冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!

アトハ

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61. 魔王様の待つ場所に向かって

「そうか。残念だよ」

 フォード王子が、虐殺を止める決意を固めるのを見て。
 国王は、首を振りながら小さく呟くと、 


「フォード王子は、魔族に味方する反逆者と化した。
 王族だからと特別扱いは不要だ。容赦せず殺せ!」

 そう声を張り上げたのでした。 


 裁判所内では、いたるところで戦闘が始まっていました。
 王の命令を忠実にこなそうとする騎士団員たち。
 それを迎え撃つのは、アルテ率いる魔族の兵士たち。

 それは魔族が人間を守る、不思議な光景でした。


「このままだと、まずいですね……」

 一見互いの戦力は均衡しているようで、人数は圧倒的に騎士団の方が上でした。
 おまけに、これは国王の計画通りに発生した事件です。
 騎士団員たちが持つ武器には、魔族との戦闘に備えた神聖魔法のエンチャントが付与されているようです。
 時間をかければかけるほど、魔族たちが不利になりそうでした。


◇◆◇◆◇

 国王による前例のない命令。
 例え犯罪者が相手であっても、このような虐殺が許されるはずはない。
 そう葛藤する者もいましたが、従わぬなら騎士団を追い出されるだけ。

「悪く思わないでくれ?
 これも、陛下からの命令だからな」

 私は言うなれば今回の事件の主犯です。
 決して逃さぬように慎重に。
 そうこうしている間にも、騎士団員はジリジリと油断なく包囲網を狭めてきました。

「おまえたち。
 ここにいるのは、無実の人間なんだぞ。
 こんなことをして、本当に許されると思ってるのか!?」

 フォード王子が、どうにか騎士団を説得しようとしていますが、権力を失った馬鹿王子の言葉に、耳を貸す者は誰ひとりとしていませんでした。


「あの、フォード王子?
 あなたにそういう役割は求めていないので……」
「なに!?」

 出鼻をくじかれたとでもいうように、フォード王子はこちらを振り返りました。

「俺は王子だぞ!?
 てっきり交渉役を任されるのだと……」

「いくらなんでもそんな無茶振りはしませんよ。
 あなたに、まったく人望がないことは分かってましたから」

 私がぼそりと呟くと、なにやらショックを受けた様子。

「この状況を打開するため、私に作戦があります。
 協力してくださいますね?」
「貴様のことは気に食わないが。
 こんなところで死ぬのは御免だ。協力しよう」

 私とフィード王子は、ヒソヒソと言葉をかわします。
 

「私が頼みたいのは、儀式魔法の解除です」
「儀式魔法の解除だと?」

「魔王様を戒めている聖属性魔法です。
 この状況をどうにかするためには、魔王様の力を借りるしかありません」

 儀式魔法さえ解除して、魔王様を救出できたなら。
 ここにいる騎士団程度、どうとでもなるはずです。

「な、なんだと。正気なのか!?」

 フォード王子が、ギョッとした様子で聞き返してきました。

「この状況を打開するためには、魔王様の助けが必要です。
 今更、何を驚いているのですか?」
「ふざけるな! よりにもよって、魔王だと!?
 ……魔族の王、すべての人間の敵だぞ?」

 私の作戦を聞いて、明らかに狼狽するフォード王子。
 この期に及んでそんな反応をするんですね。
 

「あなたは、これまで何を見てきたのですか?」

 苛立ちを隠そうともせず。

「まだ魔族は敵で、人間は味方だと。
 そんな無邪気な教えを、まだ信じているのですか!?
 本当に怖いのは、こんな事態を引き起こした人間じゃないですか。
 良いから早く、現実を見てくださいよ!」
「だが魔王ともなると……」

「しつこい!」

 もはや言葉を選ぶ必要すら感じません。 

「あなたが信じていた国王は、無実の人を虐殺する暴君となりました。
 その凶行から今ここで人々を、守っているのは誰ですか? 
 あなたがさんざん敵だ敵だと言った、魔族たちですよ!」

 これまで見せなかった激しい怒り。
 フォード王子は、目を白黒させていましたが。

「わ、分かった。協力しよう」

 やがては私の勢いに気圧されたのでしょう。
 コクコクと頷いたのでした。



◇◆◇◆◇

 どうやって、この包囲網をくぐり抜けようか。
 私は引きつった顔で、じりじりと距離を詰めてくる騎士団員たちを観察していましたが

「人間ってのは、血も涙もないんだな。
 そうして同族にも躊躇なく剣を向けるんだからな」
「アルテ!」

 突如として、アルテが上空から飛び降りてきたのでした。

「俺たちが道を切り開こう!」

 陽気な声を上げるのは、アルテと同時に現れた兵士。
 突如として現れた魔族たちを警戒して、騎士団員たちが歩みを止めました。


「もともと、俺たちゃ戦争やりに来たんだ!
 ヒョロッヒョロの騎士団連中が相手じゃ、まるで暴れたりねえな!」

 血の気の多い魔族が、そんなことを言いながら騎士団員たちに突っ込んでいきました。
 精鋭の魔族は、圧倒的な体術と魔法を合わせた独特の戦法で、人間の兵たちを翻弄します。
 包囲網が混乱したのを見計らって、

「今っ!」
「嘘だろ……!?」

 包囲網の一瞬の隙を付くように。
 私はフォード王子の手を強引に引くと走りだしました。
 囚われた魔王様の待つ場所に向かって。
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