猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第97話・分析

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「──ハァッ⋯! ハァッ⋯⋯!!」
 
 呼吸すら、苦しい。
 酷く疲労した肉体では、息を吸って吐くという動作すら難しく感じる。
 今まで経験してきた“疲労”というのは、大抵が激しい戦いによるものだったが⋯⋯はきついな。
 単に全速力で走り回って得る疲労は、なんの高揚感も無く、ただひたすらに苦しいぜ。
 ⋯⋯あー、くそっ。吐き気までしてきたぞ。
 
「──どうしたァ!! もう終わりかァ!?」
「たッ、大概しとけよマジで⋯⋯!!」

 迫り来るティガから踵(きびす)を返し、俺は走り出す。
 アイツは確かに良い奴なんだが、特訓中は容赦無く半殺しにくるモンだから恐怖だ。
 修行が始まってから3日は経つというのに、あの狂気的な笑顔には未だに慣れないぜ。

「悪くねぇッ! 今んトコは、上手く動けてるぞ!」
「じゃ、休憩にしてくれ!!」
「あぁいいぜ! あと1時間、俺に捕まらなかったらなッッ!!」
「は、はあーーっ!?」

 あと1時間だァ!? こちとらもう限界だっつうの!!
 身体もいう事聞かねーし、なんなら意識をマトモに保ってるのも厳しいんだよ!!
 あぁーーくッそが!! 上等だぜコノヤロー!! 
 残り1時間、捕まらなきゃいいだけの話なんだろ!?
 
「──やってやらァァ!!」
「ッハア!! よく言ったぜ、紅志(あかし)ィ!!」
 
 勢いよく咆哮(さけ)ぶ俺に対し、ティガは歯をギラつかせて嗤う。
 こうなってしまった以上、男として有言実行しなくては格好が付かない。
 この燗筒(かんとう) 紅志に、二言は無いぜっ!!

 
NOW  LOADING⋯


 ──魔王城、地下。
 広間の奥へと進み、薄暗い螺旋階段を降りたその先。
 古びた小さな扉の向こう側では、幼女が無数の資料を広げていた。
 彼女が行っているのは、オーガの能力の分析である。
 “神の力(エネルギー)”によって作られた、「攻撃転送空間」をどうにか突破する為、幼女は日々研究に注力しているのだった。

「──やっぱり、そっちの方法だと時間が掛かるか⋯⋯」

 眉を顰(ひそ)め、幼女は腕を組む。
 彼女の言う『そっちの方法』とは、オーガの「攻撃転送能力」の“突破”方法だった。

 ──“神の力”というモノがある。
 文字通り、神という存在特有のエネルギーであるソレは、人間や魔物、魔族のものとも性質が違う。
 現状、力を失っている幼女から見て、そのエネルギーから作り出されたオーガの「能力」は厄介極まりないモノだった。
 幼女達の住む“星のエネルギー”⋯⋯即ち“魔力”では、その「能力」に対する干渉が不可能だからだ。
 そこで幼女は目に付けたのは、オーガが刺客として寄越してくる転生者達である。
 彼らの中には、オーガ自らが分け与えた“神の力”が入っている。
 つまり、それを抽出する事ができれば、「能力」に干渉して強制的に解除する事も可能になってくるのだ。

 ──だが。
 ここで課題となったのが、オーガが転生者に施していた「支配」だった。
 常時監視されている転生者に接触すれば、此方の意図に気づかれる場合がある。
 なにより彼らは、万が一の時には自爆する様に仕組まれているのである。
 故に、今までの転生者には、紅志に対する試みと同じ事が出来なかった訳だ。   
 紅志という“魔物の転生者”が現れたからこそ、事態は急転。
 アリアが作っていた「支配解除の魔法」の使用が可能となり、道が大きく開(ひら)けたのである。
 
「良くも悪くも、予定通り⋯⋯か」

 幼女が考えていた作戦は、大きく2つ。
 1つが、先程彼女が『時間が掛かる』といったモノ。
 紅志の中の“神の力”を抽出し、アリア自身や魔王がオーガの「能力」を突破して戦うという作戦だ。  
 単純な話、膨大な魔力の上に“神の力”というグローブを被せる事で戦闘を可能にする訳である。
 しかし、その作戦には明確な欠点があった。
 それが、魔王やアリア程の魔力の持ち主では、“神の力”で自身の魔力を覆うのに『時間が掛かる』点だ。
 ごく僅かな“神の力”を分解や吸収をせず、上手く適応するには、流石の2人でも最低3年は掛かるのである。

 ──結果として、幼女はその作戦を断念。“もう1つの作戦”の決行をした。
 それが、“紅志自身をオーガより強くする”というモノである。
 “神の力”の所有者であれば、少なくとも分解や吸収をしてしまう恐れは無い。
 それならば、紅志がオーガの「能力」を“中和”させる事さえできれば、勝機も見えてくる筈だ、と。
 幼女はそう考えたのである。
(⋯⋯問題は、オーガがいつ動き出すか、か。
 作戦に気付かれた以上、近日中に動きを見せる可能性が高いのはあるけれど⋯⋯)
 未だ、紅志がオーガの「能力」を“中和”できるようになる方法は模索中。
 幼女としては、時間との勝負であった。
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