三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

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第1章: 三人の精霊との契約

切り札

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  エルザの防御障壁は解けてしまった。
あとは、リサの防御障壁とシルフィーの近距離衝撃波のみが俺の手札だ。

「リサ、防御障壁を貼りながら移動は可能か?」

「無理よ。そもそも障壁自体が自由に発動しないもの」

   ( 何言ってるんだ? 自由に発動しない? )

「リサの炎の防御障壁は、条件を設定しないと発動しない障壁なの」

   リサは申し訳なさそうに視線を落としもじもじしながら頬を紅く染めている。

「例えば、敵が扉に触れたら発動するとか、岩を踏んだら発動とか。ただし物理的な条件設定しないと駄目だよ」

「ややこしいな・・・何故そんな面倒くさいことに」

  リサは、顔を真っ赤にして頬を膨らまして少し不貞腐れていた。

  ( 物理的な条件発動の障壁・・・ )

「アーサー様、相手の攻撃来ますわ!
お気をつけ下さい」

 フレディは掌を再びアーサーに向けて魔法を放つ。アーサーは素早く魔法攻撃をかわした。間一髪だ。


「防御障壁は消えた、どんどん攻撃するのだ、グフフ」
  
  フレディの表情から明らかに生気が消えていて死んだ魚の目をしていた。

「アーサー様。お兄様非常に危険な状態ですわ。魔力の使い過ぎです」

「ーーくっ。一瞬でも隙が出来れば・・・」

  迂闊に近寄れず、 フレディの攻撃を避けるのが精一杯な状態で僅かな隙を窺っていた。

 「ーーあっ・・」

 一瞬だがフレディの攻撃の手が止まる。

  しかしーー また連続して相手の攻撃が繰り返される。その度に、シルフィーが右往左往の指示が飛び間一髪で回避している。


「はあ、はあ・・・俺の体力もヤバイぞ」

ーー その時!!!


「う・・・あ・・アーサー・・・」

  操られているフレディから微かな声が聞こえた。攻撃の手が止まった。

「アーサー様・・・ッ!!」

「ああ! 聞こえてるともーー!!」

  アーサーがこのチャンスを逃すものかとフレディに向かい一直線風を切り駈け出す。

「あ・・あーさー・・・ころして」

「何をやってるんデス。これだから人間は」

  自分の思い通りにならないといった様子で明らかに苛立ちを隠しきれないでいるサタン。

「シルフィー ーーッ!!」

   フレディとの距離を詰めたアーサーの右の掌には圧縮された気圧の塊が形成されていた。それは小さな竜巻のようなもので渦を巻いているようにも見える。
  
「いくわよ、吹っ飛びなさいッ!!アサルト ドライブ!!」

  アーサーの右の掌で圧縮されていた風の塊が一気にフレディに向かい放たれた。その凄まじく凶悪までの勢いでフレディの体は遥か後方の壁にめり込んでいたーー。

「ーーーーッ!」

  サタンは、吹っ飛ばされたフレディに目をやりながら悔しさを滲ませている。

「あとは、お前だけだ。来いよ! 自分だけでは何も出来ないのか」

   アーサーのその言葉で、サタンの怒りは激しい波のように全身に広がった。

「お前如き、虫ケラのような人間が誰に口を聞いてるのデス!!」

  三又の槍を構えアーサーに向かって一直線に突き立てるーー

「アーサー様ーーッ」



「ーーーーーーッ!!」

  サタンの三又の槍がアーサーに触れた瞬間に凄まじい火柱が上がりサタンは体を包み込こんだ。サタンは炎に包まれ悶絶している。


「ーー緊急炎陣障壁。アーサー様の身体に触れた瞬間に発動するように設定してたのよ」
 
  リサは得意げな表情で大威張りでドヤ顔を決めている。

「ーーぐそぉぉ・・・人間ごときが・・・」

  サタンはまるで産まれたての子鹿のように立つのがやっとの状態だ。

「今日のところは・・・見逃してやるヨ
次は、 こうは行かない・・・」

 そういうと空間に歪みが生じるその中に消えていったーー。



  アーサーは空気を抜かれた風船のようにふらふらと地面に倒れ込んだ。

「ーー終わったのか・・・」

「最後は私のおかげよねえ、アーサー様」

「ふふふ、何を言ってるの? 私の知恵と活躍を見なかったのかしら」

「私の防御障壁のおかげなの。アーサーさまほめてくれたの」

「アーサー様あ、ご褒美のちゅーっは?」

「ふふふー 勿論私にも遠慮なさらずに」

「私もごほうびほしいの。ちゅーなの」

  アーサーは地面に倒れ込んだまま、目を閉じて口を真一文字に閉じている。

「「「   アーサーさまああああ 」」」


「ーー 言ってろ 」

   アーサーの表情は今までに見せたことのない柔らかな笑みを浮かべていた ーーーー。
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