親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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砦終了~新入生編

229話『交流親善会 2』

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私はダンスが終わり次第、ダンス相手と分かれたと同時に

ナナリーとマリク君に合図を送る。

と言っても、ずっと見つめているだけだけれど。

2人は私の視線に気づいて、近づいて来てくれた。



「エミリア……! じゃなかった。

 ヴォルステイン家、侯爵令嬢エミリア様、ご機嫌麗しゅう存じます」



美しい所作でカーテシーを行うナナリー。

その横では、優しい笑みを湛えたマリク君も同じく会釈している。



「ランゲス男爵令嬢、ナナリー様、

 セドリーガン男爵令息、マリク様、ごきげんよう」



同じく美しく見える所作でカーテシーを返す。

ナナリーの成長具合に顔がほころぶね。



「お二人共、とっても素敵なダンスでしたね」



私の言葉に、苦笑ぎみのマリク君とナナリー。



「エミリア~、あれどうにかならないの?」



格式ばった挨拶が終わったらあとは普通に会話してもいいからね。

ナナリーの言葉が崩れても、大丈夫よ!


ナナリーが差すのは、ダンスに誘われるマリエラの姿だった。



「ダンスのお誘いは仕方ありませんわ。

 誘われるということは、それだけナナリーさんが魅力的なのです。

 断ってもよろしいのですが、よっぽどの理由が無い限りは

 我慢しましょうね?」



「そうですよね。

 こればっかりは仕方有りません」



マリク君も疲れた表情で頷いている。



今は、私達が話しているから、誰も誘っては来ないが。

話の区切り次第では、直ぐにでも誘われそうな位置取りをしている

令息令嬢達の姿があった。


なので、あまり変な事は口には出せないのだ。



「だから、マリク君にエスコートをお願いしたのに!」



「だからって、僕とばかり踊っているわけにはいきませんよ?」



プリプリするナナリーに向かって困った様子のマリク君。

しかし、まんざらでもなさそう。



あれ?



「え? 最初から最後までマリク君と踊っていたの?」



「そうよ?」



それがどうした? という表情のナナリーに対して、

私はマリク君に視線を移した。


私の視線を受け取ったマリク君は顔がボォッ! と音が出そうなくらい

真っ赤になった。


おやおやおや~?



「えーっと、最初は、ご両親と踊ったとかではないのですよね?」



「違うわよ?」



「誘ったのはナナリーから?」



「違うわ。 ダンスはマリク君が誘ってくれたの!」



ナンダッテー!!?

でも、このナナリーの様子からして、最初のダンスの意味を分かっていない!?



「ナ、ナナリー!、えっと、少しいいですか?」



ハテナマークを頭に浮かべて近寄るナナリーに耳打ちする。

内容は、もちろん最初のダンスの意味ね。

話の内容を理解したナナリーは真っ赤になった。

次に、マリク君を凝視する。



「えっと、ナナリーさん、

 正式な手続きは等は後日改めてナナリーさんのご実家にも窺います」



誠意を見せるマリク君、なんともかっこよすぎた。

丁度良く、新しい曲が流れ始め、初々しい2人はそのまま手を繋いで

ダンスホールへと戻って行った。



初々しい2人の姿に満腹になった私は、少しだけ休憩するために

近くに居た給仕からワイングラスを受け取る。


こうすることによって、少しだけ休憩しますの意味になるので、

空気を読んでくれる人はダンスに誘ってはこないのだ。


ゆっくりと壁際に移動する。

私の行動を遠くから見ていたベリアル様も近寄って来てくれた。


パートナーが隣に戻ってくれば、それ以上、他の人はダンスに誘えない。

パートナーに失礼だからね。

正直たすかった~!



「ベリアル様、疲れてませんか?」



「私は大丈夫だ。 エミリアはどうだ?」



「そうですね。

 エドワード殿下とマリエラに挨拶したらそろそろお暇しようかと」



「わかった」



私の提案に薄く微笑むベリアル様がまぶしー!



ダンスの終わるタイミングを見計らって、

ベリアル様と一緒にマリエラの方に向かう。



マリエラも私とベリアル様に気づいた様子で、近くにあった給仕から

ワイングラスを受け取っていた。

複数人の貴族男性からダンスの誘いを受けていたが、

少しだけ休ませて下さいと小さく断っている様子だった。



さすがというか、マリエラは人気だ。

ワイングラス持っているのに、誘われるってどんだけよ……。


まぁ、エドワード殿下の新しい婚約者様で、隣国の姫君のマリエラ。

少しでもマリエラを知りたいと思うのは当然ではあるけどね。




「コルニクス公爵令嬢、マリエラ様。 ご機嫌麗しゅう存じます。

 少しお話でもいかがでしょうか?」




「まぁ、ヴォルステイン侯爵令嬢、エミリア様、

 それにヴェルマ国王子、ベリアル様、ごきげんよう。

 私も貴女たちを探していたのよ。ぜひ、お話しましょう。

 私を楽しませて頂戴ね」




マリエラの言葉は傲慢な言い方に聞こえるかもしれないけれど、

これが、社交界でのマリエラの設定だ。



隣国の姫君であり、エドワード殿下の婚約者。

そして、時期王妃様なのだから、これくらいの傲慢な態度は

貴族令嬢なら当たり前で結構いる。


言葉遣いで、その令嬢がどんな育て方をされてきたかが少しだけ窺えるからね。

傲慢さは、家族に愛された証。洗練されたお淑やかさは、教育の証。

両方を備え持つならば、この世界の貴族にとってかなりの有料物件である。

現代日本ではウザがられる対象だろうけどね。



私とベリアル様は、マリエラを先頭に歩き出す。

王族専用の貴賓席へと向かう。


現在、イスとテーブルを使っているのは

アスト陛下とラナー王妃陛下、それと私の両親しかいないからね。


いくら他国からの使者といえど、王族がずっと座る場所には

長居したくないだろうから、貴賓席は、ほぼガラーンとしている。


ちなみに、私の家族だけはラナー様達と同じテーブルに座っている。

もう家族ぐるみの関係ではなくなったのに、なんて図々しいんだろうねー?

まぁ、両陛下が何も言わないから、それでいいんだろうけれど。



「まぁ、エミリアちゃん、マリエラちゃん!

 こちらにいらっしゃい!」



さっそく、ラナー様に見つかってしまいました。


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