冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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10. 行こう、魔王城

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「ここから魔王城までは、どれぐらいかかるんですか?」

 もふもふ、もふもふ。
 私が乗るのは、巨大化したアビー!

 その姿を最初に見た時は、思わず「そんな能力を持っていたんですね!」とテンション高く抱きついてしまいました。
 そして全身で柔らかな毛並みを堪能。

『このペースで、半日もあれば辿り着けると思うよ』

 それなり以上の速度で、荒野を駆けながらアビーはそう答えました。
 馬車よりも、速度はやや速いでしょうか。
 見慣れない景色が、次から次へと流れていきます。

「それで……カーくんは、あれで良いんでしょうか?」
『ひめさま、カーくんのこと怖いんでしょ?』

 はい……。
 小さく頷きます。最初に襲われたときからの苦手意識はぬぐえず。

『なら抱っこして一緒に乗って、とは無理強いできないよ。
 大丈夫、カーくんは飛ぶのは得意だから』

 ごめんなさい……、とパタパタと必死で着いてくるカーくん目線を向けました。
 対してカーくんは「気にするな」とでも言うように、カァとひと鳴きで返答。

『ひめさまは、何も気にしないで大丈夫!
 今は体力を温存しておいて!』

 アビーからは、そんな言葉を投げかけられたのでした。
 
 ……体力を温存、なぜ?
 私は魔王城で何をさせられるの?

 次々とわいてくる疑問に答えは与えられず。
 アビーとカーくんからは、悪意は感じませんが……。

 この魔族領という地、さきほどから見慣れない魔族ともすれ違います。
 みんな、人間である私のことを物珍しげに見つめていました。

 魔族の王、どのような存在なのでしょう……。
 考えれば考えるだけ、悪い想像が膨らみます。

「アビー、魔王様はどんなお方なんですか?」
『内緒!』

 考えるだけ無駄ですね。
 魔王についての情報が何か手に入れば、何か対策が取れたかもしれません。
 でもアビーが話してくれない以上、それは無理な話。

 だとすれば、うだうだ考え込んでも建設的な結論が出るとは思えません。
 神経をすり減らすだけです。



 ――そんなことより、もふもふだ
 
 幼少期に触ったきり記憶を失ってしまった、憧れのもふもふがここにある。
 今は、この毛並みを堪能することにしましょう。
 思考はとにかくポジティブに。

 ……別名、思考停止とも言います。

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