45 / 71
44. 覚悟を決める必要がありますね
フォード王子のもとに戻ったとき、私がどうなるかというのは――かなり部の悪い賭けだと思います。
私に万が一が起きたら人間を滅ぼすなどというのは、あり得ない誓いだと思いますが……。
魔王様の眼差しは本気も本気。
「あ、あのヴァルフレア様?。
私に何かあったときには、私のことなんて忘れて――」
「悪いが、それは無理だ」
やんわりと言いかけた言葉は、ピシャリと魔王様に遮ります。
「代わり、などいる筈もあるまい?
それとも――何の勝算もなく、戻ろうとしていたのか」
そう問いかける声には、静かな怒りも含まれており。
生半可な答えは許さないと、いう意志を感じます。
魔王様の意志を跳ね除けてまで選んだ道です。
悲しませないためにも。
悲惨な道を選ばせないためにも。
――覚悟を決める必要がありますね
「一度は追放した私を呼び戻すのです。
フォード王子は、私に何らかの利用価値を見出したのだと思います」
目指すは、人間と魔族が争わない世界。
今でも人間と魔族の間で大規模な争いは起きていませんが、その理由は「本当は魔族に効果のない結界」という何の根拠にもならないもの。
どちらかの心変わりで、あっさりと崩れ落ちる均衡に過ぎません。
「そうして突き付けられた要求と引き換えに、魔族に手を出さないことを誓わせる。
……というのが私の考えていたプランですが――」
「具体的なことはなにも考えていなかったのか……。
ほとんど無計画に等しいではないか」
プランとも呼べない私の考えに。
魔王様は呆れたように呟きました。
「結界内に忍びこんだ魔族からの報告だ。
独断で婚約破棄・魔族領への追放を行ったフォード王子のやり方には、一部で随分と批判が集まっているそうだ」
そりゃそうでしょうね……。
「カレイドル男爵令嬢などという、何の正当性もない相手を新たなる婚約者に選ぼうとしているのも、大きな隙を与えているな。
今回の騒動で、随分と多くの敵を作ってしまったのだろう。
今回の追放騒動は、妥当性のない第一王子の暴走だという反発も多い。
第二王子を次期王に、と押す声が高まっているそうだ」
ここまで情報が筒抜けになっているなんて。
結界内に忍び込んだ魔族が優秀すぎて怖いです。
「カレイドル男爵令嬢を妻とし、どうにか次期王となるため。
その正当性を認めさせたい――そう考えたときに、フィーネ嬢に己の罪を告白させれば良いと思い立ったらしい」
え、ええ……?
フォード王子は、やはり後先のことを何も考えていなかったのだと、他人事のように哀れに思っていましたが。
忘れた火の粉が飛んできて、乾いた笑いが出てきます。
浮気相手と一緒になるための尻拭いを、なぜ私がしなければならないのでしょう。
「あ、あのフィーネ様。
フォード王子は、なぜそのような要求をフィーネ様が呑むと考えているのでしょう?
常識的に考えて、フィーネ様に何のメリットも無いでしょうに……」
リリーネさんが困惑したように私に尋ねますが、馬鹿王子の脳内を読み解くのは私にも無理です。
まったく同じ質問を、本人にぶつけたい。
なぜ私が泥をかぶらないといけないのか、と。
「でも、これは利用できるかもしれません。
私に罪を認めさせたい、というのなら貴族裁判が開かれるでしょう。
公の場で発言権が与えられるなら――」
私は身の潔白を証明できる。
それと同時に、人間と魔族の戦争についての真実を明らかにする。
「裁判とは名ばかりの、一方的な断罪の場になるのではないか?」
魔王様が心配そうに口にしました。
思い出されるのは、王子とカレイドル男爵令嬢による断罪パーティーの場。
「……その心配はないでしょう。
そのような事をしては、都合の悪いことを隠そうとしていると見られます。
わざわざ厄介者を呼び戻した意味がありません」
自身の行為の正当性を認めさせるため。
フォード王子は、私を擁護する者に「私がいかに性悪な悪女なのか」というのを見せつけ、反論を封じようとしているのでしょう。
――ならば私は、その場を最大限利用させてもらうとしましょう。
私に万が一が起きたら人間を滅ぼすなどというのは、あり得ない誓いだと思いますが……。
魔王様の眼差しは本気も本気。
「あ、あのヴァルフレア様?。
私に何かあったときには、私のことなんて忘れて――」
「悪いが、それは無理だ」
やんわりと言いかけた言葉は、ピシャリと魔王様に遮ります。
「代わり、などいる筈もあるまい?
それとも――何の勝算もなく、戻ろうとしていたのか」
そう問いかける声には、静かな怒りも含まれており。
生半可な答えは許さないと、いう意志を感じます。
魔王様の意志を跳ね除けてまで選んだ道です。
悲しませないためにも。
悲惨な道を選ばせないためにも。
――覚悟を決める必要がありますね
「一度は追放した私を呼び戻すのです。
フォード王子は、私に何らかの利用価値を見出したのだと思います」
目指すは、人間と魔族が争わない世界。
今でも人間と魔族の間で大規模な争いは起きていませんが、その理由は「本当は魔族に効果のない結界」という何の根拠にもならないもの。
どちらかの心変わりで、あっさりと崩れ落ちる均衡に過ぎません。
「そうして突き付けられた要求と引き換えに、魔族に手を出さないことを誓わせる。
……というのが私の考えていたプランですが――」
「具体的なことはなにも考えていなかったのか……。
ほとんど無計画に等しいではないか」
プランとも呼べない私の考えに。
魔王様は呆れたように呟きました。
「結界内に忍びこんだ魔族からの報告だ。
独断で婚約破棄・魔族領への追放を行ったフォード王子のやり方には、一部で随分と批判が集まっているそうだ」
そりゃそうでしょうね……。
「カレイドル男爵令嬢などという、何の正当性もない相手を新たなる婚約者に選ぼうとしているのも、大きな隙を与えているな。
今回の騒動で、随分と多くの敵を作ってしまったのだろう。
今回の追放騒動は、妥当性のない第一王子の暴走だという反発も多い。
第二王子を次期王に、と押す声が高まっているそうだ」
ここまで情報が筒抜けになっているなんて。
結界内に忍び込んだ魔族が優秀すぎて怖いです。
「カレイドル男爵令嬢を妻とし、どうにか次期王となるため。
その正当性を認めさせたい――そう考えたときに、フィーネ嬢に己の罪を告白させれば良いと思い立ったらしい」
え、ええ……?
フォード王子は、やはり後先のことを何も考えていなかったのだと、他人事のように哀れに思っていましたが。
忘れた火の粉が飛んできて、乾いた笑いが出てきます。
浮気相手と一緒になるための尻拭いを、なぜ私がしなければならないのでしょう。
「あ、あのフィーネ様。
フォード王子は、なぜそのような要求をフィーネ様が呑むと考えているのでしょう?
常識的に考えて、フィーネ様に何のメリットも無いでしょうに……」
リリーネさんが困惑したように私に尋ねますが、馬鹿王子の脳内を読み解くのは私にも無理です。
まったく同じ質問を、本人にぶつけたい。
なぜ私が泥をかぶらないといけないのか、と。
「でも、これは利用できるかもしれません。
私に罪を認めさせたい、というのなら貴族裁判が開かれるでしょう。
公の場で発言権が与えられるなら――」
私は身の潔白を証明できる。
それと同時に、人間と魔族の戦争についての真実を明らかにする。
「裁判とは名ばかりの、一方的な断罪の場になるのではないか?」
魔王様が心配そうに口にしました。
思い出されるのは、王子とカレイドル男爵令嬢による断罪パーティーの場。
「……その心配はないでしょう。
そのような事をしては、都合の悪いことを隠そうとしていると見られます。
わざわざ厄介者を呼び戻した意味がありません」
自身の行為の正当性を認めさせるため。
フォード王子は、私を擁護する者に「私がいかに性悪な悪女なのか」というのを見せつけ、反論を封じようとしているのでしょう。
――ならば私は、その場を最大限利用させてもらうとしましょう。
あなたにおすすめの小説
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった
歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。
病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も——
全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。
十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。
「もう用済みだ、出ていけ」
フィーネは静かに屋敷を去った。
それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。
「前のお嬢様を返してください」
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
呪毒鑑定士の令嬢、冤罪で追放されたので国中の「呪い」を解除して回る
あめとおと
恋愛
王宮で地味に「呪物の鑑定と浄化」を担っていた伯爵令嬢。異世界から来た「聖女」に、汚いものを扱う不浄な女だと蔑まれ、婚約者の王子からも「お前の代わりは聖女がいる」と断罪・追放される。
しかし、彼女が密かに浄化していたのは、王宮の地下に溜まった建国以来の強大な呪いだった。彼女が去った瞬間、王宮は真っ黒な泥に沈み、王子たちの顔には消えない呪いの痣が浮き上がる。
幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。
不器量令嬢は、婚約破棄の断罪が面倒くさい
あんど もあ
ファンタジー
不器量なマルグリットは、婚約者の美しい第一王子からずっと容姿を貶められる日々。とうとう王立学園の卒業パーティーで王子に婚約破棄を宣言され、「王子から解放される! それいいかも!」となったが、続く断罪が面倒くさくて他の人に丸投げする事にする。
悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~
咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」
卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。
しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。
「これで好きな料理が作れる!」
ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。
冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!?
レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。
「君の料理なしでは生きられない」
「一生そばにいてくれ」
と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……?
一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです!
美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!