冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

文字の大きさ
46 / 71

45. 私の居場所は魔族領です、必ず帰ってきます

 私が和平交渉の使者として人間領(結界内のことを、魔族たちはこう読んでいました)に戻ることは、あっという間に魔族たちに伝わったようです。
 対応が決まった後は、魔族領の者たちの行動は迅速でした。
 私の希望を汲み取る形で――翌日には、人間領に戻るための準備が整えられたのでした。



 魔王城を出発する私を見送るのは、ブヒータさんとゾンビのヴィル。
 そのほか歓迎パーティーで話した魔族の姿も見え、見送りはかなり大人数。
 来たばかりの私のために集まってくれたことを思うと、なんとも嬉しくなります。

「俺たちの部隊には、ひめさまの力が必要だ。
 まずは人間のクソ王子を張っ倒して――また魔族領に戻って来いよ!」
「ありがとうございます。
 癒しの魔法について――期待させておいて、ごめんなさい」
「悪いのはクソ王子だろう? そんな無茶苦茶な理論聞いたことがねえ。
 癒しの魔法は……ひめさまはが戻ってくるのを楽しみにしているさ」

 酔いのさめたブヒータさんは凛々しい顔で。


「ゾンビの宿命とまで言われたイガイガ虫を治療して頂いたこと。
 私、ひめさまへのご恩は一生忘れませんぞ」
「大げさですよ」

 足の痒みが消えたゾンビのヴィルは、ややいつもより血色の良い顔で(ゾンビだけど)
 

「見送りありがとうございます。
 必ず戻ってきます」

 私は魔族領にとって、火種にしかならかったというのに。
 見送る2人の声はとても暖かい声で。


 ――良いひとたちだな

 改めてそう思いました。



◇◆◇◆◇

 私を人間領まで送り届けるのは魔王様とリリーネさん。
 わたしたちは巨大化したアビーの背中に乗っかり、移動していました。

『ひめさま、随分とカーくんとも打ち解けたんだね』
「ゾンビのヴィルや、ドラゴン。
 カーくんより怖い魔族もいっぱい見ましたし――心優しいことが分かりましたからね」

 私の肩に乗っかるカーくんの頭を、私は優しくなでます。
 カーっ、とどこか嬉しそうに鳴くカーくん。


「本当は、魔族領中をこうして案内したかったのだがな……」
「全部、空気を読まない馬鹿王子が悪いんです。
 魔族領内をヴァルフレア様に案内してもらうこと――戻ってきてからの楽しみにしておきますね」

 これが人間領に戻るための道のりでなく、自由気ままに魔族領を見て回れるならどれだけ良かったことか。

「どこか行きたい場所はあるのか?」
「ごめんなさい、魔族領については何も知らないので……」

 一緒に行くのが魔王様なら、きっと行く場所がどこであっても楽しい。
 私は少し考えると、こう言いました。

「しいて挙げるなら――ワインや果実酒の原料を栽培している畑とかは興味あります。
 歓迎パーティーのお酒は本当に美味しかったです」

「フィーネ嬢は、本当にお酒が好きなのだな……」
「そ、そんなことはないですよ――?」


 呆れたように魔王様が笑い、釣られてリリーネさんも笑います。
 うう、二日酔いのイメージが残っている呪いでしょうか。
 どうにかしてイメージを払拭せねば。

「冗談です。ブヒータさんの依頼もあったので……。
 魔法を込めるための結晶石を見に、よく取れる場所に行きたいですね」
「む、お酒は良いのか?」
「ヴァルフレア様の中で、私はどれだけお酒が好きなんですか~!?」
「冗談だ」

 ふふっと魔王様が笑います。
 こんな一面もあるんですね――最初会ったときの無口でぶっきらぼうだったイメージとは大違いです。



 やがて――私を迎える結界が見えてきました。

 魔族には何の効果も発揮しない、何の意味も持たない結界。
 しかし魔族を拒絶する、という意志だけは感じさせる光の壁。


「フィーネ様、あなたは魔王様の言う通り素晴らしいお方でした。
 この短期間の間に、多くの魔族の心を掴み。
 ……それだけでなく、人間との戦争を回避する為に、危険を承知で単独で敵地に乗り込むなんて」
「敵地って。
 一応、私たちの生まれ故郷ですよ……?」
「ええ。でも……敵地みたいなものでしょう?」

 人間を恨んでいる、とはっきり口にしたリリーネさんにとっては敵地。
 人間領を追放された私にとっても――帰ってくる場所はここ、魔族領です。


「これから和平を結びに行くのに、敵地なんて言ってはいけませんよ。
 ……私の居場所は魔族領です、必ず帰ってきます」
「――またお仕えできる日を、お待ちしています」 

 リリーネさんは静かにそう答えたのでした。
感想 12

あなたにおすすめの小説

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった

歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。 病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も—— 全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。 十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。 「もう用済みだ、出ていけ」 フィーネは静かに屋敷を去った。 それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。 「前のお嬢様を返してください」

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

呪毒鑑定士の令嬢、冤罪で追放されたので国中の「呪い」を解除して回る

あめとおと
恋愛
王宮で地味に「呪物の鑑定と浄化」を担っていた伯爵令嬢。異世界から来た「聖女」に、汚いものを扱う不浄な女だと蔑まれ、婚約者の王子からも「お前の代わりは聖女がいる」と断罪・追放される。 しかし、彼女が密かに浄化していたのは、王宮の地下に溜まった建国以来の強大な呪いだった。彼女が去った瞬間、王宮は真っ黒な泥に沈み、王子たちの顔には消えない呪いの痣が浮き上がる。

不器量令嬢は、婚約破棄の断罪が面倒くさい

あんど もあ
ファンタジー
不器量なマルグリットは、婚約者の美しい第一王子からずっと容姿を貶められる日々。とうとう王立学園の卒業パーティーで王子に婚約破棄を宣言され、「王子から解放される! それいいかも!」となったが、続く断罪が面倒くさくて他の人に丸投げする事にする。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。