料理人はSランク冒険者よりも強かったそうです。

浮浪人

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始まりの話

王様は食通でした。

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立派な馬車、それを引く綺麗な白馬4頭。そして、馬車を守るように周りにいる豪華な全身鎧フルプレートを着込んだ騎士団。

それは、王国からだいぶ離れている一つの街の中を行進していた。その目的は、この村にある人気レストランが出しているというドラゴンステーキを食べるためだ。・・・馬車の中にいる王様が。

待っていろよ、伝説のドラゴンの肉!

この国の王、ダモスはそう強く思いながら、早く着かないかなーと馬車の中でゆったりとしていた。

△△△


王国の王室にて、

「大変です、ダモス様ー!」

朝早くに執事が慌てた様子で王室に入って来た。
その大声にびっくりしたダモス王は持っていた『世界食材大百科』という本をを思わず落としてしまいそうになる。

「どうしたのだ?戦争でも起こりそうなのか?」

普段は温厚な執事がここまで慌てるとは只事ではない。執事は、ぜえぜえと息を切らしていたので、一旦呼吸を整え、

「リカンド街のレストランがドラゴンステーキを出しているそうです!」

と言った。その言葉を聞いたダモス王は手に持っている本を床に投げ、

「なんだと!!それは本当か!」

と、とても驚いた。ダモス王がここまで声を荒げるには理由がある。実は彼、かなりの料理マニアで、美味しい料理や食材を常日頃求めている。そしてドラゴンステーキというのは、SSランクのドラゴンの肉を使ったステーキのことだ。

SSランクというと王国の騎士団全員がかかっても敵わず、帝国の冒険者、全ての騎士団全員でかかってようやく勝てるぐらいの強さである。ぶっちゃけ魔王の次ぐらいに強い。魔王はSSSランクだ。

なのでドラゴンを討伐してもドラゴンの肉は全ステータスアップなどのチート級の付属効果がついているため、討伐メンバー全員で美味しくいただくのが普通だ。まず残ることは無い。さらに骨、血、臓器、目、鱗など全ての部位も伝説級のアイテムを作るための素材となるので、超高額で取引される。しかし、帝国しかドラゴンを倒したことが無いと言われているので、帝国の宮殿内に保管されているらしい。

そんなドラゴンの肉が普通の街のレストランで、しかもお手軽な価格で出されているというではないか。これは食べに行かないわけにはいかない。

「騎士団を集めよ!お前は出発の準備をしろ!今から30分後にリカンド街に転移魔法陣を使って移動するぞ!」

転移魔法陣とは最大500人までをある場所にテレポートさせることだ。費用もそれなりにする。なので普段は戦争などが起きた場合に兵士を送るために使われる。しかし、今はなんとしても早く行かなければならない。

「承知致しました。直ちに準備いたします。」

執事は深い礼をしてそう言うと、王室を急いで出て行った。

まさか人生の内にドラゴンの肉を食べれるとは思ってもいなかったわい。神に感謝じゃな。

ダモス王はそう思って、リカンド街に行くための準備を始めた。


△△△


俺が外を見ると、終わりが見えない行列が崩れていて、ばらばらになっていた。そしてガシャ、ガシャ、と規則正しいリズムで金属のなる音が聞こえてくる。それはレストランに向かって歩いて来ている騎士団の全く乱れていない足音だった。

さすがに、王様だと思われる集団なので行列に並んでいたたくさんの人が左右に分かれて騎士団が通るための道を作らなくてはいけない。そして騎士団の先頭と最後列が通っている間、座って頭を深く下げる。レストランの席に座っていた人は、その金属音を聞いて外をみて騎士団の姿を確認すると、急いでドラゴンステーキを口に入れ、全員が急いでレストランから出て同じように座って深く頭を下げる。

騎士団がレストランの目の前まで来ると止まった。そして、馬車のなかから小太りのおっさんが出て来て、走って騎士団の先頭に行き、

「本日はこのような突然の訪問許してほしい。私の名前はダモス。この国の王様だ。実はな、このレストランで出されていると言われているドラゴンステーキをどうしても食べたくて来たのだ。

何もドラゴンの肉を全て奪うつもりは無い。しかしどうしても食べたいのでレストラン内を私と騎士達の貸し切り状態にして貰えると嬉しい。そして列に並んでいた諸君。どうかこのような横入りを許してほしい。みんなの分は残しておくのでそれで勘弁して欲しい。」

王様はそう大声で言うと、頭を下げている人達に向かって礼をしてレストランの中に入って来る。

どうやら良い王様らしい。

そして王様の後に続いて騎士達も続々と入って来る。全員は入らなかったので、四分の三ぐらいが外で待機している。

王様と、数人の騎士団の騎士がレストランに入ると、

「あ、どうぞ。外の席はご自由に使ってください。」

騎士団の団長のような人物がそう、後ろの人達に向かって大きな声で言った。

並んでいる人達はしばらく動かなかったが、騎士団の態度が楽になり、雑談を始めたのを見て、列の先頭にいた人から順に外の世界席に座って行く。

実は騎士団による威圧をこのような態度で和らげることによって村人や冒険者達が怯えないようにする作戦だったりする。

こうして俺たちは王様に自分たちの料理を出すことになる。


△△△△△△△△△△△△△△


軽い解説。この話を見て何も感じなければ飛ばしてもオーケー。

1、何故執事がレストランでドラゴンステーキを出しているのとを知っていたか。

実は開店時間の数時間前にクロキ達料理人がリカンド街で軽い宣伝を行なった。そしてドラゴンステーキの話題は街中をかけめぐり、ある貴族の耳に入る。その貴族は王様と仲が良く、グルメ通であることを知っていたため、王国に連絡をとったのだ。

2、帝国全ての騎士団とは?

帝国には騎士団が3つある。陸上部隊の歩兵騎士、空中部隊の飛行騎士、海上部隊の海兵騎士だ。この三つの騎士団全員ということ。ちなみに王国の騎士団は一つのみ。

          質問あったら増える場合有り。
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