許婚様は私がお好きらしい。

はるの美羽都

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許婚様のお気持ち

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    許婚様のお部屋に来るのも久しぶりですわ。本棚には、小説や歴史の本など色々あります。
私は小説も読みますが、恋愛モノや学園モノの青春小説や漫画ばかり。
流石は、主席を守り続けている許婚様ですわね。
お義母様は先ほどの余韻よいんに浸っているそうなので、許婚様がお茶とお菓子を持ってきてくださいましたわ。
「それで、早速だが……話をしようか」
「あっ、ハイ」
「桜、お前に俺の気持ちは伝わっていると思っていたのだが……俺の思い込みだったようだな」
「あの……お気持ちって、どのタイミングでどのようにおっしゃってくださっていたのでしょうか……」
「はぁああああ!?」

ビクぅ!

「あ、や……ごめんなさい」
「俺としては懸命に、態度やら言葉にやら表していたのだが……」
「えぇっと……どの辺でしょうか?」
「はぁ……」
 右手で顔を覆って、ため息をつかれてしまいましたわ……もしかして幻滅、されたかしら。
いや、だってあんなポーカーフェイスっぷりから、どうやって態度や言葉を汲み取ればよいのか……
私はエスパーではありませんので、流石に無理がありますわ!
「桜……」
「はい!」
「その……俺ってどんなだ?」
「はい?」
「俺は俺なりに、桜に伝えてきたと思っているのに実際、桜には伝わっていない」
「はい……」
「ということは、俺の方に問題があるのかも知れない」
いや、許婚様の方に問題アリアリなんですけれども!!
でも、真っ先に「お前に問題があるんじゃないのか?」って言われると思っていたから、何だか意外ですわ……
「あの……大変、申し上げにくいのですが……」
私は正直に許婚様が、普段から私にどのように接していらっしゃるのか、ポーカーフェイスの度合いも合わせてお話すると、両手で顔を覆われてしまいました。
何かあったのかと、お声を掛けると
「そうか……俺は普段から、そんなだったのか。俺としたことが……」
なげいておられました。
「あの……ですから」
「分かった、腹を括ろう。これからは、せめて言葉で伝えよう」
「はい……?」
「態度を変えるのは、難しいと思うから……言葉でなら、まだ何とかなるかも知れない」
「いえ、無理だと思いますよ」
「なっ、それは何故だ?」
「だって、言葉で伝えるだなんて至難の技ですわ!私だって……」
「私だって……?」
「言葉で伝えたくても、恥ずかしさで……言えませんのに」
「はぁ!?」
「えっ」
「さ、桜……俺に何か伝えようとしていたのか……?」
「えっ?えぇ……」
「それは、すまなかったな」
「えっ、そんな!」
「何かあれば、遠慮なく引き止めてくれ」
「じゃあ、時と場合で……」
「いや、桜以上に大切なものなどあるか」
「えっ!」
「あぁ……確かに、そうだな」
「何が、ですか?」
「言葉で伝えるのは……難しいようだ」
真っ赤な顔をして言った許婚様、とっっても可愛らしいですわ!
そうなのです。言葉で伝えるのが苦ではない方からすれば「何が?」って話なのですが、こうも面と向かって言葉で気持ちを伝えるのが恥ずかしい、と思っている人にとって、これはなかなかハードルが高いのです。
これから、私と許婚様はどうなるのやら。ですわね。

    あれから、許婚様は私に恥ずかしがりながらも表情を赤くして、ときめく言葉をくださいました。
私はてっきり、許婚様に「許嫁だから」してくださっていた、とばかり思っていました。
感情的になってくださった時も、気のせいだと思っていました。
しかし、それは全く違っていました。
許婚様はいつでも、私を想っていてくださっていたのです。
それはそれは、とても幸せで温かい素敵な時間でした。
私の気持ちですか?
まだ、告げておりません。許婚様から聞かれませんでしたので、胸の内に秘めておりました。
それは意地悪でしょうか?
私の気持ちは、いつの日か……許婚様に伝えようと思います。
えぇ、いつの日か。




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