1 / 9
1. 失恋
しおりを挟む
「え、キモ……。近寄らないでくれる?」
それが僕の幼馴染――エリシアの第一声だった。
魔術学院の放課後の教室で。
僕――カインはエリシアにばっさりと切り捨てられ、人生初の失恋をした――
***
今日はエリシアの誕生日だ。
エリシアとは僕の幼馴染であり、学校にはファンも存在する美少女である。
すらっとしたモデルのような体型に、燃えるような赤髪ツインテールが特徴的な女の子だ。
僕はエリシアに誕生日プレゼントを渡すために、こっそり彼女を放課後の教室に呼び出していた。
「プレゼントは何にしようかな。
今年から本格的にダンジョン攻略が始まるのに、エリシアはあんなに薄着で危なくて――そうだ。身を守るために召喚獣をプレゼントしよう」
悩みに悩み、僕はとっておきの魔道具を開発することに成功した。
どんなときも彼女を守ってくれるように、と願いを込めた14年の人生で最高の出来を誇るプレゼント。
僕はエリシアに人工生命体――守護獣をプレゼントすることにしたのだ。
(見た目は犬なんだけど――)
(ううん。エリシアは犬が好きだって言ってたし、きっと喜んでくれるよね)
ここ数日は、寝る間を惜しんで魔術式を構築してきた。
すべてはエリシアが喜ぶ姿を見るためだ。
もし受け取ってくれたなら、告白しよう――そんなことすら考えていたとっておきの一品。
そんな誕生日プレゼントを前に、エリシアはあろうことか……、
「はぁ? 魔術オタクの陰キャが、わたしに告白? 無いわー、本当に無いわー」
軽蔑しきった目で、僕を見てきたのだ。
さらにはエリシアの後ろでは、
「ぎゃははは、まさかオタクくんが、本当にエリシアちゃんと付き合えると思ったの?」
「それは思い上がりすぎ! ぎゃははははは!」
「万に一つも、あり得ないでしょう!」
「ちょっと、本当のこと行ったら可哀想だって!」
エリシアだけを呼び出したはずの教室には、大勢のクラスメイトの姿があった。
誰もが僕の方を見て、馬鹿にするような笑みを浮かべていた。
……地獄だった。
「エリシア、どうして? あんなに僕の発明品を褒めてくれたじゃないか」
僕が魔術学院で不人気の発明科に進んだのも、すべてはエリシアを喜ばせるためだった。
彼女の笑顔が見たい一心で勉学にも打ち込んだし、今日まで頑張ってきたのだ。
それなのに、それなのに――
「え~。だって、気持ち悪いんだもの。なんなのそれ?」
「え? 犬だけど……」
昨日の夜中、ついに生み出すことにした人工生命体。
犬を模したもので、手触りにもこだわった一品だ。
護衛目的の戦闘能力だけでなく、もふもふの毛並みは癒やしすら与えてくれる。
「それが気持ち悪いって言ってんのよ! 魔法陣を紡ぎながら、いっつも気味の悪い笑みを浮かべて――ほんとうに気持ち悪い!」
「それじゃあ……。いつも僕の発明品を見て喜んでくれてたのは?」
「え? だって原材料をバラせば、良いお金になるし。今回もそうしようと思ってたのに……、あまりにも気持ち悪くて耐えられなかったのよ!」
「それじゃあ、今まで僕のプレゼントはバラバラにされて売られてたの?」
丹精こめて作ったプレゼントの末路を知らされ、あまりにもショックだった。
「それに今日は、『デビルシード』の最新型の魔道具の発売日なのよ。
こんなところで、あんたに構ってる暇はないの」
エリシアがうっとりとそんなことを言った。
恋する乙女のような表情で口にしたのは、新進気鋭の魔道具ブランドの名前だ。
(え? デビルシードって、僕が立ち上げた商会のことだよね……)
(なんで今、そのことを?)
「もちろん知ってるよ。これはデビルシードに卸す前の、正真正銘の最新作で――」
「はあ? あんた、まだデビルシードの創業者を騙ってるの?」
騙ってるも何も、すべては事実だ。
エリシアにはそのことを何度も話していた――いつも適当に聞き流してたのは知ってたけど。
まさか信じられてすらいないなんて、思いもしなかった。
「あんたなんかが、デビルシードの創業者な訳ないじゃない!
きもっ。まだそんな嘘を付いてるの? キモすぎて鳥肌立ったわ今……」
エリシアが両腕をさする。
「それじゃあエリシアが、今まで僕の発明品を褒めてくれたのは……?」
「あんたから1ゴールドでも多く搾り取るために決まってるじゃない!
ふふっ、少しは良い夢が見れたでしょう?」
騙してきたことを悪びれることもなく、エリシアは意地の悪い笑みを浮かべた。
隣りにいた金髪のチャラ男が、エリシアの肩に手をおいた。
エリシアの方も、満更でもない様子だ。
「私――ジーくんと付き合うことにしたから」
「え……?」
「そういうことだから。悪いな、オタクくん!」
チャラ男が、勝ち誇ったような笑みを浮かべて僕を見た。
典型的な陽キャで名前はたしかジオルド――なぜか僕を目の敵にしており、いつも嫌味を言ってきた男だ。
「その魔道具を弄る趣味――いい加減やめた方が良いわよ。気持ち悪いもの」
そう言い残しエリシアは去っていった。
クスクスと笑いながら、クラスメートたちも去っていく。
(そうか。そういうことだったのか……)
ようやく僕は悟る――この場は、僕のことを笑い者にするためだけに設けられたのだと。
エリシアは今日、僕が告白することを読んで、仲の良いクラスメートと馬鹿にするために、こうして集まっていたのだ。
「そんなもの弄ってる分際で、エリシアちゃんと付き合おうとか本気だったのか?」
「あっはっは。まじでウケルー!」
「身の程わきまえた方が良いって。ぎゃっはっは!」
そんな罵倒を浴びせられ、用意したプレゼントが蹴り返される。
犬を模した魔道具は、く~ん……、と悲しそうな声で鳴いた。
さんざん僕を罵倒して満足して、クラスメートたちは教室を去っていった。
それが僕の幼馴染――エリシアの第一声だった。
魔術学院の放課後の教室で。
僕――カインはエリシアにばっさりと切り捨てられ、人生初の失恋をした――
***
今日はエリシアの誕生日だ。
エリシアとは僕の幼馴染であり、学校にはファンも存在する美少女である。
すらっとしたモデルのような体型に、燃えるような赤髪ツインテールが特徴的な女の子だ。
僕はエリシアに誕生日プレゼントを渡すために、こっそり彼女を放課後の教室に呼び出していた。
「プレゼントは何にしようかな。
今年から本格的にダンジョン攻略が始まるのに、エリシアはあんなに薄着で危なくて――そうだ。身を守るために召喚獣をプレゼントしよう」
悩みに悩み、僕はとっておきの魔道具を開発することに成功した。
どんなときも彼女を守ってくれるように、と願いを込めた14年の人生で最高の出来を誇るプレゼント。
僕はエリシアに人工生命体――守護獣をプレゼントすることにしたのだ。
(見た目は犬なんだけど――)
(ううん。エリシアは犬が好きだって言ってたし、きっと喜んでくれるよね)
ここ数日は、寝る間を惜しんで魔術式を構築してきた。
すべてはエリシアが喜ぶ姿を見るためだ。
もし受け取ってくれたなら、告白しよう――そんなことすら考えていたとっておきの一品。
そんな誕生日プレゼントを前に、エリシアはあろうことか……、
「はぁ? 魔術オタクの陰キャが、わたしに告白? 無いわー、本当に無いわー」
軽蔑しきった目で、僕を見てきたのだ。
さらにはエリシアの後ろでは、
「ぎゃははは、まさかオタクくんが、本当にエリシアちゃんと付き合えると思ったの?」
「それは思い上がりすぎ! ぎゃははははは!」
「万に一つも、あり得ないでしょう!」
「ちょっと、本当のこと行ったら可哀想だって!」
エリシアだけを呼び出したはずの教室には、大勢のクラスメイトの姿があった。
誰もが僕の方を見て、馬鹿にするような笑みを浮かべていた。
……地獄だった。
「エリシア、どうして? あんなに僕の発明品を褒めてくれたじゃないか」
僕が魔術学院で不人気の発明科に進んだのも、すべてはエリシアを喜ばせるためだった。
彼女の笑顔が見たい一心で勉学にも打ち込んだし、今日まで頑張ってきたのだ。
それなのに、それなのに――
「え~。だって、気持ち悪いんだもの。なんなのそれ?」
「え? 犬だけど……」
昨日の夜中、ついに生み出すことにした人工生命体。
犬を模したもので、手触りにもこだわった一品だ。
護衛目的の戦闘能力だけでなく、もふもふの毛並みは癒やしすら与えてくれる。
「それが気持ち悪いって言ってんのよ! 魔法陣を紡ぎながら、いっつも気味の悪い笑みを浮かべて――ほんとうに気持ち悪い!」
「それじゃあ……。いつも僕の発明品を見て喜んでくれてたのは?」
「え? だって原材料をバラせば、良いお金になるし。今回もそうしようと思ってたのに……、あまりにも気持ち悪くて耐えられなかったのよ!」
「それじゃあ、今まで僕のプレゼントはバラバラにされて売られてたの?」
丹精こめて作ったプレゼントの末路を知らされ、あまりにもショックだった。
「それに今日は、『デビルシード』の最新型の魔道具の発売日なのよ。
こんなところで、あんたに構ってる暇はないの」
エリシアがうっとりとそんなことを言った。
恋する乙女のような表情で口にしたのは、新進気鋭の魔道具ブランドの名前だ。
(え? デビルシードって、僕が立ち上げた商会のことだよね……)
(なんで今、そのことを?)
「もちろん知ってるよ。これはデビルシードに卸す前の、正真正銘の最新作で――」
「はあ? あんた、まだデビルシードの創業者を騙ってるの?」
騙ってるも何も、すべては事実だ。
エリシアにはそのことを何度も話していた――いつも適当に聞き流してたのは知ってたけど。
まさか信じられてすらいないなんて、思いもしなかった。
「あんたなんかが、デビルシードの創業者な訳ないじゃない!
きもっ。まだそんな嘘を付いてるの? キモすぎて鳥肌立ったわ今……」
エリシアが両腕をさする。
「それじゃあエリシアが、今まで僕の発明品を褒めてくれたのは……?」
「あんたから1ゴールドでも多く搾り取るために決まってるじゃない!
ふふっ、少しは良い夢が見れたでしょう?」
騙してきたことを悪びれることもなく、エリシアは意地の悪い笑みを浮かべた。
隣りにいた金髪のチャラ男が、エリシアの肩に手をおいた。
エリシアの方も、満更でもない様子だ。
「私――ジーくんと付き合うことにしたから」
「え……?」
「そういうことだから。悪いな、オタクくん!」
チャラ男が、勝ち誇ったような笑みを浮かべて僕を見た。
典型的な陽キャで名前はたしかジオルド――なぜか僕を目の敵にしており、いつも嫌味を言ってきた男だ。
「その魔道具を弄る趣味――いい加減やめた方が良いわよ。気持ち悪いもの」
そう言い残しエリシアは去っていった。
クスクスと笑いながら、クラスメートたちも去っていく。
(そうか。そういうことだったのか……)
ようやく僕は悟る――この場は、僕のことを笑い者にするためだけに設けられたのだと。
エリシアは今日、僕が告白することを読んで、仲の良いクラスメートと馬鹿にするために、こうして集まっていたのだ。
「そんなもの弄ってる分際で、エリシアちゃんと付き合おうとか本気だったのか?」
「あっはっは。まじでウケルー!」
「身の程わきまえた方が良いって。ぎゃっはっは!」
そんな罵倒を浴びせられ、用意したプレゼントが蹴り返される。
犬を模した魔道具は、く~ん……、と悲しそうな声で鳴いた。
さんざん僕を罵倒して満足して、クラスメートたちは教室を去っていった。
1
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました
由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。
このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。
「――だったら、その前に稼げばいいわ!」
前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。
コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。
そんなある日、店に一人の青年が現れる。
落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。
しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!?
破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。
これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む
ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる