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16. ひめさま歓迎会
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リリーネさんの早業でした。
魔族領を横断しボロボロになった私ですが、今ではリリーネさんの手により立派な令嬢姿に早変わり。
私は、姿見で自分の姿を確認し呆然とひとこと。
「随分と手慣れていらっしゃいますね」
「前勤めていた方は、それはもう随分とわがままなお嬢様でしたから。
似合わないドレスを選んでは、落ち込まれて。
そのくせ、似合わないと提言しようものなら駄々をこねて……」
ああ、と私は思わず頷いてしまいました。
いますよね、お茶会でときどき目にしたものです。
流行を追いかけるばかりで、自らの似合うかをまるで気にしない方。
……魔王城での暮らしではなく、前職での愚痴を最初に聞くことになるなんて。
「私の選んだドレス、似合わないならそう正直に言ってくださいね」
「とんでもないです!
素体が良いんですね、メイクのしがいもありました!
選ぶドレスもまさしくお似合いのもの。さすがフィーネ様です」
不安になった私に、リリーネさんはそう早口で返してきました。
「魔王様もお喜びになりますよ。では、こちらへどうぞ」
「はい……」
できればここでリリーネさんとずっと話してたい。
でもそういうわけにはいきません。
私がここに来たのは、魔王に会うため。
――ああ、ついに来てしまったのねこの時が。
◇◆◇◆◇
連れてこられたのは、パーティーでも開こうかという非常に大規模な部屋。
たくさんの料理が所狭しと並べられているのが見えます。
そして、その料理を囲むように
――ぶよぶよとした液状の生物
――肉体が崩れ落ちたゾンビと、骨だけになってしまった人型のもの
――カーくんによく似た鳥が空中を飛び回り
様々な魔族が、部屋の中を埋め尽くしていました。
「ええっと、ここに入っていくんですか?」
見なかったことにして回れ右したいのですが……。
手前には豚魔族の巨体が見えました。
あれは……オークの集団!
他の魔族が、何かを待つように料理には手を付けていないのをよそに。
知ったことじゃないとばかりに、わき目も振らずにガツガツと料理を口に運んでいます。
「ええ。本日の主役ですから」
冗談きついですよ、と縋るようにリリーネさんを見つめます。
が、リリーネさんはニコニコと良い笑顔。
おかしいです。
人間であるはずのリリーネさんとも、まるで分かり合えてる気がしません。
「はい……」
ええい、ままよ!
ここまで来てしまった以上、ここに入るしかないんですよ!
私は半ばやけくそで、魔族のひしめく空間に入ることにしました。
私がその部屋に入ると同時に、
パン、パン、パーン!
と、何かが破裂するような音が聞こえてきました。
その音に釣られて目を向けると――
【ようこそ、ひめさま!】
そう書かれた巨大な旗のようなものが視界に入りました。
それをくわえているのは猫魔族のアビー。
その周囲では舞うのは、色とりどりの紙吹雪。
――これは、いったい?
理解が追いつかず、アビーを見つめてしまいますが、アビーはこう続けました。
『それでは、今夜の【ひめさま歓迎会】の企画者を紹介するよ』
――ひめさま歓迎会?
ひめさま=私。歓迎会=歓迎会?
ようやく事態を飲み込みはじめた私ですが、やっぱり現実離れしたものを感じていて。
戸惑う私を、さらに予想外の言葉が追撃します。
「ほら、ヴァルフレア様!
魔王として歓迎パーティーを開くように命じたのはあなたです。
それなのに、肝心の主催者がいつまでそうして隠れてるんですか……」
ついて登場したのは呆れた口調でぼやくリリーネさん。
そして引っ張られるようにやって来たのは――
まず目を引くのは、肩からかけられた黒のマントでしょうか。
次いで人目を引く白髪。そこから覗く目線は、どこまでも冷たく。
でも……とても、美しい。
完成された陶芸品のように、スキのない鋭さを併せ持った美しさ。
そして、纏うのはどこまでも孤独な雰囲気。
――この方が魔王、ヴァルフレア
ごくり、とつばを飲み込みました。
魔族領を横断しボロボロになった私ですが、今ではリリーネさんの手により立派な令嬢姿に早変わり。
私は、姿見で自分の姿を確認し呆然とひとこと。
「随分と手慣れていらっしゃいますね」
「前勤めていた方は、それはもう随分とわがままなお嬢様でしたから。
似合わないドレスを選んでは、落ち込まれて。
そのくせ、似合わないと提言しようものなら駄々をこねて……」
ああ、と私は思わず頷いてしまいました。
いますよね、お茶会でときどき目にしたものです。
流行を追いかけるばかりで、自らの似合うかをまるで気にしない方。
……魔王城での暮らしではなく、前職での愚痴を最初に聞くことになるなんて。
「私の選んだドレス、似合わないならそう正直に言ってくださいね」
「とんでもないです!
素体が良いんですね、メイクのしがいもありました!
選ぶドレスもまさしくお似合いのもの。さすがフィーネ様です」
不安になった私に、リリーネさんはそう早口で返してきました。
「魔王様もお喜びになりますよ。では、こちらへどうぞ」
「はい……」
できればここでリリーネさんとずっと話してたい。
でもそういうわけにはいきません。
私がここに来たのは、魔王に会うため。
――ああ、ついに来てしまったのねこの時が。
◇◆◇◆◇
連れてこられたのは、パーティーでも開こうかという非常に大規模な部屋。
たくさんの料理が所狭しと並べられているのが見えます。
そして、その料理を囲むように
――ぶよぶよとした液状の生物
――肉体が崩れ落ちたゾンビと、骨だけになってしまった人型のもの
――カーくんによく似た鳥が空中を飛び回り
様々な魔族が、部屋の中を埋め尽くしていました。
「ええっと、ここに入っていくんですか?」
見なかったことにして回れ右したいのですが……。
手前には豚魔族の巨体が見えました。
あれは……オークの集団!
他の魔族が、何かを待つように料理には手を付けていないのをよそに。
知ったことじゃないとばかりに、わき目も振らずにガツガツと料理を口に運んでいます。
「ええ。本日の主役ですから」
冗談きついですよ、と縋るようにリリーネさんを見つめます。
が、リリーネさんはニコニコと良い笑顔。
おかしいです。
人間であるはずのリリーネさんとも、まるで分かり合えてる気がしません。
「はい……」
ええい、ままよ!
ここまで来てしまった以上、ここに入るしかないんですよ!
私は半ばやけくそで、魔族のひしめく空間に入ることにしました。
私がその部屋に入ると同時に、
パン、パン、パーン!
と、何かが破裂するような音が聞こえてきました。
その音に釣られて目を向けると――
【ようこそ、ひめさま!】
そう書かれた巨大な旗のようなものが視界に入りました。
それをくわえているのは猫魔族のアビー。
その周囲では舞うのは、色とりどりの紙吹雪。
――これは、いったい?
理解が追いつかず、アビーを見つめてしまいますが、アビーはこう続けました。
『それでは、今夜の【ひめさま歓迎会】の企画者を紹介するよ』
――ひめさま歓迎会?
ひめさま=私。歓迎会=歓迎会?
ようやく事態を飲み込みはじめた私ですが、やっぱり現実離れしたものを感じていて。
戸惑う私を、さらに予想外の言葉が追撃します。
「ほら、ヴァルフレア様!
魔王として歓迎パーティーを開くように命じたのはあなたです。
それなのに、肝心の主催者がいつまでそうして隠れてるんですか……」
ついて登場したのは呆れた口調でぼやくリリーネさん。
そして引っ張られるようにやって来たのは――
まず目を引くのは、肩からかけられた黒のマントでしょうか。
次いで人目を引く白髪。そこから覗く目線は、どこまでも冷たく。
でも……とても、美しい。
完成された陶芸品のように、スキのない鋭さを併せ持った美しさ。
そして、纏うのはどこまでも孤独な雰囲気。
――この方が魔王、ヴァルフレア
ごくり、とつばを飲み込みました。
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