令嬢だ。気絶耐性のパラメータが低いのだ。

え? 私? ナンノコトカナ?





コホン。





とりあえず、母達が談話室に移っていく音を聞きながら

地下室へと向かった。





■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■











地下室では、ポットに作っておいた紅茶をほとんど飲み干した魔王様がいた。



「ベリアル様」



魔王ベリアル様に声をかけると、ティーカップの残りを優雅に流し込んだ。



「エミリア嬢。どうだった?」



とっても絵になるシーンです。ハイ。

ソーサーにカップを置いたのを見計らって返事を返す。



「母が会いたいそうです」





「君はすこし変わったな」





ん? どういうことだろう?

キョトンとして、そう問いかけようとしたけど、

ベリアル様は席を立って優雅に手を差し出す。



「さぁ、行こうか。レディ」



エスコートする気満々で手を伸ばされた。断らせない目力です。



どうしよう? そもそも、大丈夫なのだろうか?

エドワード殿下以外の人にエスコートしてもらうのは初めてだった。

そんな不安を感じ取ったベリアル様は安心させるように言った。



「エミリア嬢。私は君の護衛だ。これくらいは当然だろう?」


有無を言わさない笑顔を向けられてしまった。





ぐはぁ……。 笑顔に打ち抜かれました。



あきまへん。勝てへんて。やっぱりイケメンは言うことが違いますなぁ。



興奮と羞恥のせいで、変な関西弁? が出てしまった。





ベリアル様に完璧なエスコートをされて、私は談話室にたどり着いた。

心臓バクバク。目の前はふわふわ。談話室までの距離がすっごく長く感じた。


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