冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

文字の大きさ
20 / 71

20. そんなことは望みません!

「ここを動かないで下さいね?
 魔王様、フィーネちゃんをしっかり守ってくださいね」

 そう言いながらリリーネさんが飲み物を取りに行きました。
 このままでは、気まずい沈黙の再来です。

「それにしても、魔族領がこんな場所だったなんて。
 魔王城でこんなパーティーが開かれているなんて、想像もしませんでした」
「予想されていたら、サプライズにならないからな」
「それもそうですね……」

 サプライズ、ですか。

「私が魔族領に追放されると決まったのは、本当に突然でした。
 アビーたちが、迎えてくれたのも今思えばタイミングが良すぎです。
 これほどのパーティー、よく準備出来ましたね」

 それは、ちょっとした疑問。
 あまりにタイミングが良すぎた気がしました。

「ふっ、あの国の内部には余の配下が入り込んでいる。
 その程度の情報、いくらでも知ることができる」

 え、何それ怖い。
 結界は、聖属性を持たぬ魔族には無効とアビーさんが言っていましたね。
 これからは魔族領で生きていくことになりますし、心強いと思うべきなのでしょうか。

「な、なんでスパイを送ったりなんかしたんですか?
 人間の国を滅ぼすつもりなんですか?」
「それがフィーネ嬢の望みなら」
「そ、そんなことは望みません!」
「そうか……」

 なんで少しだけ残念そうなんですかね!?
 やっぱり魔王様のことは、よく分かりません。

「フィーネ嬢は優しいのだな」
「何がですか?」
「あんな目に遭わされて。さんざんコケにされたんだ。
 王子とあの女に、復讐したいとは思わないのか?」
「ああ、そういうことですか……」

 私は、少しだけ考えてゆっくりと言葉を吐き出します。

「順当に王妃になって一生を終えるよりも、ここに来られて良かったと思ってます。
 あの国に住んでいる人には絶対にできない経験ですから」
「それでも、あの国がフィーネ嬢にしたことは無くならん」

「ヴァルフレア様? 誰かを恨み続けるというのは、エネルギーを使うものです。
 私が、優しいというわけではありません。
 あの馬鹿王子たちに、これ以上振り回されたくないだけです」

 ――せっかく解放されたんですから
 
 そんなことにエネルギーを使うより、私は前を向いて進んでいきたい。
 ここで魔王様や魔族と仲良くなりたいし、アビーを毎日もふもふしたい。



◇◆◇◆◇
 
「それにしてもヴァルフレア様は、魔族たちに慕われているんですね。
 私のような見ず知らずの人間の歓迎会のために、こんなにも多くの魔族が協力してくれているんですから」

 もっともバカ騒ぎが好きなだけ、という可能性もありますけどね。
 会場内は、一応主役であるはずの私を抜きに、大きな盛り上がりを見せていました。

 大柄のオーク2匹が、酒瓶を片手に何やら言い合い!
 煽るように、周囲を魔族が取り囲んでいます。
 飲み比べでも始まるのでしょうか? 

 酔っ払いの厄介さは、どこも変わらないんですね……。
 遠い目になりながら、そっと視線を戻すと

「やはり、ここで話しているよりもパーティーを満喫させるべきだったか。
 余のせいだ。気を遣わせてしまったな……」

 ヴァルフレア様は、申し訳なさそうな表情でそう言いました。
 いやいや、何をおっしゃいます!?
 オークの飲み比べに巻き込まれるとか地獄絵図ですからね!?
 
 ここにいる方が、間違いなくパーティーを楽しめてます!

「そんなことをおっしゃらないでください。
 こうして歓迎パーティーをヴァルフレア様と過ごせて、とても嬉しいです」

 これは本心でした。
 他人からの視線を気にする必要もなく。
 それどころか、外面を取り繕うことを止めて欲しいとすら言われた空間。
 このパーティー会場は、これまでになかった特別な場所のように感じられました。

「ヴァルフレア様は、私とこうして話しているのは退屈ですか?」
「待ちわびた。夢のような時間だ」
「え?」

「こほん、何でもないぞ。
 退屈ではない。
 人間との会話、非常に貴重な経験だ」

 え、今なんと……?
 聞き間違いでしょうか。
 そして、速攻で言い直しました魔王様。

 
 そんな会話をしながらリリーネさんを待っていると、なにやらこちらにやってくる魔族の集団が視界に入りました。
 先頭には、酔いが回った様子で陽気な表情を浮かべたオーク。
 なにやら料理がこってりと盛られた大皿を抱えています。

 ――うわ、面倒そうなのが来た……
感想 12

あなたにおすすめの小説

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった

歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。 病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も—— 全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。 十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。 「もう用済みだ、出ていけ」 フィーネは静かに屋敷を去った。 それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。 「前のお嬢様を返してください」

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

呪毒鑑定士の令嬢、冤罪で追放されたので国中の「呪い」を解除して回る

あめとおと
恋愛
王宮で地味に「呪物の鑑定と浄化」を担っていた伯爵令嬢。異世界から来た「聖女」に、汚いものを扱う不浄な女だと蔑まれ、婚約者の王子からも「お前の代わりは聖女がいる」と断罪・追放される。 しかし、彼女が密かに浄化していたのは、王宮の地下に溜まった建国以来の強大な呪いだった。彼女が去った瞬間、王宮は真っ黒な泥に沈み、王子たちの顔には消えない呪いの痣が浮き上がる。

不器量令嬢は、婚約破棄の断罪が面倒くさい

あんど もあ
ファンタジー
不器量なマルグリットは、婚約者の美しい第一王子からずっと容姿を貶められる日々。とうとう王立学園の卒業パーティーで王子に婚約破棄を宣言され、「王子から解放される! それいいかも!」となったが、続く断罪が面倒くさくて他の人に丸投げする事にする。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。