え、宮廷【結界師】として国を守ってきたのにお払い箱ですか!? 〜結界が破られ国が崩壊しそうだから戻って来いと言われても『今さらもう遅い』~

アトハ

文字の大きさ
15 / 32

15. おい、ベッドにもぐりこむな!

しおりを挟む
「今日は色々なことがあったな」

 部屋に入り、俺はひとりごちる。
 とつぜん呼び出されてクビを言い渡されたと思ったら、まさかエルフの王女――ティファニアが迎えに来て。

(今日からここで暮らしていくんだな)

 環境の変化に、戸惑うばかりだ。それでも何とかやっていくしかない。そんな決意を持って目を閉じたが――


「旦那さま! 来ちゃいました!」

 やたらと騒がしい声に叩き起こされた。目を開けると、そこには枕を持参したエルフの少女――ティファニアが、パジャマ姿で立っていた。

「な、ティファニア!? どうやってここに。というか、何故ここに?」
「合鍵バッチリです! それに夫婦が一緒の部屋に寝泊まりするのに、何か理由が必要ですか?」

 笑顔で鍵を見せてくる。いやいや、無邪気に笑ってるけど、ツッコミどころしかないからな? ティファニアは、俺の視線にこりた様子もなく、両腕を広げて更にとんでもないことを言ってのけた。


「さあ、旦那さま! 今ならこんなに可愛いエルフの美少女を、襲いたい放題ですよ!」

 そう言いながら、ティファニアはなんとベッドの中に潜り込んで来るではないか。え、どういうことなの!? さっき「この宿で不健全なことは禁止!」とか言ってたよな!


「可愛いって、自分で言うか?」
「……突っ込まないでくださいよ。なんか、恥ずかしくなってきちゃったじゃないですか」

 頬を赤らめて俯いてしまうティファニア。その様子は妙にいじらしく、思わず衝動的に抱きしめたくなってしまうが……理性を総動員して自重。

「ティファニア、もう少し自分を大切にした方が良い。俺も男だし、あまり無防備に来られると……理性が持たないぞ?」

 そう言いながら、ティファニアのサラサラの髪を撫でてやる。嫌がるでもなく、気持ち良さそうに見を閉じ、

「理性、無くしてくれても良いのに……」
「え?」

 ティファニアが何かを小声で呟いたが聞き取れず。ティファニアもわざわざ言い直すことはせず、静かな沈黙が訪れる。


「旦那さまの傍は、あったかくて安心しますね」
「そうか?」

「ずっと悩んでいた結界についても、あっさり解決してしまいました。旦那さまは、まさしく救世主のような方です」
「そんな大げさな。あんなの、ちょっとした工夫だぞ? 全然、大したことはしてない」

 というか、ただの応急処置だしな。まだまだやらなければならないことは、いっぱいある。
 
「そういう驕らないところも素敵です! やっぱり旦那さまで良かった」

 そんなことをしみじみと呟き、


「旦那さま、私のこと好きにして良いんですよ?」

 ティファニアは上目遣いで、さらなる爆弾を投げつけてきた。数々の発言に、俺のちっぽけな脳みそがフリーズしかけたころ、


「このバカエルフ~! なにをどさくさに紛れて、リット様を誘惑してるんですか!」

 部屋に少女たちが飛び込んできた。リーシアが勢いよく駆け寄り、ティファニアのほっぺをムニーっと引っ張る。

「り、リーシア。ひ、ひひゃいです、こうさんです。ごめんなさい!」
「反省してください!」

 そんな2人の言い争いをよそに、


「まったく、油断もスキもあらへんで。何が宿の主人だから一緒には眠れない……や、バッチリ来とるやないか!」
「危なかった、リーシアさんお手柄です! 不覚です。こんな簡単な手に、気が付かなかったなんて……」

 飛び込んできた少女たちは、あれよあれよという間にティファニアを部屋の入り口まで、ズリズリと引きずっていく。

(やれやれ、ほんとうに理性が吹っ飛びかけたぞ)


 ティファニアにとっては、軽いスキンシップなのかもしれないが、王国でボッチ生活を謳歌した人間には、かなりの刺激なんだぞ?
 

「お騒がせしました。それでは師匠、おやすみなさい」
「ああ。おやすみ、アリーシャ」

 ひとしごと終えたと言わんばかりの満足そうなアリーシャたちと、むーっと悔しそうなティファニア。騒々しいけど、弟子がお泊り会を満喫しているようで何よりだ。


(ふむ、念のためにこの部屋にも侵入防止の結界を張っておくかな)

 合鍵はやばい。次やられたら、ほんとうに理性が持たなそうだ。
 俺は単純な魔法陣を3つほど生み出し、無造作に混ぜ合わせると入り口の扉に向かって放り投げた。これで俺の許可なく、この部屋に入ってこれる者はいなくなるはずだ。


 俺は安心してベッドに戻り――そのまま眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

騎士団長を追放した平和ボケ王国は、七日で滅びました

藤原遊
ファンタジー
長らく戦のなかった王国で、 騎士団長の父を病で失った令嬢は、その座を引き継いだ。 だが王城に呼び出された彼女に告げられたのは、 騎士団の解体と婚約破棄。 理由はただ一つ―― 「武力を持つ者は危険だから」。 平和ボケした王子は、 非力で可愛い令嬢を侍らせ、 彼女を“国の火種”として国外追放する。 しかし王国が攻められなかった本当の理由は、 騎士団長家が持つ“戦況を覆す力”への恐れだった。 追放された令嬢は、即座に隣国帝国へ迎えられ、 軍人として正当に評価され、安泰な地位を得る。 ――そして一週間後。 守りを捨てた王国は、あっけなく陥落した。 これは、 「守る力」を理解しなかった国の末路と、 追放された騎士団長令嬢のその後の物語。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...