サプレッション・バレーボール

四国ユキ

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インターハイ予選決勝2

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 コートチェンジが行われ、各々休憩を取る。
 第一セットを取れたのは大きい。後がないという状況は相当なプレッシャーなはずだ。
「もしかして……」
 双海さんが何を言おうとしているのかすぐに察し、私は人差し指を立て自分の唇に当てた。
「そういうことは言っちゃ駄目。気が緩むからね。目の前のボールだけに集中」
 莉菜が真希の存在によって空回りし交代させられ相手ががたついたのと、秘密兵器である真希のバックアタック、さまざまな要因が有利に働いた結果だ。
「さて」
 真希がボトルの水を流し込み、仕切り直した。
「第一セットは相手の絶対的エースがいなかったから勝てたようなもの。本当はこんなもんじゃないよ」
 私は真希の息の上がり方に不安を覚えてしまう。普段の練習でも、先週の星和戦でもこんなに息は切らしていなかった。
「第二セットは必ず出てくる。エース不在で回りの動きがぎこちなかったけど、エースが出てくればいつも通りに戻る」
 真希の全身から汗が噴き出し、喋りながら何度も息継ぎをしている。私は真希の言葉が頭に入ってこなかった。真希の負担と疲労は今までの倍以上。今日は一試合だけとはいえ、大丈夫なのか。
「残り25点、取るよ」
 真希がそう言うと同時に笛が吹かれ、私たちはコートに入った。
 相手コートには莉菜がいる。それと同時に相手チーム全員の顔を見た。やはり、莉菜がいるときといないときとでは顔つきが全然違う。
 絶対的エース不在の隙に勝利をもぎ取ったが今度はそうはいかない。ここからが本当の勝負だ。
 相手のサーブから第二セットが始まる。レシーブが崩されたが、真希は上がってきたトスを難なく決め先制する。
 良子がサーブのためにエンドラインまで移動した。
 さて、莉菜はどう出るか、私はちらりと莉菜を見た。真希との勝負に拘り続けてくれるなら楽だが、そうはいかないだろう。
 良子のサーブが相手を崩す。トスが莉菜に上がり、第二セット最初のエース対決となる。
 莉菜は強烈なアタックを真希ではなく一緒に跳んでいた北村さんのブロックに当てた。ボールは弾かれ北村さんの真横に落ちる。
 真希との勝負には拘っているが今は抑えているのか、莉菜があまり嬉しくなさそうに仲間とハイタッチを交わす。個人の感情は抑え、勝負に徹している感じだ。
 真希と莉菜、両チームのエースを止められる人はいない。一点ずつ取り合い、3対2で真希のサーブとなる。
 真希のジャンプサーブが相手レシーブを崩す。さすがに対応してきている。楽にサーブだけで決まることはもうないか。それとも、威力が落ちているのか。私は嫌な考えを振り払うために頭を振り、目の前に集中する。
 莉菜が乱れたトスを決める。
 莉菜のサーブが北村さん目掛け飛んでくる。北村さんがレシーブを弾き、ボールが真希の真上に上がった。真希がそれを私が待つレフトに上げた。
 私はそれをストレートに力強く打ち込む。
 コート中央エンドライン際にいたはずの莉菜がすでに回り込んでそれを綺麗にレシーブする。
 何だその機動力、私が驚いているうちに相手のAクイックがノーブロックの状態で決まる。
 莉菜のサーブがまたも北村さんに飛び、真希がレフトにトスを上げた。
 ストレートが駄目なら、クロス。
 莉菜はすでにそこに回り込んでおり、またも綺麗にレシーブが返る。
 莉菜の守備範囲の広さには驚くが、とりあえずブロック、私は素早くネット際に移動した。真希のアタックは別として、本来女子バレーはラリーが続くことが多い。まずは粘る。チャンスはそこに生まれる、私は相手の動きを目で追った。
 相手アタッカーが二人同時にセッター目掛け走ってきた。二人はセッターを挟んで同時に跳ぶ。
 AクイックとCクイック同時? と私が驚きブロックに跳ぶも、トスはレフト側へ上げられる。
 莉菜と入れ替わりで上がってきた相手のもう一人のエースがそれを決める。
 莉菜のサーブで崩され、真希が私の代わりにトスを上げ、相手が返しに決める。これが繰り返され7対3となったところで私たちはタイムを取った。
「相手のエースがいると全然動きが違う。これが本来の力ってわけだ」
 真希は苦々しそうに呻く。
「まずはサーブレシーブを良子に返そう。バックアタックが封じられると、必然的にトスは奈緒か春日さんにしか上がらないから、相手もブロックがしやすい」
 笛が吹かれ試合が再開された。
 莉菜のサーブがまたも北村さんに飛んでくる。レシーブしたボールが真希の頭上に上がる。
 真希は二歩素早く後ろに下がり、すぐに力の向きを変え前に二歩踏み出し、その場で飛び跳ねた。真希の意表を突くアタックに反応したブロックがボールを弾き、何とか流れを切った。
 ようやく回ってきたサーブは、綺麗にレシーブされる。
 相手のセンターがAクイックを打つために走ってきた。
 星和より攻撃が速いんじゃないか、私はボールと相手の動きを見つめた。
 相手センターがセッターの一歩手前で急ブレーキをかけ、二歩でセッターの後ろに回り込みジャンプした。
 直前にAクイックからCクイックに切り替える? 相手のエースといい、化け物揃いか。必死にブロックに跳ぶが、ボールはレフトに上がり、それを相手が決める。
 今度もまたレシーブで崩され、真希がトスを上げ、私が打つ、が繰り返された。途中真希のバックアタックを挟んで点を取る。真希が前衛に上がってきたときにはすでに10点差がついており、逆転は不可能だった。
 第一セットとは真逆の展開になり、25対15で第二セットを落とした。
「随分やられたね」
 コートチェンジをし、私は動揺を表に出さないよう、努めて落ち着きながら振る舞った。
「とりあえず、サーブレシーブを何とかしよう。相手の狙う人が分かったら近くにいる私か真希か、春日さんと入れ替わる」
 真希は限界に近いんじゃないか、私は真希を見ながら嫌な感覚に捕らわれていた。息は切れっぱなしだし、何も喋っていない。それにサーブもアタックも一発で決まらなくなってきている。第二セットも10点差をひっくり返そうとずっと跳び続けていた。真希の頭に落としていいセットなど存在しない。たとえどんな点差であっても。それが真希をより窮地に追いやっている。
 私は不安を振り払った。自分が真希を信じないでどうする。それに真希の負担を軽くできるのは私だ。頼ってばかりじゃ、中学最後と変わらない。
 笛が吹かれ、私たちはコートに入った。
「泣いても笑っても残り25点。すべてを尽くして勝つよ!」
 真希が勝つと言えば勝てる気がするから不思議だ、私は心が軽くなった。
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