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3.行政大学校入学編
4 誰が悪いんじゃない、運が悪かったんだよ、と思い込むことのススメ
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ハーベル・インフォと顔つなぎの挨拶のため面談を申し込み、結果、嫌われてしまった。
思い返してみると、初めは順調だったと思う。
きっと、次官様のご子息なので、プライドが高く、ちょっとしたことで難癖をつけられるかもしれないと思い、丁重に挨拶をする。
「初めてお目にかかります。ハーベル・インフォ様。アルフレッド・プライセンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「君が噂の麒麟児君か。ハーベルだ。よろしく。かしこまらないでくれたまえ。僕らは学生同士だよ」
思ったよりも、ハーベルは、フレンドリーなタイプか?
いや、これが内官特有のトラップかもしれない。気安い雰囲気を作って本音を引き出し、相手の人となりを探っているのかもしれない、と警戒する。
「いえ。私は地方貴族の三男ですので、あまり中央の儀礼に自信がありません。ですので、失礼がないように、このままでどうぞお許しください」
「そうか。わかった。僕は普通に話させてもらうことにするよ。それでエクリン家の書生だった君が僕のところに挨拶に来るとは驚きだな。財務研究会へ入会希望ということだよね?」
「ご当主のジェームス様よりご紹介いただきました。諸先輩方に学び、同期生とは切磋琢磨させていただきたく、ぜひ財務研究会に参加させていただきたくご挨拶に参りました」
「ジャームス卿にかい?」
ハーベルはジャームスさんからの紹介といった途端、怪訝な顔しているぞ。失敗したか?
「アルフレッド君といったね。君は、エクリン家とインフォ家が財務次官の座を代々争っていたことは知っているのかい?わかった上で僕のところに来ているとしたら、エクリン家はインフォ家を存外大したことがないと思っているのかな?」
やばいな。風向きがおかしいぞ。ジャームスさんから同じ財務閥の次官のご子息なので、挨拶にいくといいよ、と紹介されて、財務研究会に入れるとおもったのに、ハーベル君はどうも眉間に皺を寄せてご機嫌斜めみたいだぞ。
「それとも、パルスキーを見事再建してみせ、王都の話題をさらっている君自身の自信の表れかな?」
「いえ、決してそのようなつもりはありません。私も財務閥の官吏の家で書生としてお世話になりましたので、財務次官のご子息に挨拶を、と思っただけで他意はございません」
とりあえず、ハーベル君を落ち着かせるために、落ち着いたトーンで、挨拶に来たのは深い意味はなく、仲良くなりたいだけなんだ、と伝えてみた。
「なるほど。せっかく財務研究会に興味をもってくれて、僕に挨拶にきてくれたのに、僕の方が勘ぐってしまったようだね。気を悪くしないでくれたまえ。財務閥の子弟たちは、幼少の頃よりつながりがあってね。学生同士の研究会であっても、人となりがわかっていないと不安に思うメンバーもいるのだよ。中央の秘密情報も入ってくるしね。アルフレッド君とも今後もよい付き合いをしたいと思っているのだが、まずは君の人となりを知ってから、僕らの研究会へ迎え入れるかどうかメンバーと話す必要があること理解してほしい」
うーん。口調は丁寧だけど、財務研究会(派閥)には、よそ者は入れられないよ、と言われているよな。
ハーベル君が続ける。
「アルフレッド君とは今日が初対面だ。僕らが仲良くなるのに、時間は2年間もあるからね。今はまだ研究会には迎え入れられないが、もし研究会内で、勉強会などする時には、声を掛けさせてもらうよ。麒麟児と言われている君の知恵を借りる機会もあるだろうしね」
「お心遣い感謝します。ハーベル様と私は今日初めてのお付き合いとなります。ですが、今日をきっかけに、よいお付き合いができましたらありがたく存じます。今後ともよしなに、よろしくお引き回しの程お願いいたします」
角が立たないように笑顔で返答をし頭をさげる。その後、辞去の挨拶をし、ハーベルの部屋を出た。
『嫌われたようだな。主殿よ』
エクスよ。傷口に塩を塗らないでくれ。いったい、何がまずかったのだろうか。
ただ、ハーベルもさすが幼少の時より、伏魔殿たる中央政府、高級官僚の子息として育てられたものだ。エクリン家とのわだかまりがあるにせよ、表面上だけは、何かの際は、派閥の数に数えてくれるようだ。ただ、財務研究会の一員というよりも、よくて単なる協力関係という弱いつながりになるだろうな、とため息がでる。
結局、俺の何がまずかったのかわからなかったので、誰が悪かったというよりも、運が悪かったのだよ、と思うことにする。
思い返してみると、初めは順調だったと思う。
きっと、次官様のご子息なので、プライドが高く、ちょっとしたことで難癖をつけられるかもしれないと思い、丁重に挨拶をする。
「初めてお目にかかります。ハーベル・インフォ様。アルフレッド・プライセンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「君が噂の麒麟児君か。ハーベルだ。よろしく。かしこまらないでくれたまえ。僕らは学生同士だよ」
思ったよりも、ハーベルは、フレンドリーなタイプか?
いや、これが内官特有のトラップかもしれない。気安い雰囲気を作って本音を引き出し、相手の人となりを探っているのかもしれない、と警戒する。
「いえ。私は地方貴族の三男ですので、あまり中央の儀礼に自信がありません。ですので、失礼がないように、このままでどうぞお許しください」
「そうか。わかった。僕は普通に話させてもらうことにするよ。それでエクリン家の書生だった君が僕のところに挨拶に来るとは驚きだな。財務研究会へ入会希望ということだよね?」
「ご当主のジェームス様よりご紹介いただきました。諸先輩方に学び、同期生とは切磋琢磨させていただきたく、ぜひ財務研究会に参加させていただきたくご挨拶に参りました」
「ジャームス卿にかい?」
ハーベルはジャームスさんからの紹介といった途端、怪訝な顔しているぞ。失敗したか?
「アルフレッド君といったね。君は、エクリン家とインフォ家が財務次官の座を代々争っていたことは知っているのかい?わかった上で僕のところに来ているとしたら、エクリン家はインフォ家を存外大したことがないと思っているのかな?」
やばいな。風向きがおかしいぞ。ジャームスさんから同じ財務閥の次官のご子息なので、挨拶にいくといいよ、と紹介されて、財務研究会に入れるとおもったのに、ハーベル君はどうも眉間に皺を寄せてご機嫌斜めみたいだぞ。
「それとも、パルスキーを見事再建してみせ、王都の話題をさらっている君自身の自信の表れかな?」
「いえ、決してそのようなつもりはありません。私も財務閥の官吏の家で書生としてお世話になりましたので、財務次官のご子息に挨拶を、と思っただけで他意はございません」
とりあえず、ハーベル君を落ち着かせるために、落ち着いたトーンで、挨拶に来たのは深い意味はなく、仲良くなりたいだけなんだ、と伝えてみた。
「なるほど。せっかく財務研究会に興味をもってくれて、僕に挨拶にきてくれたのに、僕の方が勘ぐってしまったようだね。気を悪くしないでくれたまえ。財務閥の子弟たちは、幼少の頃よりつながりがあってね。学生同士の研究会であっても、人となりがわかっていないと不安に思うメンバーもいるのだよ。中央の秘密情報も入ってくるしね。アルフレッド君とも今後もよい付き合いをしたいと思っているのだが、まずは君の人となりを知ってから、僕らの研究会へ迎え入れるかどうかメンバーと話す必要があること理解してほしい」
うーん。口調は丁寧だけど、財務研究会(派閥)には、よそ者は入れられないよ、と言われているよな。
ハーベル君が続ける。
「アルフレッド君とは今日が初対面だ。僕らが仲良くなるのに、時間は2年間もあるからね。今はまだ研究会には迎え入れられないが、もし研究会内で、勉強会などする時には、声を掛けさせてもらうよ。麒麟児と言われている君の知恵を借りる機会もあるだろうしね」
「お心遣い感謝します。ハーベル様と私は今日初めてのお付き合いとなります。ですが、今日をきっかけに、よいお付き合いができましたらありがたく存じます。今後ともよしなに、よろしくお引き回しの程お願いいたします」
角が立たないように笑顔で返答をし頭をさげる。その後、辞去の挨拶をし、ハーベルの部屋を出た。
『嫌われたようだな。主殿よ』
エクスよ。傷口に塩を塗らないでくれ。いったい、何がまずかったのだろうか。
ただ、ハーベルもさすが幼少の時より、伏魔殿たる中央政府、高級官僚の子息として育てられたものだ。エクリン家とのわだかまりがあるにせよ、表面上だけは、何かの際は、派閥の数に数えてくれるようだ。ただ、財務研究会の一員というよりも、よくて単なる協力関係という弱いつながりになるだろうな、とため息がでる。
結局、俺の何がまずかったのかわからなかったので、誰が悪かったというよりも、運が悪かったのだよ、と思うことにする。
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