逢いに行くよ

ぶんゆ

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43日目

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闖入者との同居生活にも随分と慣れたある日。

「……ってことで、今日は寝てなさい!っす!!無理しちゃだめっすよ!」

珍しく樹が風邪を引いた。
連日の撮影と舞台稽古の合間に仕事の打ち合わせが詰まりに詰まっていたのだ。

こうして寝込むのは久しぶりで、本当に若手の時ぶりかもしれない。
その頃は、基本たる体調管理ができていないなどなんて情けないことかと、暗い部屋1人ベッドで思わず涙を流したものだ。
今思えば、若さゆえに詰め込みすぎてそりゃあ熱も出すだろうという激動の日々だったのだが、それが許される立場でも許せる樹でもなかった。実際周囲も「じゃあしょうがないね」とは言ってくれなかったし、失った仕事もあったのだ。

そんな過去を思い返しながら、樹は現在の明るい部屋、枕元に準備されたお粥、そして自分を覗き込む膨れっ面を見回して思わず笑った。

「はは、は…ゴホッ!ゴホッ!」

本調子では無い喉で笑ったせいで激しく咳き込み、天使が慌てて水を差し出してくる。

「……んも~樹さんったら!俺を見習って下さいよ!風邪とか全然引いたことないっすよ!」

「天使だからだろ、お前は……」

湯たんぽの用意、ポカリ、冷えピタ、お粥にストロー付きのコップ。
天使はマニュアルでもあるのかというほど完璧な看病をこなしていた。

「……なあ、お前ってさ。ほんとに、天使なんだよな」

「え、今さら!?え、傷つきました!」

「もう、なんか…母ちゃんに見えてきた…」

「樹さ~ん!!?熱で朦朧としちゃってません!?うわ!おでこ熱!!」

思わずといったように樹のおでこに片手をかざした天使は、その熱の高さに大袈裟に騒ぎ出す。
冷えピタまだあったかな…と唸り出す彼にとって、自分が人に見えないが故買い物も出来ないので物資の不足は頭の痛い事態であった。
そんな姿に、また樹の胸の奥から笑いが込み上げてくる。

「……でもさ…」

「え?話続いてたんすか?寝てなさいよ」

「…ありがとな、ここにいてくれて…」

天使はパチパチと音が鳴るようなまばたきをする。

「……佐渡さん、熱のせいで甘えんぼモード入ってません?」

「黙れ……」

少し赤くなった頬を見て、天使は笑った。
それが熱のせいじゃなかったことに、気づいていたから。
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