冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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34. 憧れたっす、痺れたっす! ブヒータ兵士長カッコいいっす!

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 ここは兵舎前。
 私の隣ではリリーネさんが仁王立ち。
 目の前にはオークとゴブリンがずらっと並んでいます。正座で。

「ひめさまの力すごかったな!
 これだけの人数の酔いを、一発で醒ますなんてよ~!」

 アビーによると、癒しの術は上達すると個人ではなく範囲を対象とすることもできるそうで。
 私はあの後、アビーさんに言われるがまま、ブヒータさんの部屋にいた兵士たちに対しても癒しの術をかけ酔いを醒ましたのでした。

 アビーの誇大広告に応える形です。
 これだけの人数に魔法を使ったことはなかったので、さすがに疲労が隠せません。
 無茶ぶりにも程がありますよ……。


「お体の方は、本当になんともないんですね?」
「あ、ああ。何ともなくて怖いぐらいだ……」

 これだけの人数に使っても、害があった魔族は居ないようです。
 大きなトラブルもなく終わって良かったです。 


『ひめさまの力、本当にすごい!
 冗談のつもりだったのに、まさか本当にやっちゃうなんて』
「え、冗談だったんですか?」

『これだけの広範囲に癒しの術の効果を及ぼすなんて。
 それこそ、伝説の大魔導士ぐらいしかできないよ』

 そんな恐ろしい効力の魔法を、二日酔い醒ましに使わせたんですか……。
 思わず、アビーをジト目で見てしまいます。
 アビーも呆れを隠さず、こちらを見ている気がしました。


「フィーネ様にあれだけの力を使わせたのです。
 何か言葉があって然るべきでは?」

 リリーネさんのドスの聞いた声をきいて、すくみ上がる兵士ご一行。
 リリーネさん、本当に何者なんでしょう。
 ひと癖もふた癖もありそうな兵士たちを、ここまで従えているなんて。

「このたびは大変なご迷惑をおかけして……」
「いえいえ、気にしないで下さい」

 ゴブリンとオークの集団に囲まれて、謝罪を受けることになってしまいました。
 圧迫感がすごいです、勘弁してほしい。


「それで? 今回の馬鹿騒ぎ。
 なにか言い訳はありますかね?」
「いや~、兵士ってのはストレスが溜まる職でな~。
 適度に発散するのも大事だってことよ!
 分かるだろう~?」

 調子の良いことを言うブヒータさんですが

「分かります。ええ、分かりますとも。
 だから歓迎パーティーの日だけは、大目に見てたんですけどね~」

 こう返されては、何の言い訳もできず。

「我々は、ブヒータ兵士長の言う通りに行動しただけであります。
 軍隊では、上長命令は絶対であります故!」
「私もです!」
「オレは職務時間中に飲むなんて止めておこう、とお諫めしたんですよ。 
 それでもブヒータ兵士長には逆らえず……」

 よよよよ、と見事なウソ泣きを披露するゴブリン集団。
 見事なコンビネーションで、ブヒータさんを売りにかかります。
 

「おいこらっ てめえら!
 あんなに満面の笑みで、賛同してただろうが!」

 これだから種族違いのやつはいけねえ。
 ブヒータさんはぽそりと呟き、次いでオークの集団に目線を向けます。

「おう、言ってやれ。
 ここにいる者たち、全員の連帯責任だって!」


 今ここで、オークの熱い友情が試されます!

「部下の責任を潔くとってくれる上司って、とても素敵だと思う~」
「ブヒータ兵士長、飲み会前に言ってたっす!
 『全ての責任は俺が取る! 黙って俺についてこい!』って。
 憧れたっす、痺れたっすよ。ブヒータ兵士長カッコいいっす!」

 ヨイショ、ヨイショ!
 口で称賛、しかし行動はとても素直。
 グイグイとリリーネさんの前に押し出されるブヒータさんでした。



「当然、連帯責任ですよ」

 そんな悪乗りも、リリーネさんのひと言で終わり。
 ゴブリンとオークの集団は「はい」と、うなだれたのでした。
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