冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

文字の大きさ
37 / 71

36. そんな伝承にしか残っていないような高度な魔法を扱えるとでも!?

「もちろん安全面の保証はできないので、色々と試さないといけませんが。
 魔力って、このように物にも込められるので」

 私は、持っていたハンカチに僅かに魔力を込めて見せます。
 見やすいようにわざとぼんやりと発光させると――


「おおー!?」

 何故でしょう。
 ものすごく驚かれました。

「ひめさま? それ、触っても良いですか?」

 好奇心に負けたように、近くで見ていたゴブリンが目を輝かせてそう言いました。
 リリーネさんを恐れるようにブヒータさんが全面に押し出されていましたが、今や興味津々の魔族たちが寄ってきて凄まじい密度です。

「良いですけど、そこに込められているのは聖属性の魔力です。
 気分が悪くなったらすぐに手放してくださいね」

 私の魔力なので大丈夫だとは思いますが、万が一と言うこともあり得ます。
 こう前置きしてをしてから、ハンカチを手渡します。


「ひめさま? 何も起こらないですよ?」
「何の効果も込めてないですからね」

 きょとんとした表情のゴブリンに、苦笑しながらそう答えます。
 ちょんちょん、とつつかれたゴブリンは隣にハンカチを渡し。
 何の変哲もない発光するハンカチを、興味深そうにしげしげと眺めています。


「なるほど、魔力を込めたハンカチですか。
 なるほど、無事に戦場から帰って来られるようにお手伝いという言葉の意味」

 ブヒータさんが、驚愕したような顔でこちらを見ました。
 その様子だと伝わったのでしょうか。
 私は小さく頷こうとして――

「このハンカチを返すまでは、決して死ぬなと!
 ハンカチに込められた魔力は、離れていても魔力はひめさまと常に一緒だと。
 ハンカチ、一生の宝にします!」

「なんで、そうなったの!?」

 あさっての解釈を自信満々で語られ、思わず全力で突っ込んでしまいました。
 とりあえずハンカチは返して欲しい。


「魔力が沢山込められる魔導石に、今日お見せしたような治癒の魔法の効果を込めれば良いと思ったんですよ。
 私がわざわざ戦地を訪れなくても、うまく魔導石に魔法を転写できれば、魔法が発動できますからね」
「ま、まさか!?
 そんな伝承にしか残っていないような高度な魔法を扱えるとでも!?」

 私の提案に、大げさに驚いてくれたのはブヒータさん。
 宴会仕込みなんでしょうか、やっぱりノリが良いです。

「そのまさかなんです!」

 乗っかるように、私もえっへんと大げさなリアクション。

「癒しの魔法は、幼いころからずっと使ってきた魔法ですからね。
 反復練習が欠かせない転写の魔法と、相性はバッチリなんですよ。
 任せてください!」

 それは使える魔法の少ない私にとって、密かな自慢でした。
 ぽかーんとした表情で、ブヒータさんたちがこちらを見つめてきます。
 尊敬を通り越え、もはや信奉者を見るような眼差し。

 あれ、さっきのは大げさに驚いてくれただけだよね?
 何か様子がおかしいことを悟り、

「あ、今日やったのとまったく同じ効果が出るかは分からないですよ。 
 広範囲に影響する魔法は、試したことないですしね」

 と慌ててそう言葉を重ねますが 

「いやそんな訳の分からないもの。
 普通は試そうとすら思わないだろ……」

 ブヒータさんは呆れた様子で、そう呟きました。


 ――これがアビーを救った、癒しの奇跡か……。
 
 他のゴブリンやオークも、驚きに目を丸くしていました。

 ブヒータさんはたちのテンションはうなぎ登り。


「あ、あの……。
 何かみなさん勘違いをしていらっしゃるような。
 私には正せません、助けてください!」

 魔王様には『国の恩人』などと言われ、魔族たちには『癒しの奇跡』などと持ち上げられる。
 なにその歴史書に載っていそうな人物。

「フィーネ様……」
『ひめさま……』

 アビーとリリーネさんは、呆れたような目でこちらを眺め。

『「手遅れです」』

 そう声を揃えて言いました。
 解せぬ。


「次来るときは、癒しの魔法を込めた魔導石のサンプルを持ってきますね」

 兵士たちのキラキラした眼差しから感じるのはプレッシャー。
 これは責任重大ですね。

 この後は、魔王様とのお茶会が控えています。
 二日酔いで寝込んでいた昨日は、情けない姿を晒してしまいましたからね。
 お詫びの意味も込めて、しっかり準備してから向かいたいところ。
 結局、私はブヒータさんたちの勘違いを正すことを諦めて魔王城へと戻るのでした。
感想 12

あなたにおすすめの小説

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった

歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。 病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も—— 全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。 十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。 「もう用済みだ、出ていけ」 フィーネは静かに屋敷を去った。 それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。 「前のお嬢様を返してください」

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

呪毒鑑定士の令嬢、冤罪で追放されたので国中の「呪い」を解除して回る

あめとおと
恋愛
王宮で地味に「呪物の鑑定と浄化」を担っていた伯爵令嬢。異世界から来た「聖女」に、汚いものを扱う不浄な女だと蔑まれ、婚約者の王子からも「お前の代わりは聖女がいる」と断罪・追放される。 しかし、彼女が密かに浄化していたのは、王宮の地下に溜まった建国以来の強大な呪いだった。彼女が去った瞬間、王宮は真っ黒な泥に沈み、王子たちの顔には消えない呪いの痣が浮き上がる。

不器量令嬢は、婚約破棄の断罪が面倒くさい

あんど もあ
ファンタジー
不器量なマルグリットは、婚約者の美しい第一王子からずっと容姿を貶められる日々。とうとう王立学園の卒業パーティーで王子に婚約破棄を宣言され、「王子から解放される! それいいかも!」となったが、続く断罪が面倒くさくて他の人に丸投げする事にする。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。