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4.行政大学校イベント編

13.思いついたときはすぐに試してみることのススメ

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 アモンが目視できる距離まで近づいてきた。

 で、でかい。

 高さだけで4メートルくらいありそうだな。

 アモンは、エクスが言っていた通り、見た目は、一見、巨大狼に見えるが、尻から尻尾にかけては蛇型だった。尻尾の先端は蛇の頭部があり、エクスによると蛇の口からも炎を出したり、かみついたりと攻撃が可能ということだった。

 あれ?でも魔素は強大だけど、魔素と存在自体が希薄な印象を受ける。

 『その通りじゃ。主殿よ』

 エクスが俺の印象が間違いではない理由を解説してくれる。

 『あ奴を魔界から召喚するには、どうやら魔素が足りなかったようじゃ。そのため、存在が不安定になっておる。このままだと、あと30分ほどやり過ごせたら、自然を魔界へ戻りよるわ』

 逃げ切れば勝ちだけど、30分も待っていたら、シルフェさんが追手に殺されてしまうかもしれない。

 『エクス。悪いが30分も待てない。シルフェさんたちの追手の力量と数を考えると、すぐにでも追い付かないと危険だ』

 『今日はやたらと元気がよいのう。したらば、やるかのう』

 初めから本気モードでいく。エクスの魔素と自分の魔素を活性化し、全身に循環させ身体強化を最大域まで行う。

 明日はきっと筋肉痛だな。シルフェさんにマッサージで穴埋めしてもらわないと割に合わない、と妄想する。

 『狼型の部位の体毛は固く、尻尾の蛇も皮膚が固い。そのため、打撃系、剣やナイフといった武器も通りにくいぞ。主殿よ。熱や電撃での攻撃が比較的有効じゃ』

 『わかった。サンキュー。エクス』


 俺は、飛翔魔法で、一気にアモンに接近する。アモンの爪や尻尾の連続攻撃を空中でかいくぐり、魔法攻撃が届く距離まで近づく。アモンの上右側面から、右手と左手の人差し指を突きだし、身体の前で両手を握り合わせ、自身最大級の魔法を発動する。

「フレア!!」

 6000℃まで高めた高温の燃焼ガスを元にした高熱魔法「フレア」がアモンへ降りかかる。

 アモンの背中から右胴体にかけて体毛が焼かれ、体毛下の皮膚がただれ、アモンは悲鳴を上げる。
 
 アモンの身体から皮膚が溶け出す。ドテッと地面に落ちたガスに包まれた皮膚により、地表が解け、アモンの右側の地面は溶岩となった。

 アモンは苦しみながら、尻尾蛇で執拗に俺にかみつこうとしてくる。飛翔魔法で、かみつきを何度もかわしながら、俺が尻尾蛇から少し距離をとると、蛇の口から、お返しとばかりに青い炎を吐きだしてきた。

 エクスから事前に炎攻撃の可能性を聞いていたので、転移魔法で危なげなく避ける。

 アモンにダメージは与えたが、まだ致命傷ではない。

 『エクス。ちょっと試したいことがある。悪いけど、本体から魔素を少し借りるよ』

 『ま、待つのじゃ。主殿よ。今の攻撃を続けたら、いずれアモンはこの世界にとどまれなくなるほどのダメージを蓄積する。我の本体の魔素貯蓄に手をつけるまでもないのだぞ!』

 エクスが必死に、エクス本体が封印内でため込んでいる魔素を守ろうとする。

 ごめん。エクス。シルフェさんが心配だから、時間をかけたくない。なので、今思いついた、おそらく自身最大の魔法で一気にアモンを叩きたい。甘味を1週間追加で、差し入れするから今回は許してくれ。

 俺は、アモンの爪・魔法・かみつき・炎の連続攻撃を空中で避けながら、アモンの身体全体を包むように結界を張り、周りから空間を隔離する。

 同時に、俺の高熱魔法「フレア」で、先程、地面が解けてやや固まった溶岩の一部から土魔法を使って剣の形を作り上げる。

 その後、電撃魔法用に練り上げた高濃度魔素を、先程作り上げた黒色の溶岩剣に蓄積し続ける。最後の仕上げとばかりに転移魔法でアモンの狼型の背中に溶岩剣を突き刺す。

 『クオー!!』

 高濃度魔素を帯びた剣を背に突き刺したところ、アモンが悲鳴をあげる。

 俺は、一気に蓄積していた高濃度魔素を開放、電撃魔法をお見舞いする。

 アモンの背中から、電撃が全身に広がり、最終的に地面に向かって流れる。その後も電撃魔法用の魔素を俺は注ぎ続ける。

 本番はこれからだ。
 
 5秒もすると、アモンの背中に突き刺さった溶岩剣から、目を開けていられないほどの激しい光、周囲にも激しい熱風を感じるほどの高熱を発し、ついにはアモンの胴体全体が焼けこげ、胴体がドロドロに溶け出し地面に崩れる。

 アモンの巨体が地面に崩れたのち、すぐにその姿が消失した。
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