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1.子爵領編
6.恩には恩を、罰には倍の復讐で報いることのススメ
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領都につき、まっすぐ、プライセン子爵家の屋敷へ到着。
俺の論功行賞で勝ち取る条件は、以下の3つ
一つ:中央官吏になるために、王都での行政大学校に入学することの許可
一つ:王都での学費・生活費を行政大学校卒業後3年間支援することの同意
一つ:中央官吏になった際、地方の子爵家とは名目上別家になるので、エリカとシンバを中央官吏になるともに、呼び寄せることの了解
このまま、直球で、ぶつけても素直に全部通るとは思えないので、父上の意見に影響を与えることができる人達へ根回しをしておこうか。
我が人生の師「小役人のススメ」にも「人の脛を攻めるが良なり。貴人の脛は妃なり、女貴人の脛は子、族を抱くことなり」とある。つまり、「貴族を落とすならば、その妻を抱き込みなさい。女貴族を落とすならば、その子供・家族を抱き込むのが最良の手だ」という意味だ。
まずは、母上。
次に、長男のモンド兄上。
最後に、死地へ送り出された発端であり、正直、会いたくない、次兄のピーチャー兄上。
作戦としては、母上には、学費・生活費を卒業後3年間の支援を応援してもらえれば、独り立ちするまでしっかり生きていけますよ、ふるさとから、いつまでも心配していてくれアピールだな。
モンドには、俺が今回の手柄をあげたことで邪魔に感じている可能性があるので、行政大学校のある王都へいくので、子爵領を出ていくことにメリットを感じるはず。
ピーチャーもモンド同様、同じく行政大学校へいくことで、子爵領の重臣職は興味ないと伝え、あとは、シンバとエリカもつれていけば、アーチャー家は代替わりして、力が弱まり、ピーチャーの重臣としての立場も盤石だ、ということで話を持っていこう。
俺を前線へ送ってくれたことはあまり恨んではいないよ。結果、王都へすんなり、いけるからね。
結果、事前交渉は、それぞれ、すんなりうまくいった。
母上は、やっぱり実の親だね。
行政大学校卒業しても、すぐに官吏になれるかわからないから、5年間は支援してもらいなさい、って。父様に口添えしてくれるって。お母さん、末の男の子には甘々でありがとう。いつか、立派な老後むかえさせてやるからな。
モンドとピーチャーに至っては、各々が別々に、敵を撃退した作戦は、モンド/ピーチャーから助言を得たといってくれれば、全力で父上への口添えしてやるってさ。
どんだけ、功を焦っているのだか。
こちらは名誉よりも実利が得られればよいので、いくらでも兄たちをほめたたえてやるよ。
上辺だけは。
屋敷の謁見の場で、父上、母上、兄二人、重臣たち、に加えて、アーチャー家のシンバとエリカもいた。きっと母上がシンバとエリカを、気を聞かせて呼んでくれたのだろう。
謁見の場にいる面々を観察していたら、父上と知らない爺さんが謁見室にはいってきた。
爺さんは隣の領地の貴族の関係者かな?
「アルフ。見事、シスプチン王国軍を退けたな。よくやった。精鋭の飛竜騎士団やオークもいたと聞いたが、5倍の敵軍をどうやって退けたのだ。聞かせてくれ」
「父上、お褒めの言葉、ありがたき幸せ。シンバをはじめ、アーチャー家の精鋭を中心に250名の兵士たちが頑張ってくれたことが大きいです。私の力など微力に過ぎませんでした。ただ、初陣を無事勝利で飾れた事、プライセン子爵領を外敵から守れた事の一助になれたことが大変うれしく思います」
謙虚に、無難に返事をしておく。
「よくぞ申した。しかし、王都にも援軍の差配をしてもらった手前、詳細を報告せねばならぬ故、どうやって撃退したのか、その策を具体的に聞かせよ」
結局、王都から援軍が来るまでもなかったが、一応は急ぎ兵の準備をしてもらったので、顛末の報告が必要とのことか。
「はい。それは、後ほどじっくりと。その前に、父上、無事お役目をはたし、帰還できた際は、お願いしたきことがあり、お許しいただけるとのことでした。先にそちらのお話をさせてください」
先に、褒美をもらってからでないと、父上のみならず、モンドとピーチャーがどうでるかわからないからな。戦の話を後回しにしたせいで、父上の顔が少し不機嫌になってきたけど、先にもらうものはもらわないと。
「仕方ないやつだ。願いとはなんだ」
「はい。王都にいき、中央官吏になりたく、行政大学校にいかせてください。在学中の学費、生活費、それと、卒業後、正式に中央官吏になるまでの5年間の生活費を支援ください。最後に、中央官吏になった際は、プライセン子爵家とは名目上別家になるので、家宰として、シンバ、侍女長として、エリカを呼び寄せたいのです。」
父上の顔色を慎重に確認しながら、3つの交渉内容を伝えきった。
父上は、まったく予想していなかったのか、目をパチクリしている。
少し間をおいてから、
「官吏だと?お前、戦でこれだけの大手柄を挙げておきながら、内官になるつもりか?」
「はい。今回は、偶然と運が重なり、たまたま武功を上げられただけです。私は軍官や騎士には向いていません」
横から大きな笑い声が聞こえる。
「これは、プライセン卿も予想できませんでしたな。ご子息が内官になりたいとは。しかし約定してしまったものは致し方ありませんな」
「テリトー卿」
ぼそっと、爺さんに向かってつぶやいた。
テリトー卿と呼ばれた爺さんを意識してか、父上は何を言うのか考えをまとえてから口を開いた。
「わかった。行政大学校への入学を許可する。ただし、試験があるはずだから、合格した場合のみだ。それと在学中の学費・生活費、卒業後最大5年間の生活費は面倒みてやろう。ただし、アーチャー家のシンバを連れていくことは、今回のシンバの論功行賞があるため、今、即答はできん」
「僭越ながら、エルモ様、発言をお許しいただけますでしょうか?」
シンバが横から父上に発言の許可を得る。
「なんだ?シンバ」
「今回の戦で、私の戦功をお認めくださるのでしたら、アルフ様が中央官吏になられた際には、子爵家からお暇をいただきたく存じます。私は、アルフ様が幼少の頃より、守役として、姉ともどもアルフ様をお育てしてきました。許されるならば、そのままアルフ様が独り立ちした後は、アルフ様が行く道を歩みとうございます。何卒お許しの程を」
シンバが父上に頭を下げて頼んでいた。それを見て、俺も、エリカも、同時に「お許しください」と頭を下げた。
テリトー卿と呼ばれていた爺さんが、父上に向かって、朗らかに言い放った。
「これは、ご子息とその守役と、その隣は乳母かな? 3名の勢いに、さすがに武名の高いプライセン卿も負けましたな」
「わ、わかった。もうわかった。テリトー卿の前でこれ以上恥をかかせるな。アルフ。お前の今回の戦功の褒美として、3つの条件すべて認める。ただし、行政大学校の試験に合格すること、それから今回の戦況報告書をつくって、もってきないさい。いいな」
「父上、ありがとうございます!報告書はすぐに作成してお持ちします!」
事前の根回しした母上、兄2人の助けも要らず、条件をすべて勝ち取れた。テリトー卿という爺さんには助けられたな。いつかこの恩を返そう。
「恩には恩を、罰には倍の讐で報いるべし」これも、「小役人のススメ」の一説にあった。
結局、急いで退室しようとしたけれど、テリトー卿の爺さんがいたので、戦の報告書は明日でよくなった。
翌日、父上への口添えはしてもらっていないけど、一応約束はしたので、モンドとピーチャーの事を今回の戦で役立ったと報告書に記載しておいた。
王都へ父上が、報告するかどうか、わからないけど、義理は一応果たしたよね?
内容としては、モンドが厨房にあるピクルスを盗み食いするため、下品にしゃぶりついていたことを思い出し、ピクルス→漬物→壺が連想され、蛇壺を思いついたこと、ピーチャーの方は、隣の貴族領のお嬢様のゴシップネタで、仕事もせずに一喜一憂している間抜けな顔を思い出し、流言を飛ばし、敵を油断させるヒントになったことを報告書に書いておいてあげた。
愚兄ども、やさしい弟に感謝しろよ。
これで、家庭内のゴタゴタや家庭内暗殺の危機から解放されて一安心だ。
俺の論功行賞で勝ち取る条件は、以下の3つ
一つ:中央官吏になるために、王都での行政大学校に入学することの許可
一つ:王都での学費・生活費を行政大学校卒業後3年間支援することの同意
一つ:中央官吏になった際、地方の子爵家とは名目上別家になるので、エリカとシンバを中央官吏になるともに、呼び寄せることの了解
このまま、直球で、ぶつけても素直に全部通るとは思えないので、父上の意見に影響を与えることができる人達へ根回しをしておこうか。
我が人生の師「小役人のススメ」にも「人の脛を攻めるが良なり。貴人の脛は妃なり、女貴人の脛は子、族を抱くことなり」とある。つまり、「貴族を落とすならば、その妻を抱き込みなさい。女貴族を落とすならば、その子供・家族を抱き込むのが最良の手だ」という意味だ。
まずは、母上。
次に、長男のモンド兄上。
最後に、死地へ送り出された発端であり、正直、会いたくない、次兄のピーチャー兄上。
作戦としては、母上には、学費・生活費を卒業後3年間の支援を応援してもらえれば、独り立ちするまでしっかり生きていけますよ、ふるさとから、いつまでも心配していてくれアピールだな。
モンドには、俺が今回の手柄をあげたことで邪魔に感じている可能性があるので、行政大学校のある王都へいくので、子爵領を出ていくことにメリットを感じるはず。
ピーチャーもモンド同様、同じく行政大学校へいくことで、子爵領の重臣職は興味ないと伝え、あとは、シンバとエリカもつれていけば、アーチャー家は代替わりして、力が弱まり、ピーチャーの重臣としての立場も盤石だ、ということで話を持っていこう。
俺を前線へ送ってくれたことはあまり恨んではいないよ。結果、王都へすんなり、いけるからね。
結果、事前交渉は、それぞれ、すんなりうまくいった。
母上は、やっぱり実の親だね。
行政大学校卒業しても、すぐに官吏になれるかわからないから、5年間は支援してもらいなさい、って。父様に口添えしてくれるって。お母さん、末の男の子には甘々でありがとう。いつか、立派な老後むかえさせてやるからな。
モンドとピーチャーに至っては、各々が別々に、敵を撃退した作戦は、モンド/ピーチャーから助言を得たといってくれれば、全力で父上への口添えしてやるってさ。
どんだけ、功を焦っているのだか。
こちらは名誉よりも実利が得られればよいので、いくらでも兄たちをほめたたえてやるよ。
上辺だけは。
屋敷の謁見の場で、父上、母上、兄二人、重臣たち、に加えて、アーチャー家のシンバとエリカもいた。きっと母上がシンバとエリカを、気を聞かせて呼んでくれたのだろう。
謁見の場にいる面々を観察していたら、父上と知らない爺さんが謁見室にはいってきた。
爺さんは隣の領地の貴族の関係者かな?
「アルフ。見事、シスプチン王国軍を退けたな。よくやった。精鋭の飛竜騎士団やオークもいたと聞いたが、5倍の敵軍をどうやって退けたのだ。聞かせてくれ」
「父上、お褒めの言葉、ありがたき幸せ。シンバをはじめ、アーチャー家の精鋭を中心に250名の兵士たちが頑張ってくれたことが大きいです。私の力など微力に過ぎませんでした。ただ、初陣を無事勝利で飾れた事、プライセン子爵領を外敵から守れた事の一助になれたことが大変うれしく思います」
謙虚に、無難に返事をしておく。
「よくぞ申した。しかし、王都にも援軍の差配をしてもらった手前、詳細を報告せねばならぬ故、どうやって撃退したのか、その策を具体的に聞かせよ」
結局、王都から援軍が来るまでもなかったが、一応は急ぎ兵の準備をしてもらったので、顛末の報告が必要とのことか。
「はい。それは、後ほどじっくりと。その前に、父上、無事お役目をはたし、帰還できた際は、お願いしたきことがあり、お許しいただけるとのことでした。先にそちらのお話をさせてください」
先に、褒美をもらってからでないと、父上のみならず、モンドとピーチャーがどうでるかわからないからな。戦の話を後回しにしたせいで、父上の顔が少し不機嫌になってきたけど、先にもらうものはもらわないと。
「仕方ないやつだ。願いとはなんだ」
「はい。王都にいき、中央官吏になりたく、行政大学校にいかせてください。在学中の学費、生活費、それと、卒業後、正式に中央官吏になるまでの5年間の生活費を支援ください。最後に、中央官吏になった際は、プライセン子爵家とは名目上別家になるので、家宰として、シンバ、侍女長として、エリカを呼び寄せたいのです。」
父上の顔色を慎重に確認しながら、3つの交渉内容を伝えきった。
父上は、まったく予想していなかったのか、目をパチクリしている。
少し間をおいてから、
「官吏だと?お前、戦でこれだけの大手柄を挙げておきながら、内官になるつもりか?」
「はい。今回は、偶然と運が重なり、たまたま武功を上げられただけです。私は軍官や騎士には向いていません」
横から大きな笑い声が聞こえる。
「これは、プライセン卿も予想できませんでしたな。ご子息が内官になりたいとは。しかし約定してしまったものは致し方ありませんな」
「テリトー卿」
ぼそっと、爺さんに向かってつぶやいた。
テリトー卿と呼ばれた爺さんを意識してか、父上は何を言うのか考えをまとえてから口を開いた。
「わかった。行政大学校への入学を許可する。ただし、試験があるはずだから、合格した場合のみだ。それと在学中の学費・生活費、卒業後最大5年間の生活費は面倒みてやろう。ただし、アーチャー家のシンバを連れていくことは、今回のシンバの論功行賞があるため、今、即答はできん」
「僭越ながら、エルモ様、発言をお許しいただけますでしょうか?」
シンバが横から父上に発言の許可を得る。
「なんだ?シンバ」
「今回の戦で、私の戦功をお認めくださるのでしたら、アルフ様が中央官吏になられた際には、子爵家からお暇をいただきたく存じます。私は、アルフ様が幼少の頃より、守役として、姉ともどもアルフ様をお育てしてきました。許されるならば、そのままアルフ様が独り立ちした後は、アルフ様が行く道を歩みとうございます。何卒お許しの程を」
シンバが父上に頭を下げて頼んでいた。それを見て、俺も、エリカも、同時に「お許しください」と頭を下げた。
テリトー卿と呼ばれていた爺さんが、父上に向かって、朗らかに言い放った。
「これは、ご子息とその守役と、その隣は乳母かな? 3名の勢いに、さすがに武名の高いプライセン卿も負けましたな」
「わ、わかった。もうわかった。テリトー卿の前でこれ以上恥をかかせるな。アルフ。お前の今回の戦功の褒美として、3つの条件すべて認める。ただし、行政大学校の試験に合格すること、それから今回の戦況報告書をつくって、もってきないさい。いいな」
「父上、ありがとうございます!報告書はすぐに作成してお持ちします!」
事前の根回しした母上、兄2人の助けも要らず、条件をすべて勝ち取れた。テリトー卿という爺さんには助けられたな。いつかこの恩を返そう。
「恩には恩を、罰には倍の讐で報いるべし」これも、「小役人のススメ」の一説にあった。
結局、急いで退室しようとしたけれど、テリトー卿の爺さんがいたので、戦の報告書は明日でよくなった。
翌日、父上への口添えはしてもらっていないけど、一応約束はしたので、モンドとピーチャーの事を今回の戦で役立ったと報告書に記載しておいた。
王都へ父上が、報告するかどうか、わからないけど、義理は一応果たしたよね?
内容としては、モンドが厨房にあるピクルスを盗み食いするため、下品にしゃぶりついていたことを思い出し、ピクルス→漬物→壺が連想され、蛇壺を思いついたこと、ピーチャーの方は、隣の貴族領のお嬢様のゴシップネタで、仕事もせずに一喜一憂している間抜けな顔を思い出し、流言を飛ばし、敵を油断させるヒントになったことを報告書に書いておいてあげた。
愚兄ども、やさしい弟に感謝しろよ。
これで、家庭内のゴタゴタや家庭内暗殺の危機から解放されて一安心だ。
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