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翻訳のお仕事
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訓練場で聖女である梨々香と出会してからというもの、またパッタリと外出がし難くなってしまった。
(元々私は引きこもり体質だから良かったものの…)
アクティブなタイプならこの状況はとっくに病んでしまっていてもおかしくない。そのくらい奏多は自室と執務室の往復しかしない日々を過ごしていた。
けれど良かったこともある。それはローハン経由で得た翻訳の仕事を通じて気安く話せる仲間が出来たことである。
「カナタ、凄いね…!もう渡した資料全部読んだの?」
「うん。あとね、こっちの資料も訳しておいたの。印をつけているところは専門用語だったから資料と照らし合わせて翻訳したんだけど、まだ自信がないから二重チェックしてもらえると助かるな」
「勿論だよ!いやあ、本当にカナタは仕事が早いなあ…!」
おかげで僕、5時間以上眠れたのなんて3ヶ月ぶりだよ!とメルディは目に涙を浮かべている。大袈裟……とも言えないのは仕事を頼まれた当初の彼の激務ぶりを知っているからである。クマが、本当にすごかった…
「本当にカナタには感謝しているんだ。何せ獣人語を話せる奴はいても、読み書きとなると皆てんでダメでさ…」
人材も…育っていなくて…と段々と声が窄まっていく。ローハンに多少は聞いていたが、本当に人手不足らしい。このメルディという青年(少年?)が獣人語を殆ど独学で身につけるまでは、誰も彼の国の者たちと書面でのやり取りが出来ない状態だったらしいのだ。
「私でよかったら、もっともっと手伝うから遠慮なく言ってね」
何せ暇だし…という言葉は飲み込んで、奏多はにっこりとメルディに対して微笑みかける。
なんというか、ユニークスキルのおかげではあるけれど、こうして仕事を手伝っていると物凄く自己肯定感が上がるのだ。
人の役に立てるのは、純粋に嬉しい。
その上で感謝されたり褒めてもらえたなら尚嬉しい。最近あまりにジークベルトとローハン以外の人間と接触がなかったのも相まって、メルディと過ごすこの時間が奏多にとってかなりの息抜きとなっていたのだ。
だがそんな打算にも似た感情を奏多が抱いているとは露知らず、メルディは感嘆したような声をあげる。
「さすが、ジークベルト師団長がゾッコン(死語)なだけあるなあ…!カナタは女神!いや、魔術師団に舞い降りた天使だよ!!」
「……………いやいやいやいや」
そんな二つ名、とんだ風評被害である。直ちにやめて頂きたい…
(元々私は引きこもり体質だから良かったものの…)
アクティブなタイプならこの状況はとっくに病んでしまっていてもおかしくない。そのくらい奏多は自室と執務室の往復しかしない日々を過ごしていた。
けれど良かったこともある。それはローハン経由で得た翻訳の仕事を通じて気安く話せる仲間が出来たことである。
「カナタ、凄いね…!もう渡した資料全部読んだの?」
「うん。あとね、こっちの資料も訳しておいたの。印をつけているところは専門用語だったから資料と照らし合わせて翻訳したんだけど、まだ自信がないから二重チェックしてもらえると助かるな」
「勿論だよ!いやあ、本当にカナタは仕事が早いなあ…!」
おかげで僕、5時間以上眠れたのなんて3ヶ月ぶりだよ!とメルディは目に涙を浮かべている。大袈裟……とも言えないのは仕事を頼まれた当初の彼の激務ぶりを知っているからである。クマが、本当にすごかった…
「本当にカナタには感謝しているんだ。何せ獣人語を話せる奴はいても、読み書きとなると皆てんでダメでさ…」
人材も…育っていなくて…と段々と声が窄まっていく。ローハンに多少は聞いていたが、本当に人手不足らしい。このメルディという青年(少年?)が獣人語を殆ど独学で身につけるまでは、誰も彼の国の者たちと書面でのやり取りが出来ない状態だったらしいのだ。
「私でよかったら、もっともっと手伝うから遠慮なく言ってね」
何せ暇だし…という言葉は飲み込んで、奏多はにっこりとメルディに対して微笑みかける。
なんというか、ユニークスキルのおかげではあるけれど、こうして仕事を手伝っていると物凄く自己肯定感が上がるのだ。
人の役に立てるのは、純粋に嬉しい。
その上で感謝されたり褒めてもらえたなら尚嬉しい。最近あまりにジークベルトとローハン以外の人間と接触がなかったのも相まって、メルディと過ごすこの時間が奏多にとってかなりの息抜きとなっていたのだ。
だがそんな打算にも似た感情を奏多が抱いているとは露知らず、メルディは感嘆したような声をあげる。
「さすが、ジークベルト師団長がゾッコン(死語)なだけあるなあ…!カナタは女神!いや、魔術師団に舞い降りた天使だよ!!」
「……………いやいやいやいや」
そんな二つ名、とんだ風評被害である。直ちにやめて頂きたい…
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