病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ

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暗躍する者たち-2

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【アレシアナサイド】

 実戦演習が終わったある日のこと。
 自室で優雅に紅茶を嗜んでいた少女――アレシアナの元に、

「アレシアナさま、助けて下さい!」
「そうです。私たちは、指示された通りに事を起こしました。約束通り、モンタージュ派――ルナシア様に今回の件の取りなしを――」

 2人の少女が駆け込み、そう喚き散らした。


「えーっと、何のことでしたっけ?」

 2人の名は、レイラとカトリーナ課外演習でムカデの卵を孵化させてセシリアを狙った犯人である。
 必死の訴えを前に、アレシアナは紅茶を机に置き、

「セシリアさんは、まだピンピンしてるじゃありませんか。これじゃあ、約束が違いますわ――あの方だって、何とおっしゃられることか」

 2人の少女に、冷たい視線を送る。

「まあ、事件の黒幕として処断。殺人未遂は重罪ですわよ。可哀想に――中央にポストを用意するどころか、このままいけば鉱山刑ってところですかね?」
「「ヒィィ、お許しを――」」

 ガクガクと震えあがるレイラたち。

「まあ、良いですわ。私たちは一蓮托生――あの方には、私の方から口添えして差し上げますわ」
「「あ、アレシアナ様……!」」
「あなたたちが頼れるのは私だけ。だから安心して、私に身も心も授けて?」

 安心させるように、そう微笑むアレシアナ。
 そう言いながらアレシアナは、密かに得意の闇魔法を発動させる。
 精神汚染の魔法――忌むべきものと嫌われた禁術だ。

 やがてレイラたちは、目をとろんとさせて人形のように棒立ちになった。
 その瞳には、すでに何の感情も浮かんでおらず、


「いつまでもここに居ては、怪しまれてしまいますわ。部屋に戻って下さいます?」
「「はい、アレシアナ様」」

 アレシアナの言葉に従い、2人の少女は部屋を後にするのであった。




「さて……、作戦は失敗ですか。あの方への貢物、これで許してもらえますかね」

 誰も居ない部屋で、アレシアナはそうぼやく。

 これからするのは、失敗の報告。
 痛む胃を押さえながら、アレシアナは通信魔法の魔導具を、あの方――シリウス教頭に繋ぐ。

 モンタージュ一派――その長であるルナシア・モンタージュは、とうの昔にアレシアナの手により傀儡とされていた。
 実質、この派閥をどう動かすも、シリウス達の思うままであった。

「シリウス様、報告が」
「どうしましたか?」

「作戦は失敗です。例の平民に妨害されました」
「そう、ですか……。また、あいつらですか――」

 シリウスは、苦々しい口調でそう呻く。
 来たる日に備えて、学園ダンジョンで秘密裏に育てていた上級モンスターをフィアナたちに殲滅されてしまったのは、シリウスにとって忌々しい記憶であった。

「我が国に蔓延るガンの分際で――本当に、忌々しいことですね」

 誰にでも別け隔てなく接する紳士――それは彼の偽りの顔であった。

 シリウスは、特進クラス唯一の平民であるフィアナとエリンを目の敵にしていた。

 役に立たない魔導書の切れ端を渡してエリンの覚醒を遠ざけていたのは彼の策略であったし、フィアナが編入してこなければ、策略通りエリンは退学になっていただろう。

 貴族と平民の対立を煽り、融和派――有能なら血筋に関係なく重用すべき重用するべきと考える勢力――の生徒を、自身と同じ純血派に染め上げたこともある。
 染まらない融和派の生徒は、秘密裏に排除してきた。


 国を変えるなら教育から――シリウスは、その立場を十全に活かしていた。

「シリウス様。此度の失敗に対して、ささやかなお詫びの品がございます」
「何でしょう?」

「使い潰せる駒を2体ほど」
「ふ~ん、あなたにしては珍しい贈り物ですね。まあ私にとっては、あなたも使い捨ての駒に過ぎないわけですが?」

「……ッ!」


 怯えた様子で息を呑むアレシアナ。
 その反応を楽しむように、たっぷり間をとりシリウスは、


「まあ良いでしょう。今回は大目に見てあげます」
「ありがとうございます」

 アレシアナは、震えながらそう頭を下げる。

 シリウスの基本理念は、純血至上主義――極端なまでのエリート至上主義だ。

 恐怖で人々を押さえつけることを是としており、それ故に失態を犯した者には、身内であっても容赦のない制裁を加えた。
 実際、彼の娘であるルナシアという生徒は、大派閥の長でありながら物言わぬ傀儡にされていたし、彼の手で”失踪”した者も大勢いる。

「次は良い報告を期待してますよ、アレシアナさん」

 そんな言葉とともに通話が切られ、

「……冗談じゃない」

 ギリリと唇を噛みしめるアレシアナ。
 とはいえ当然、どこにも相談相手など居るはずもなく、

「準備を、進めるとしましょうか」

 粛々と仕事に取り掛かるのであった。
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