え、宮廷【結界師】として国を守ってきたのにお払い箱ですか!? 〜結界が破られ国が崩壊しそうだから戻って来いと言われても『今さらもう遅い』~

アトハ

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10. いえいえ、旦那さま。どこの世界の常識ですか?

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「結界は一度張って終わりじゃない。定期的にメンテナンスして、最大限の効力を発揮できるよう手を入れる必要がある。魔力を注いで活性化させたりな。ここまでは常識だよな?」

 ティファニアに尋ねると、こくこくとうなずいた。


「そんな常識すらも、王国の方々は知りませんでしたけどね」
「人を導く立場にいて知らないなんて、あり得ないよね」

 アリーシャたちから、容赦ない駄目出しも飛び交う。エリーゼがここにいたら涙目になりそうだ。


「メンテナンスには、常に新しい技術を取り入れて術式を更新――アップデートすることも含まれる。これも常識だよな?」
「いえいえ、旦那さま? どこの世界の常識ですか」

 ティファニアが小首をかしげてきょとんと言えば、

「ウチも初耳や。それが本当なら、結界師の中で革命が起こるで……。いったい、どこの情報や?」

 鍛冶職人として、結界師から依頼を受けることも多そうなエマまで、そんなことを言った。まじか。


「王国図書館の本に書いてあったぞ?」

(初心者向け手引き書に書かれていたから、誰でも知っていると思っていたが……違うのか?)

 王国図書館には、結界師の一族の知識が惜しげもなく記された書物が多数存在していた。自分なりのやり方を見つけるまで、俺も随分と世話になったものだ。もっとも俺以外にまともに読む者は、いなかったようだがな。


「師匠は、いつもこうなんです。私も故郷では『魔術の天才』なんて持てはやされて来ましたが、師匠と会ってからは恥ずかしいばかりです」
「……心中、お察しします」

 何故だろうか、呆れるような目で見られてしまった。



「なあ、この結界の『管理者』は誰だ?
 少し術式に手を入れたい。伝導率があまりに低くて、非効率にもほどがある」

 結界の効果の割にあまりに術式が複雑だった。そのくせ効率は悪く、これでは術者の負担を増やすばかりだろう。


「管理者は私です。是非とも、お願いします!」

 ティファニアはぴょこんと跳ねて、目をキラキラさせながらそう答えた。
 通常、結界の術式は管理者の許可を得た者しか書き換えることは出来ない。やろうと思えば強引に書き換えるられはするが、あまりに非効率だしな。


「ティファニアが管理者なのか。信頼出来るやつ以外には、あまり軽率に術式を弄らせるなよ? 何されるか分からないからな」

 ティファニアは管理者としての権限を、正しく理解しているのだろうか。こうもあっさり許可が出ると、不安になってしまう。


「大丈夫です! 私、旦那さまのことは完璧に信頼してますので!」
「師匠、私も師匠のことを一番信用してますからね!」

 挨拶代わりに抱きつくな! そして張り合うな!
 俺はじゃれついてくるティファニアを、メリメリっと引っぺがしてアリーシャに引き渡す。そんな様子をリーシアとエマは、生暖かい目で眺めていた。



 そんな馬鹿らしいやり取りをしていると、

「――おい。こんなところで他種族のものが、何をしている?」

 エルフの里の奥の方から、エルフの青年がこちらに向かってつかつかと歩いてきた。どうにも厳しい顔で俺のことをにらみながら。
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