冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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11. ゾンビの生首が飛んでくるんですよ!?

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『起きて、ひめさま! 右前にお城があるの見える?
 あれが魔王城だよ!』

 ……あれ?
 私、今眠っていましたか?

 ぼーっとする目をこすって、アビーの言った方向に目を向けて

「うわぁ……」

 思わず声を上げてしまいました。

 それは、たしかに「お城」と呼べるものでしょう。
 崖っぷちに立っているそれは、立派な建物ではあります。
 ただし、人間のお城とは違って"禍々しい"と表現できるようなもの。

『どう? 気に入ってもらえると嬉しいな』
「え、ええ。そうね。立派な建物だとは思います」

 相手を威圧するためにはね!

 心の声を飲み込んで、私はアビーの背中から飛び降りました。
 そして駆け寄ってきたアビーを抱っこ。

「アビーは……このお城を気に入っていますか?」
『うん! 魔王様のセンスの良さが滲み出る、素晴らしいお城だよ!』

 なるほど……。
 魔族のセンスだと、このお城は素晴らしいものなんですね。

 私はため息をつきながら、お城の入口に向かいました。



◇◆◇◆◇

「お待ちしておりました、フィーネ様。
 魔王様がお待ちです、どうぞこちらへ」

 お城の入口から出てきたのは、体が腐り落ちた人型モンスターでした。
 丁寧に一礼するゾンビに――

「で、出たーーー!!! シャイニング・レーー」
『ひめさまダメー!!』

 反射的に神聖魔法をぶっ放そうとしてしまいます。
 そんな私を慌てて止めたのはアビーでした。

「は、はじめまして。フィーネ・アレイドルですわ。
 ご丁寧なお出迎え、ありがとうございます」

 平常心、平常心。
 魔族の世界では、むしろ私が異端なんです……。
 悲鳴を上げたりしたら、相手に失礼ってもの!

 引きつった笑みを浮かべた私に、目の前のゾンビは何を思ったのか……

 首をゴキュンと取り外しました。
 そして、自らの首を振り被ると――

 私に向かって投擲。

「ギャーーーー!」

 元公爵令嬢、迫真の絶叫。
 だって突然、目の前にゾンビの生首が飛んでくるんですよ!?

 なんの嫌がらせですか!
 なんの嫌がらせなんですか!?

 キャッチしてしまいました。
 今すぐ放り捨てたい、トラウマになりそうです。

『ひめさま怯えてる! その首回収して、さっさと引っ込んで!?』
「むむ、緊張を解こうとして渾身の一発ギャグをやってみたのですが。
 不評でしたかね……」

 うわ、この首だけゾンビ。
 喋ったよ……。
 
 腕の中で、困ったように微笑むゾンビの生首。
 ドン引きでした。

「当たり前でしょ!?」

 なんてものを見せるのよ!
 首を回収に来たゾンビに、首を叩きつけるように返しました。

「も、もう少し丁寧に扱ってくれませんかね……」
「さっき自分で投げてたし、今更でしょ!?」

「いやあ、腐った部分が剝がれると修復もままならず。
 文字通り、身を削るギャグなんですよ」
「そ、そうですか。体を大事にしてくださいね……」

 ……よし! 深く考えたら負けだ。
 魔族の考えは、人間の尺度では図れない。

『うんうん、打ち解けたみたいで良かったよ』

 そんなやり取りをよそに、アビーはのんびりとひと言。
 うん……もう、それで良いわ。
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