冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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27. そんな未来が来ないように、私にも何かさせて欲しいです

「あり得る可能性を恐れていては、何もできません」

 むしろ、本当に恐ろしいことは不意打ちのようにやって来るものです。
 突然、婚約破棄を宣告されて魔族領に追放されたりとか。

「ヴァルフレア様が望む未来があるのなら、そのために行動すれば良いんです」

 命の恩人に対して物凄く偉そうなことを言っています。
 だとしても、そのような理由で距離を置かれるのは本望ではありません。

「……それで良いのだろうか」
「当たり前です。そんなことで距離を置かないで下さい」

 そんなこと、と。
 軽い口調で言い切ります。

「それに……仮に魔族と人間が敵対することになりそうなら。
 『この国の恩人』とまで言っていただいたんです。
 そんな未来が来ないように、私にも何かさせて欲しいです」

 魔王様。アビー。カーくんに、ゾンビのヴィルに、オークのブヒータさん。
 歓迎パーティーを共に過ごした仲ですからね。
 心情的に、『魔族』と一括りにすることは、もう出来そうにありませんでした。
 何も知らぬまま、見知った者同士の殺し合いを傍観することになる方が恐ろしいです。

 もっとも人間たちは魔族を恐れ、結界を貼って閉じこもっているのです。
 早々、そのような未来が訪れるとは思えませんけどね。

「貴様……フィーネ嬢は、本当に強いのだな。
 今後起こることを恐れて。距離感も分からず、結局は逃げて。
 ただ傍にいるだけで良い……と遠ざけようとした余とは大違いだ」

 ぽつぽつと呟く魔王様。
 そうして本音を話せるだけ、プライドばかり高い貴族たちよりよほど強いですよ。

「まだ酔いが残っていますから。
 昨日みたいに、少しだけ素直になってみようと思っただけですよ」
「そうか……」

 そうして訪れたのは穏やかな沈黙。
 これまでのように不安を感じさせるものではない、ゆったりとした空間でした。
 


「では良い感じで、ふたりの仲も深まったところで――」

 パンパン手を叩き、とタイミングを見計らったようにリリーネさんが続けました。

「フィーネちゃんは病み上がりですし、長居するのは良くありません。
 続きは明日にでもお茶会を開いて、ゆっくりと2人で語らっていただくことにして――」

 ちゃっかりと、次に会うお茶会の予定を決めてしまおうとするリリーネさん。

「おい、リリーネ。貴様はどうするつもりだ?」
「……えーっと、明日は外せない用事があるので。
 ゆっくり2人で語らっていただくことにして――」

「よし。なら、アビーを連れていこう」
「さっきまで、とても良い感じの雰囲気だったじゃないですか!
 なんで急にヘタレるんですか~!」

 恒例のリリーネさんの嘆き。

「ヴァルフレア様。
 やっぱり私なんかと2人きりになるのは、嫌なんですね……」

 私も、そう言いながらじとーっととした視線を向けます。

「そ、そんなことはないぞ……。
 や、やはりほら。順を追って親睦を深めていくべきだと思ってな?」

 うって変わってアタフタする魔王様が見られました。
 いたずらが成功した子供のような気分です。
 こういうところは、本当に表情が分かりやすいお方です。

「ふふっ、大丈夫です。分かってますよ」

 私はにっこりとほほ笑むと、

「それでは明日のお茶会で。よろしくお願いしますね」
「う、うむ」

 なし崩し的に明日のお茶会の約束まで取り付けました。

 
 そのようなやり取りの後。
 看病に来たという魔王様は、リリーネさんを残して部屋に戻っていったのでした。
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