冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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Side:王子 もうあなたについていくことは出来ません、と言い残し教育係は姿を消した

 私、フォード・エルネスティアは頭を痛めていた。



 何かをやるたびに文句を付けてきたフィーネという生意気な婚約者。

 パーティーの場で断罪し、婚約破棄と魔族領への追放を言い渡し「これで解放された」と喜んでいたのも束の間。





「フォード王子! フィーネ・アレイドルを魔族領に追放したって正気ですか!?」

「ああ。奴は未来の国母を暗殺しようとしたのだ。

 俺の全権限を駆使して、魔族領への追放刑を実行した」



 部屋には慌てた様子で、ひっきりなしに部下が飛び込んでくるのだ。

 皆が同じ要件、フィーネ・アレイドルの魔族領への追放刑について詳しく説明を求めるものであった。

 パーティーの場で話した以上の理由が、どこに必要だというのだろうか。 





 私は、忌々しくフィーネ・アレイドルについて思い返す。

 国を導く者の心構えとやらを毎日のように説いていたのに、影では我が愛しのカレイドル嬢を暗殺しようとした諸悪の根源だ。最後まで悔い改める姿勢すら見せず、本当にろくでもない女だった。

 俺にバレたことをきっかけに、なりふり構わずカレイドル嬢の暗殺に動いたらと思うと恐ろしい話だ。多少の無茶を通してでも、魔族領へ追放したことは間違っていない。





「フォード王子の言う罪は、まったくの冤罪であると公爵家から批判が届いています」

「こうして証拠も揃っている。こちらが強く言えないのを盾に、責任逃れするつもりか。

 フィーネめ、最後の最後まで面倒ごとを残してくれる……」



 私の立場は、フィーネ・アレイドルを婚約者とすることで得られたもの。

 公爵家の後ろ盾を得ていたからという部分が大きいということは聞いていた。カレイドル男爵に、そのような後ろ盾となれるほどの権力は当然ない。

 冤罪であるというのは単なる言い逃れである、と表立って糾弾することもできずに。

 私は対応に頭を痛めていた。





 ちなみに公爵家から届いた批判は、しごく当然のものである。

 一方的な婚約破棄だけでも家の名誉を大きく傷つける物であるのに、挙句の果てには冤罪による魔族領への追放刑だ。

 フォード王子の行為は、第一王子を廃嫡にしろと要求されてもおかしくない大失態であった。





「殿下。今からでも誠心誠意、謝罪をするべきです。

 フィーネ様に助けられてきた貴族は、決して少なくありません。

 今回の件を独断で推し進めたのは、あまりに敵を作り過ぎました」

「黙れ。私の判断は間違っていない!」



 進言する部下を怒鳴りつけ、俺はイライラと部屋の中を歩き回る。

 フィーネ・アレイドルに騙される愚かな貴族が、あまりにも多いのだ。





 ――なぜ正しいことをしたはずの俺が、有象無象の批判を浴びなければならないのだ?





 私が頭を痛めているのは、それだけではない。





「カレイドル嬢の様子はどうだ?」



 フィーネ・アレイドルを追放し、新たな婚約者としてカレイドル嬢を据えた。

 フィーネの教育係に頼み込み、最終的にはフィーネが犯した罪を償えという脅迫まがいな言い分で、無理やりにカレイドル嬢に王妃教育をするよう頼んでいたのだが……





「まるでお話になりません。

 いつまでたっても上の空で、まるでやる気が感じられません」

「カレイドル嬢は、これまで大変だったんだ。

 貴様の教育方法が悪いのではないか?

 やる気を出させるのも教育係の役割であろう」



 肝心の次期王妃を育てられずして、何が教育係か。

 上手くいかない現実に対するいら立ちも込めてそんな言い方をする私に、



「もうあなたについていくことは出来ません。

 フィーネは私の大切な教え子でした。

 どこに出しても恥ずかしくない、立派な令嬢でしたよ。

 道理は通すお方でした――自らの敵対者を『暗殺』などという形で、排除するはずがございません」





 教育係は冷めた目でこちらを見返すのみであった。



「ま、待て。考え直せ。

 フィーネ・アレイドルについては、こうして証拠があるのだ」



 断罪の場で見せつけた証拠の山を見せても、



「なぜそのような物を、信じてしまったのか。

 ……私には、殿下の考えが理解できません」



 ――いっそ私のことも不敬だと、魔族領に追放してみますか?





 その言葉を最後に長年城に仕え、数多くの名家の令嬢を育て上げた教育係も姿を消すこととなる。

 私の味方は、どこにもいなかった。







◇◆◇◆◇



 第二王子を次期王にという動きが、いよいよもって表立って見えてきていた。

 あまりの現実に胃が居たくなりつつも、私はカレイドル嬢の元を訪れる。



「カレイドル嬢。王妃教育の方はどうなんだ……?」

「いやよ、あんなつまらないもの。

 それより次の週末の話をしましょうよ!」



 私が部屋に入ったのに気づいて、カレイドル嬢は輝くような笑顔を浮かべる。

 この笑顔のために、私は頑張ってきたのだ。



「王妃なら、今まで身に着けていたドレスでは不十分よね。

 新しいドレスに――デヴィンス商会で扱ってる宝玉も欲しいわ」



 それでも、私は頭を抱えていた。

 どうにかしてカレイドル男爵令嬢を、私の妻として認めさせることができれば……。



 そのためにも、次期王妃としての振る舞い――はいきなり無理にしても。

 せめて貴族令嬢としての恥ずかしくない振る舞いを身に着けて欲しいところだが。



 カレイドル嬢は気ままなマイペースを崩さない。

 良い意味で貴族らしくない姿は非常に魅力的であったが、味方の少ないこの状態ではそうも言っていられないのだ。







 ――どうすれば良いのだ……





 その声に応えるものはどこにもいなかった。
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