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6.新派閥旗揚げ編
1.面倒な参謀役に収まるよりも湧き出る資金で安泰に暮らすことのススメ
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シルフェさんがいきなり大きな荷物を抱えて俺の寮にやってきた。
その晩は、シルフェさんから、アリアさんのところの奉公を辞してきたことや実家から距離を置かれてしまった詳細など近況をいろいろ聞き、パルスキーの時みたいに一つのベッドで、二人で寝た。
も、もちろん、ただ寝ただけだが、シルフェさんは、前回と異なり、覚悟ができているというか、肝が据わったというか、まったくの自然体で、一方の俺の方は、彼女の良い匂いにドキドキして朝まで眠れなかった。
冷静に考えてみれば、行政大学校を卒業するときには俺が16歳でシルフェさんが20歳か21歳になっている。年齢の切もよいし、元々シルフェさんのことは好きだから、卒業と同時に婚姻を結ぼう、と思った。
決意を固めてみたが、行政大学校の寮でこのまま同棲生活を送れるわけがない。
翌朝、シルフェさんには卒業と同時に婚姻を結ぼうと伝える。
予想どおり彼女は泣きだした。本当に涙もろく情が厚い人だ、とますます好きになったことは俺だけの秘密だ。彼女は「末永くお願いします!」と元気な声で返答してきた。
朝一番に、パルスキーのトビアスのところへ転移魔法で、二人で移動し、トビアスと赤獅子会の面々を叩き起こし、シルフェさんの生活環境を整えるよう頼んできた。しばらくシルフェさんには、喧騒のないパルスキーを拠点にしてもらうことにする。
俺はトビアスたちへ照れながらも婚約したことを説明したら、トビアスはシルフェさんのことを「奥方様」と呼び出して、シルフェさんが首まで真っ赤になっていたのが、なんともほほえましかった。
赤獅子会の連中は、元凶悪犯罪者集団なので、彼女に悪さをしないように厳命することも忘れずにしてきた。悪人面のメンバーたちはシルフェさんのことを「姉さん(あねさん)」と呼んでいて、シルフェさんは、少し困った顔をしていたのが笑えた。
俺はそれから毎晩、転移魔法でシルフェさんの様子を見にパルスキーへ通っている。
一方、アリアさんとは、監禁から解放された後、1週間後に今後の方針をすり合わせるため、面談することにした。1週間たてば、精神的にも大分落ち着いただろう。本当は二人きりで相談をしたかったが、側近が侍女2名しかいなくなってしまい、不安に思っているのか、同席させたいと切望されたため俺は了承した。
そういうことならば、と、俺もオーファを連れ、以前シルフェさんへ連れられたサロンへ向かう。
俺はゲファルナ卿としてアリア王女と面会することになっているため、俺とオーファは、二人とも仮面と黒ローブのノーフェースルックとなっている。
オーファがサロンの扉をノックすると侍女が扉を開け、アリアさんが固い表情で迎え入れた。俺たちに席を勧め、俺はアリアさんの向かいのソファーへ腰かけ、オーファは俺の後ろに従者として立つ。
すかさず、侍女2名がアリアさんと俺に良い香りの紅茶をサーブしてくれた。
そういえば、このサロンは、アリアさんのお気に入りの場所だと聞いたが、護衛騎士も専属魔法師もいなくなり、アリアさんは寂しく感じているのだろうと想像した。
アリアさんは前回と異なり、紅茶には目もくれず、口を開き、いきなり頭を下げてきた。
「ゲファルナ卿。この度は私と臣下の命を救ってくださったこと、感謝の言葉もありません」
王族からすると最大限の感謝の表現だ。侍女2名もアリアさんと一緒に深く頭を下げている。
俺は、設定と役作りが大事と思い、エクス口調で言葉を返す。
「王女殿下。壮健そうでなによりじゃな。気持ちは受け取った。頭をあげてくれんと話ができんじゃろう」
アリアさんは頭を上げた。笑顔だったが、顔に疲労感と影があった。
「今回の件で、護衛騎士ペドロは身を挺して私を護りその命を散らしました。また専属魔法師シルフェは、あんなに私に尽くしてくれたのに、私の足かせになるのを恐れ自ら身を引きました。私はそんな忠臣を護ることもできず,,,,,,。すべては私の力のなさが原因です。ゲファルナ卿、助けていただいた上に再びお願いすることになり心苦しいのですが、いましばらく、どうか私に力をお借りくださりませんか?」
アリアさんは俺に頭を下げてきた。侍女たちもあわせて頭を深く下げてくる。
「アリア殿よ。心配無用じゃ。そなたの元専属魔法師殿との約定もある。その身が安全になるまで力を貸そう」
アリアさんは顔を上げ、ぱあっと表情を明るくする。
誤解されてはこまるので、すぐに俺は補足説明をする。
「だが、我は所詮、異邦人ぞ。手を貸すのは、アリア殿の身の安全が保証できるところまでじゃ。おそらく、我の予想では、4か月もあれば、アリア殿は枕を高くして眠ることができるはずじゃ。その頃に我は一旦自領へ戻るつもりじゃ」
侍女たちは、俺の言葉を聞き、主の身の安全が確保できると聞き表情を明るくするが、当のアリアさんは焦りながら、必死に口をはさんでくる。
「この国に骨を埋めていただくことはできないでしょうか。ゲファルナ卿が望むことならば、私のできる範囲でなんでもする所存ですので」
アリアさん、俺がこの国の国民(地方貴族の出のパン無駄)と知っているから、長く自分の派閥へ所属させようと必死だな、と冷静に分析する。侍女たちには俺の正体を伝えてないようなので、アリアさんの口の堅さに安心する。
「身の安全を確保できた後のことは、自身で別の機会にゆっくり考えることじゃ」
ここで甘い顔はできないので突き放す。俺には小役人となり、湯水のごとく湧き出る資金源をつくりシルフェさんと安泰に暮らすプランがまっているですじゃ!と心の中でつぶやく。
「それよりも、まずはこの4か月でアリア殿の身の安全を確保せねばならぬ。そのためにいくつかやってもらいたいことがある」
俺はアリアさんの側近として、長期雇用の話を断った。アリアさんの事だから、もっとしつこく勧誘してくると思ったが、この話題をすぐに引っ込めたことが少し気になった。
その晩は、シルフェさんから、アリアさんのところの奉公を辞してきたことや実家から距離を置かれてしまった詳細など近況をいろいろ聞き、パルスキーの時みたいに一つのベッドで、二人で寝た。
も、もちろん、ただ寝ただけだが、シルフェさんは、前回と異なり、覚悟ができているというか、肝が据わったというか、まったくの自然体で、一方の俺の方は、彼女の良い匂いにドキドキして朝まで眠れなかった。
冷静に考えてみれば、行政大学校を卒業するときには俺が16歳でシルフェさんが20歳か21歳になっている。年齢の切もよいし、元々シルフェさんのことは好きだから、卒業と同時に婚姻を結ぼう、と思った。
決意を固めてみたが、行政大学校の寮でこのまま同棲生活を送れるわけがない。
翌朝、シルフェさんには卒業と同時に婚姻を結ぼうと伝える。
予想どおり彼女は泣きだした。本当に涙もろく情が厚い人だ、とますます好きになったことは俺だけの秘密だ。彼女は「末永くお願いします!」と元気な声で返答してきた。
朝一番に、パルスキーのトビアスのところへ転移魔法で、二人で移動し、トビアスと赤獅子会の面々を叩き起こし、シルフェさんの生活環境を整えるよう頼んできた。しばらくシルフェさんには、喧騒のないパルスキーを拠点にしてもらうことにする。
俺はトビアスたちへ照れながらも婚約したことを説明したら、トビアスはシルフェさんのことを「奥方様」と呼び出して、シルフェさんが首まで真っ赤になっていたのが、なんともほほえましかった。
赤獅子会の連中は、元凶悪犯罪者集団なので、彼女に悪さをしないように厳命することも忘れずにしてきた。悪人面のメンバーたちはシルフェさんのことを「姉さん(あねさん)」と呼んでいて、シルフェさんは、少し困った顔をしていたのが笑えた。
俺はそれから毎晩、転移魔法でシルフェさんの様子を見にパルスキーへ通っている。
一方、アリアさんとは、監禁から解放された後、1週間後に今後の方針をすり合わせるため、面談することにした。1週間たてば、精神的にも大分落ち着いただろう。本当は二人きりで相談をしたかったが、側近が侍女2名しかいなくなってしまい、不安に思っているのか、同席させたいと切望されたため俺は了承した。
そういうことならば、と、俺もオーファを連れ、以前シルフェさんへ連れられたサロンへ向かう。
俺はゲファルナ卿としてアリア王女と面会することになっているため、俺とオーファは、二人とも仮面と黒ローブのノーフェースルックとなっている。
オーファがサロンの扉をノックすると侍女が扉を開け、アリアさんが固い表情で迎え入れた。俺たちに席を勧め、俺はアリアさんの向かいのソファーへ腰かけ、オーファは俺の後ろに従者として立つ。
すかさず、侍女2名がアリアさんと俺に良い香りの紅茶をサーブしてくれた。
そういえば、このサロンは、アリアさんのお気に入りの場所だと聞いたが、護衛騎士も専属魔法師もいなくなり、アリアさんは寂しく感じているのだろうと想像した。
アリアさんは前回と異なり、紅茶には目もくれず、口を開き、いきなり頭を下げてきた。
「ゲファルナ卿。この度は私と臣下の命を救ってくださったこと、感謝の言葉もありません」
王族からすると最大限の感謝の表現だ。侍女2名もアリアさんと一緒に深く頭を下げている。
俺は、設定と役作りが大事と思い、エクス口調で言葉を返す。
「王女殿下。壮健そうでなによりじゃな。気持ちは受け取った。頭をあげてくれんと話ができんじゃろう」
アリアさんは頭を上げた。笑顔だったが、顔に疲労感と影があった。
「今回の件で、護衛騎士ペドロは身を挺して私を護りその命を散らしました。また専属魔法師シルフェは、あんなに私に尽くしてくれたのに、私の足かせになるのを恐れ自ら身を引きました。私はそんな忠臣を護ることもできず,,,,,,。すべては私の力のなさが原因です。ゲファルナ卿、助けていただいた上に再びお願いすることになり心苦しいのですが、いましばらく、どうか私に力をお借りくださりませんか?」
アリアさんは俺に頭を下げてきた。侍女たちもあわせて頭を深く下げてくる。
「アリア殿よ。心配無用じゃ。そなたの元専属魔法師殿との約定もある。その身が安全になるまで力を貸そう」
アリアさんは顔を上げ、ぱあっと表情を明るくする。
誤解されてはこまるので、すぐに俺は補足説明をする。
「だが、我は所詮、異邦人ぞ。手を貸すのは、アリア殿の身の安全が保証できるところまでじゃ。おそらく、我の予想では、4か月もあれば、アリア殿は枕を高くして眠ることができるはずじゃ。その頃に我は一旦自領へ戻るつもりじゃ」
侍女たちは、俺の言葉を聞き、主の身の安全が確保できると聞き表情を明るくするが、当のアリアさんは焦りながら、必死に口をはさんでくる。
「この国に骨を埋めていただくことはできないでしょうか。ゲファルナ卿が望むことならば、私のできる範囲でなんでもする所存ですので」
アリアさん、俺がこの国の国民(地方貴族の出のパン無駄)と知っているから、長く自分の派閥へ所属させようと必死だな、と冷静に分析する。侍女たちには俺の正体を伝えてないようなので、アリアさんの口の堅さに安心する。
「身の安全を確保できた後のことは、自身で別の機会にゆっくり考えることじゃ」
ここで甘い顔はできないので突き放す。俺には小役人となり、湯水のごとく湧き出る資金源をつくりシルフェさんと安泰に暮らすプランがまっているですじゃ!と心の中でつぶやく。
「それよりも、まずはこの4か月でアリア殿の身の安全を確保せねばならぬ。そのためにいくつかやってもらいたいことがある」
俺はアリアさんの側近として、長期雇用の話を断った。アリアさんの事だから、もっとしつこく勧誘してくると思ったが、この話題をすぐに引っ込めたことが少し気になった。
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