4 / 4
頼りにしていますよ、相棒!
「馬鹿王子が起こした問題はすべて馬鹿王子が原因です。誰もリリアンヌ様が至らないせいだとは思っていませんわ」
「そうですよ! あんなダメ王子が、今まで大きな問題を起こさず済んだのは、間違いなくリリアンヌ様のおかげですよ。最後にとどめを刺しましたけど……」
「お、おまえたちはそんなことを思っていたのか……」
ショックを受けた様子の王子。言葉の刃、王子を切り刻む。
貴族、やっぱりこわい。
普段はあれほど王子を立て、社交の場では大人しそうな笑みを浮かべていたというのに……。
言葉の裏で何を考えているのか、本当に分からない。
「だから庶民に下るなんて……冒険者になるなんて、どうか考え直してください」
誤解、でもたしかな親切心からでている言葉。
でも、エミリーからだけは聞きたくなかった!
「なんでよ、エミリー……。それこそが本当の願いだって。エミリーだけは心の底から賛同してくれてると思ってたのに。
危険な依頼も一緒に受けて回った。
クエストの苦楽を共にした――何度も一緒に冒険した仲間じゃない!」
思わず口を突いて出てきたのは、秘密の暴露。
でも止められない。
「で、でもそれは……。私がお金を欲しているから、仕方なく……。
改めて謝罪させてください。
リリアンヌ様を危険な目に合わせてしまって、申し訳ありませんでした」
「やめてよ……」
なら、楽しんでいたのは私だけ?
だとしたらむなしさしか感じない。
そんな謝罪はまったくもって望んでいない。
「あんなに楽しそうにしてたじゃない!
キャンプをしながら笑っていたじゃない。
あの時の笑顔は、初めて聖女の魔法を発動したときの感動は――すべてウソだったというの!?」
「もちろん楽しかったです!」
エミリーの口から出たのも素直な言葉。
それを聞いてホッとする。
一方のエミリーは、その言葉を恥ずべきものだとでも言うように慌てて口を押える。
そうして言葉をつづけた。
失われた幻想を追い求めるような、そんな思い出を懐かしむような口ぶりで。
「楽しかったですけど……だからこそ申し訳なかったです。
未来の王妃である公爵令嬢を巻き込んで――ひと様の迷惑を考えずに……。
私はいったい、何をしているんだろうって……」
「エミリー……」
「受けた恩は大きすぎてとても返すことはできません!
でも――だからこそ、これで終わりなんていうのは嫌なんです!」
エミリーが本気で言っていることが分かってしまった。
私に返しきれないほどの恩があると、心の底から思っていることも理解できた。
たしかに、貴族の常識で考えて、王妃という約束された身分を捨ててまで冒険者を志すというのは理解できないのだろう。
「……何度でも言うわ。庶民になって冒険者として生活するのが私の夢だったって」
ああ、だめだ。
こんな言い方では、一度発生した思い込みを解くことは到底できない。
そんな閉塞感を破ったのは、エミリーの思いもよらないひとこと。
「なら! 私も冒険者になります!
私の聖女の力は助けになるはずです!」
「何馬鹿なこと言ってるのよ、エミリー! そんなこと出来るはずないでしょ!」
「だって……! だって……!」
どうにかして私を引き留めようとするエミリーを見て……。
ハッ、と気付く。
"おんなじなのだ"、と。
きっと私もエミリーも、常識で考えてしまって本音を見失ってしまっている。
常識を取っ払ったときに残るのは――
……なら、もしかすると。エミリーの本当の願いは?
「本気、なのね?」
「本気です。リリアンヌ様が考え直さないのなら」
「……分かったわ」
そううなずくと、エミリーは我に返ったように「申し訳ございません」と、私から距離を取る。
安心したような表情。
「何度も言うけれど……わたくし
――いいえ私は、本当に冒険者になりたいと思ってるのよ?」
口調をクエスト中のものに戻す。否、これが素である。
「なに? それともエミリーはあのクエストを一緒に受けた、楽しかった日々を否定するの?」
だいたい、あんな危険な場所まで。
好きでもないのに、本当に同情だけでついていくとでも思っているのかしら?
そう思い、思わずジト目を向けると――
「それでは、本当に?」
思わず、といった様子でおずおずとこちらの本心を問いかける。
対する私は――
「はい。もちろん本当です。私は、冒険者になりますよ!
誰のためでもなく、私自身のために! 私自身がそう望んで!」
令嬢としては"はしたない"とさえ言われそうな、感情を表に出した笑顔を浮かべる。
「それで、エミリーも来てくれるのよね?」
「もちろんです! どこまでもお供します、リリアンヌ様!」
それは今日一の良い笑顔であった。
置いてきぼりを喰らい、呆然とうる王子を完全無視して無邪気に手を取り合い喜ぶ2人。
「頼りにしていますよ、相棒!」
――それは、後々まで語り継がれる伝説のパーティー結成の瞬間であった。
「そうですよ! あんなダメ王子が、今まで大きな問題を起こさず済んだのは、間違いなくリリアンヌ様のおかげですよ。最後にとどめを刺しましたけど……」
「お、おまえたちはそんなことを思っていたのか……」
ショックを受けた様子の王子。言葉の刃、王子を切り刻む。
貴族、やっぱりこわい。
普段はあれほど王子を立て、社交の場では大人しそうな笑みを浮かべていたというのに……。
言葉の裏で何を考えているのか、本当に分からない。
「だから庶民に下るなんて……冒険者になるなんて、どうか考え直してください」
誤解、でもたしかな親切心からでている言葉。
でも、エミリーからだけは聞きたくなかった!
「なんでよ、エミリー……。それこそが本当の願いだって。エミリーだけは心の底から賛同してくれてると思ってたのに。
危険な依頼も一緒に受けて回った。
クエストの苦楽を共にした――何度も一緒に冒険した仲間じゃない!」
思わず口を突いて出てきたのは、秘密の暴露。
でも止められない。
「で、でもそれは……。私がお金を欲しているから、仕方なく……。
改めて謝罪させてください。
リリアンヌ様を危険な目に合わせてしまって、申し訳ありませんでした」
「やめてよ……」
なら、楽しんでいたのは私だけ?
だとしたらむなしさしか感じない。
そんな謝罪はまったくもって望んでいない。
「あんなに楽しそうにしてたじゃない!
キャンプをしながら笑っていたじゃない。
あの時の笑顔は、初めて聖女の魔法を発動したときの感動は――すべてウソだったというの!?」
「もちろん楽しかったです!」
エミリーの口から出たのも素直な言葉。
それを聞いてホッとする。
一方のエミリーは、その言葉を恥ずべきものだとでも言うように慌てて口を押える。
そうして言葉をつづけた。
失われた幻想を追い求めるような、そんな思い出を懐かしむような口ぶりで。
「楽しかったですけど……だからこそ申し訳なかったです。
未来の王妃である公爵令嬢を巻き込んで――ひと様の迷惑を考えずに……。
私はいったい、何をしているんだろうって……」
「エミリー……」
「受けた恩は大きすぎてとても返すことはできません!
でも――だからこそ、これで終わりなんていうのは嫌なんです!」
エミリーが本気で言っていることが分かってしまった。
私に返しきれないほどの恩があると、心の底から思っていることも理解できた。
たしかに、貴族の常識で考えて、王妃という約束された身分を捨ててまで冒険者を志すというのは理解できないのだろう。
「……何度でも言うわ。庶民になって冒険者として生活するのが私の夢だったって」
ああ、だめだ。
こんな言い方では、一度発生した思い込みを解くことは到底できない。
そんな閉塞感を破ったのは、エミリーの思いもよらないひとこと。
「なら! 私も冒険者になります!
私の聖女の力は助けになるはずです!」
「何馬鹿なこと言ってるのよ、エミリー! そんなこと出来るはずないでしょ!」
「だって……! だって……!」
どうにかして私を引き留めようとするエミリーを見て……。
ハッ、と気付く。
"おんなじなのだ"、と。
きっと私もエミリーも、常識で考えてしまって本音を見失ってしまっている。
常識を取っ払ったときに残るのは――
……なら、もしかすると。エミリーの本当の願いは?
「本気、なのね?」
「本気です。リリアンヌ様が考え直さないのなら」
「……分かったわ」
そううなずくと、エミリーは我に返ったように「申し訳ございません」と、私から距離を取る。
安心したような表情。
「何度も言うけれど……わたくし
――いいえ私は、本当に冒険者になりたいと思ってるのよ?」
口調をクエスト中のものに戻す。否、これが素である。
「なに? それともエミリーはあのクエストを一緒に受けた、楽しかった日々を否定するの?」
だいたい、あんな危険な場所まで。
好きでもないのに、本当に同情だけでついていくとでも思っているのかしら?
そう思い、思わずジト目を向けると――
「それでは、本当に?」
思わず、といった様子でおずおずとこちらの本心を問いかける。
対する私は――
「はい。もちろん本当です。私は、冒険者になりますよ!
誰のためでもなく、私自身のために! 私自身がそう望んで!」
令嬢としては"はしたない"とさえ言われそうな、感情を表に出した笑顔を浮かべる。
「それで、エミリーも来てくれるのよね?」
「もちろんです! どこまでもお供します、リリアンヌ様!」
それは今日一の良い笑顔であった。
置いてきぼりを喰らい、呆然とうる王子を完全無視して無邪気に手を取り合い喜ぶ2人。
「頼りにしていますよ、相棒!」
――それは、後々まで語り継がれる伝説のパーティー結成の瞬間であった。
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
追放された役立たず聖女、実は国家の回復システムでした。私が消えた途端に国は崩壊、今さら泣いても戻りません。元勇者の魔王様に独占されています
唯崎りいち
恋愛
「役立たずの聖女はいらない」と国王に追放された私。
だがその瞬間、国中の“宿屋で一晩寝れば全回復する仕組み”は崩壊した。
――それは、私の力で成り立っていたから。
混乱する人間たちをよそに、私は元勇者だった魔王様に連れ去られる。
魔王様はかつて勇者として魔物を虐げていた過去を持ち、
今は魔物を守るために魔王となった存在だった。
そして私は気づく。
自分の力は、一人を癒すだけでなく――世界そのものを支えていたのだと。
やがて回復手段を失った勇者たちは崩壊し、
国王は失脚、国は混乱に陥る。
それでも私は戻らない。
「君は俺のものだ。一生手放さない」
元勇者の魔王様に囲われ、甘やかされ、溺愛されながら、
私は魔王城で幸せに暮らしています。
今さら「帰ってきて」と言われても、もう遅いのです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
『お前のためを思って言っている』が千回記された日記帳が、社交界に流出した件
歩人
ファンタジー
「お前のためを思って言っている」「普通はこうだろう?」「お前が悪いから怒るんだ」——ディートリヒ侯爵子息は、婚約者のカティアにそう言い続けた。3年間、毎日。カティアは日記をつけていた。恨みではない。「何が普通なのか」を確かめるために。日記には日付と、彼が言った言葉だけが記されている。感想も解釈もない。ただ事実だけ。婚約破棄の場で、カティアは日記を読み上げなかった。ただ、茶会で親しい令嬢に見せただけだ。令嬢たちは青ざめた。「これ、全部言われたの?」日記は写本され、社交界に広がった。ディートリヒ本人は「何がおかしいのかわからない」と主張した。——それが一番怖いのだと、誰もが理解した。
神子は、不要と判断された
ゆめ@マンドラゴラ
ファンタジー
神子は奇跡を起こさない。
ただ、問題が起きないようにしている。
人々はそれを理解できなかった。
そして神子は、不要と判断される。
――何も起きないことの価値を、失ってから知ることになる。
【完結】死がふたりを分かつとも
杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」
私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。
ああ、やった。
とうとうやり遂げた。
これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。
私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。
自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。
彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。
それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。
やれるかどうか何とも言えない。
だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。
だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺!
◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。
詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。
◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。
1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。
◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます!
◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。
婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。
ムラサメ
恋愛
「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」
婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。
泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。
「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」
汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。
「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。
一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。
自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。
ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。
「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」
圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!
面白かったですよー!
完結勿体無い!番外編で王子のその後とか
実家のその後とか(実は両親も家の者達も、冒険者だった過去があるとか)
番外編読みたいな〜
今日、この作品を見つけて一気読みしました。
とても面白かったので、もう少し続きが読みたいですね。