冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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42. 私ひとりのために、戦争を起こすと言うのですか!?

 人間との戦争準備に入る。
 そう言った魔王様の表情は、大真面目なものでした。

「お、落ち着いて下さいヴァルフレア様!」
「いたって冷静なつもりだ。これ意外の選択肢はないだろう?」

 やはり失礼すぎる王子の手紙が、魔王様の逆鱗げきりんに触れたのでしょうか。
 同じ人間であり魔王様との付き合いも長いリリーネさんなら、きっと止めてくれるはず。
 私は目線で増援を求めます。

 リリーネさんは任せておけとでも言うように頷くと


「お任せください。
 魔族たちの指揮は十分です。愚かな王の首を討ち取ってみせましょう」

 そんなことを言いました。


 ――リリーネさんまで何で!?


 まさか本気なのでしょうか。
 リリーネさんも結界内でひどい目に遭わされ、魔王様に保護された人間の一人です。
 結界内の人間に恨みがあるのも、当然ということでしょうか。



「言ったであろう、余の大切なものを奪うのなら容赦はしないと」

 魔王様の言葉は重々しく。
 どうしようもなく本気であると、私は悟ります。


「大勢の人間が、そして魔族も犠牲になります。
 私ひとりのために、戦争を起こすと言うのですか!?」

 冗談ではありません。
 そんなことになるぐらいなら、魔族領でひっそり野垂れ死んだ方がマシです。


「反対されるのは、分かっていた。
 ……だから手紙のことも、伝えたく無かったのだ」

 ――分かってるのならどうして?
 
「冷静になって下さいよ、ヴァルフレア様。
 あなたは魔族領の魔族全員の命を背負っているんですよ。
 一時の気の迷いで、取り返しのつかないことをしないでください!」

「一時の気の迷いなどではない!」

 魔王様はそう言い切ります。
 これまでの自身の無さが嘘のような、私の目を真っ直ぐ見ての力強い一言。

「アビーを助けた魔力の持ち主を追いかけてきて。
 会える日を夢に見て、こうして待ち続けて――ようやくこうして話せるようになったのだ。
 父を失った悲しみ、アビーを失いかけた恐怖を。
 ……また繰り返せというのか!?」


 私にそこまでの価値はない――などと言っても意味はないのでしょう。
 自分がどう思うからではなく。 
 魔王様の『大切なもの』に、私は入り込んだのです。
 どうしようもなく嬉しく、それが戦争のきっかけになり得るということも思い出し悲しみも覚えます。


 ――いっそ私がフォード王子のいうような悪女であったのなら。

 魔王様に取り入って戦争を引き起こした。
 そんな中であっても、守ってもらって高笑い出来たのかもしれませんね。



「許しませんよ。そんなこと」
 
 こうして話して貰えて良かったです。
 何も知らぬまま、気が付いたら人間と魔族の戦争が始まっていたなら。
 その原因が、よりにもよって自分だったのなら。

 ――自分のことが許せなくなってしまいます 



「フィーネ様?」
「フィーネ嬢……」

 私は魔王様を止めるために、言葉を紡ぎます。

「ヴァルフレア様もリリーネさんも身勝手です。
 人間との全面戦争をまで起こして、守られたとしても。
 私は今後、どんな気持ちでみなさんと顔を合わせれば良いのですか」
 

 私のせいで、大勢の魔族の方を死に追いやってしまうことになってしまう。
 そもそも結界の中には、私の知り合いだって居る――下手すると魔族の兵士が仇となってしまうかもしれない。

 そんな中ふてぶてしく生きていられるほど、私は強くないです。
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