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36話

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蓮side


ガッ

「っらぁ!!」


ズシャアと地面にぶっ潰した奴の背中を、おまけとばかりに更に踏みつける。

ぐえっと呻きが聞こえたがシカトする。


さて…と、俺らに襲いかかってきた奴等はこれで潰せたはずだ。
チラリと周りを見れば、睦月も片付けたのか服のホコリを払っていた。


「めんどくせぇ事になったな」


あんのドアホウ前委員長のせいで「逃走者」となる奴等が中々厄介な連中になった。
盛大なため息をつき、俺はヤンキー座りをしつつ布を取り出した。

捕まえた「逃走者」には、与えられたチームカラーの布を巻きそれぞれの陣地に連れていかねばならない。

因みに俺らのは黒い布。
猿達のは、確か白だったか。

色を決めるとき、何故か猿がハイテンションになっていた気がするが……


「ぐっ…ぐるし…」


おっと。
脳裏に猿を浮かべただけで、手元に力が入ったか。
布を「逃走者」の首に巻いてて、思わず絞めてしまった。
わりぃわりぃ←棒読み


あらかた結び終え、これをこれから何度も繰り返すのかと思うと、自然に眉間にシワがよった。
めんどくせぇな…


ぐっと立ち上がり、同じように布を巻いていた睦月に声をかける。

「一旦愛染先輩ん所行くぞ」

「わかりました」

睦月はぐぃっと遠慮なしにくたばっている奴等の襟首を掴み、ズルズルと引きずりながらこちらに来た。


人の事言えないが、こいつも大概遠慮ないよな…

まぁ、遠慮する気もないが、「ぐえ」とか「うっ」とか引きずられている奴等から聞こえるが…まぁ、良しとしよう。


さて、行くかと足を踏み出した時、


「「あ」」


俺と睦月の声が重なった。
今まで存在を忘れていた。


「……アイツどこ行った?」

「…喚きながら、走り去った姿しか見ていませんよ」


おもわず視線を合わせ、奴が走り去った方を見る。
おいおい。
マジでどこいった?
「逃走者」達のやる気と喧嘩っぱやさを考えれば、あんなチョロイ平凡、見つかればボコボコだぞー…?


「「………」」


だが、俺達の答えは決まっていた。


「ま、別に良いだろ」

「なんとかするでしょう」


腐っても風紀委員長。
別に「逃走者」達を迎え撃てとは言わないが、逃げることはするだろう。

すなわち、探しにいく必要はない。

そう俺達は結論づけ、止めていた足を動かしズルズルと人を引きずりながら陣地へと向かった。



この時、トランシーバーを使わなかったのは……まぁ、一応は哀留を信じていたからであって、決して電源のスイッチを入れるのが面倒だったからではない。



蓮side end




唯side



「よし!これで終わりだ!」

ゴッと、飛び蹴りを食らわして他高生を倒す。
あ、「逃走者」だっけっか!

東の放送後飛びかかってきた奴等を、先手必勝とばかりに殴ってやった!
宗史と晃樹も俺に続いて殴ってた。
遅いな!

パンパンと手を叩き、むんっと倒れている奴等を見下ろす。
これだったら、楽勝だな!俺強いし!


「よし!どんどん行こうぜ!」と歩き出そうとした俺を、宗史が止めた。
何だよ!!


「唯ちゃんちょっと待ってねぇ?ほら布巻かなきゃぁ」

せっかく倒したんだし~と笑う宗史に思い出した!
あ!そうか!チームカラーの布を巻いて、捕獲場所に連れていかないと駄目なんだっけ!
俺は小さなバッグから布を出す。


俺達のチームカラーは白!
本当は赤とか明るい色にしたかったんだけど、東が、

「唯は何にも染まらない白が似合うと思うな」

て、純粋な俺に白を勧めてきたから、迷わず白に決めたんだ!
待ってろよ東!
委員長に相応しいのは、ヘイより俺だって証明してやるからな!


ようっし!気合い入ったぞ!


布も巻き終わり、早く次に行こうと言うが…

「待って待って唯ちゃん」

「今度は何だよ!!」

「めんどくせぇが。コイツら捕獲場所に連れていかないと、だろ」


あー!そうだっけ!?
でもでも、一度捕獲場所までもどってたら時間食うだろ!?

…あ、そっか!

「じゃあ、宗史と晃樹でコイツらを連れてけよ!俺一人でまた倒して、布巻いとくから!」

俺が「逃走者」を倒して目印の布を巻いて、それを宗史達が回収すればスムーズだろ!
名案だ!!


だけど、2人はそれを許してくれなかった。

「駄目だ!唯1人で行かせるか!」

「そうだよぉ!なんかヤバい奴等みたいだし、そんな中唯ちゃんを1人には出来ないよー!」 

「何だよ!2人は俺が弱いって言うのか!?友達を信用しろよ!!」

こう言っても、駄目だ駄目だと言い続ける2人に、俺は腹が立った!
何だよ!何だよ!!2人して、俺の邪魔ばっかりして!

「もう良い!俺1人で行くから!絶対着いてくるなよ!着いてきたら絶交だからな!!」

「「唯!!!」」


2人の声を無視して、俺は走った。
もう邪魔するんだったら頼らない!
俺1人で捕まえてやる!!


とにかく、2人が追ってこれないように、全力で走った!!
 


唯side end





哀留side


ちくしょう、俺はいつから騙されてたんだ!?策略か!?これも皆川先輩の策略なのか!?

パシパシと地面を叩き、自問自答する。

あ、因みにさっきの猫は居なくなりました。ひと鳴きしたら、それは優雅に去って行きました。
はい、俺今ぼっちです。
1人ぼっちで、未だに地面とこんにちはしてます。


……あ、やばい。
悲しくなってきた(←居たたまれなくなって)

と、とりあえず。
1人は寂しい←今余計に心にダメージをおっているから

心の友の蓮とカナたんと早く合流せねば!
座っていたために少し温かくなった地面から立ち上がり、キョロっと周りを見渡す。


ふむ、何処だねここは? 


無我夢中で逃げていたため、校舎からは離れてしまったらしい。
若干草木が多いから、まぁまだ森の入口付近だろう←王道学園なので、敷地内に森があります

とりあえず、森から離れよう。
と、その前に…

「…あったあった。ゴフン…トランシーバ~♪」

某青タヌキのモノマネをしつつ、ポケットに入れといたトランシーバーを取り出す。
…ちょっと、モノマネが上手くなってきた気がする(ドヤ)  


困った時のトランシーバーだ。
これさえあれば、蓮達と連絡が取れる!すぐに合流できる!
ロンリーとはおさらばだ!

ピッ…ジジッ…

スイッチを入れる。なんか、緊張するよね(笑)

「あーテステス。こちら哀留、風紀委員s応答願います!どうぞ!」


《……》


…無視、ですかね?

「応答願います!皆さまの愛する哀留ですよー、どうぞ!」


《……》


機嫌損ねたか?

「間違いました、皆さまを愛してる哀留です!逆ですよね、テヘペロ☆どうぞ!」 


《……》

はっはーん。なるほど…わかったぞ。
これはいじめだな!


「なんだよなんだよ!いじめカッコ悪いぞ!イケメンの癖に性格悪いのか!こんなか弱い俺をいじめてなんになる!?これだから、顔だけ良い奴等は最低だよな!!そして、いい加減察しろよ!イケメンオーラで察しろよ!はぐれたんだよ、迎えに来てくださいお願いしますから応答してください!!どうぞぉぉぉ!」

最後は下手にでて、がむしゃらに叫んでみた、がー…


《……》

えぇーー!!!
なにこれ、完全なるハブやん。ここにきて其はないわー…

てか、無言ならばトランシーバーの意味ないやんけ、とガックリとすると…


《ジジッ…ぃ…》

「!!」 

奇跡がおきた!反応が返ってきたのだ!
俺は嬉しすぎて叫んだ!


「アイラーヴュー!!俺と結婚してくれ!!」

台詞に突っ込みはよしてくれ。
寂しくてやっと反応くれたんだ…思わずテンション上がるのもいた仕方ないだろう←
トランシーバーに耳をあて、返事を待っていると、


《…ー死ね》

ブツッッ!!!

「………」


あぁ、オワタ。


今の低音voice、あれはせっちゃんだ。
「死ね」がメチャメチャ低い声だった。あれだ、地を這うような声ってああいうのなんだね☆

うん、次せっちゃんに会うときはー…
いや、今は考えないでおこう。寿命が縮む。残り少ない今を楽しもうじゃないか、哀留!

俺のこの時の顔は、恐らく悟りを拓いたような表情だっただろう。
…トランシーバー、よく考えて言葉を発しよう。勢い、ダメゼッタイ。

ふっと微笑み、スッとポケットにトランシーバー(全ての元凶)を仕舞い、空を見上げる。

せっちゃんに結婚を申し込み、死の宣告をされた今の俺に、怖いことはない。

「良い天気d「見つけたぞオラァァア!!」ぎゃぁぁぁぁぁぁあーー!!」


訂正。
怖いものは怖い!!




哀留side end





雪羅side


「チッ。うっぜぇなぁあ!」


皆川の放送後、何処からともなくわらわらと湧いてきた「逃走者」を、殴り蹴り飛ばした。

チッ。雑魚が。


くたばる奴等に、適当に黒い布を巻き付け陣地内に転がす。
あらかた作業を終え、ふっとさっきの放送を思い出す。

わざわざ喧嘩っぱいヤンキー共を集め、奴等がやる気を出すように餌まで用意する。それに、俺らが怪我しようが、もちろん奴等が怪我しようが、皆川にはなんの責任も関係もない。
俺らもこの対決を受けた時点で、何が起ころうが了承すみって暗黙の了解だからだ。奴等もしかりだろう。

外部の奴等を入れたのは、恐らく内部の奴等が「逃走者」となるなら、猿側(生徒会)が裏工作をしてくる可能があったからだろうな。

その部分を考えての外部ならばわかるが……よくセキュリティ高いこの中に入れたな…

それに、ヤンキー共がこの為だけに協力しあっさり去るか?


……やめだやめ。

どうせ皆川の事だ、理事長のも教師連中のも。ヤンキー共のも弱味を握って、逆らえないようにしてんだろう。
そして、そんな血走った奴等に追われ迎え撃つ俺らを見て、ほくそ笑んでんだろう…


マジで性格歪んでやがる…


そして、今そんな皆川の一押しの玩具が、あの猿と…ドチビだろう。
同情するぜ。
皆川の本心を、猿はわかっちゃいねぇだろうが…
チビはー……


まぁ、俺は奴の手のひらで転がるのは真っ平だ、と。ポケットに手を突っ込むと、固いものにあたった。

「あ゛…?あぁー…」

取り出すと、それは今まで存在を忘れていたトランシーバーだった。
そういや、電源入れてねぇなぁ。

おもむろに、カチッとスイッチを入れた瞬間、

《アイラーヴュー!!俺と結婚してくれ!!》


…あ゛?

ぞわっと鳥肌が全身を駆け巡った直後、どす黒い怒りが湧いた。

「…ー死ね」


ブツッッ!!


一瞬でもチビを哀れに思った俺がバカだった。
せいぜい皆川に遊ばれろ。



雪羅side end


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