29 / 216
三人の精霊と光の精霊の書
兄弟
しおりを挟む「うむーー・・・・」
「うむーー・・・なの」
「・・・」
謎の生物のような唸り声が部屋中に木霊している一つは男性でもう一つは小さな可愛らしい声だ。
「うむーー・・・」
「うむーー・・・なの」
アーサーとシルフィーは顎に手を置き何やら考え事をしている。
「エルザ真似するな」
エルザは、なの?!っと驚いたフリをして笑いながら去っていった。
「さっきから何を悩んでらっしゃるのです」
シルフィーは読書を中断し、二人のやりとりに呆れて堪らず口を挟んだ。
「兄貴に呼ばれたんだよ」
良くぞ聞いてくれたと言わんばかりにシルフィーに相談する。
「お兄様ですか・・・そう言えばあの騒動以来会ってませんね」
「ああ。かなりの重症でもあったし親父たちは未だに俺のことは認めてないしな。兄貴も俺の顔なんて見たくないと思ったから」
「呼ばれたなら行くしかないですわね。何かあれば私たちが」
シルフィーは眼鏡を人差し指で押し上げその反射で眼鏡の縁が光った。
アーサーはシルフィーに話を聞いてもらい気持ちが楽になったのか、覚悟を決めて大きなため息を吐いた。
「仕方ない。行くか」
★ ★ ★
薄暗い廊下に乾いたノックをする音が響き渡る。
「どうぞ、入りたまえ」
ゆっくりとドアを開けよそよそしくアーサーが入る。
「何かご用ですか」
アーサーが訪ねたが、沈黙がしばらく続く、この重い空気にアーサーは息苦しさを感じていた。ただですら苦手な兄貴なのにそれを目の前にして立っている。 しかも普段は絶対にあり得ない向こうからの呼び出しだ。何を言われるのかと緊張で手に汗をかいている。
「ーーこの前は・・・世話になったな」
耳を疑いたくなるような思い掛け無い言葉だった。
「・・・いいえ、 そんなこと」
何て言えば良いのだろう、言葉が見つからない。
「・・・何か望みはあるか?欲しい物でも、何でも可能な限り叶えよう」
「望み何て、そんな・・・」
「遠慮することない、正直自分の愚かさには反省している。お前が止めてくれなければ多大なる損害が出て取り返しのつかない事になっていただろう。せめてもの感謝の気持ちだ」
フレディはアーサーに頭を下げて感謝の気持ちを表した。アーサーは、戸惑うばかりだった。
「金でも宝石でも女でも何でも好きなモノを言えばいい。何が欲しい」
アーサーは、少し考えていた。
そして、閃いたようにこう言った。
「家が欲しいです。 街に小さくても構いませんので家を買って欲しいです」
フレディは、首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
「家なら此処にあるだろ?王宮の何が不満だ」
「ここなら何不住なく暮らせます。だけど僕は自分のチカラをもっと試してみたい。自分のチカラで生きてみたい。自分の可能性を知りたい。そして、もっと世界を知りたい」
アーサーは目を輝かせてフレディを見つめていた。
「ふふ、良かろう。早速手配しておくよ」
「ありがとう。兄さん」
アーサーは、一礼してフレディに背を向け去ろうとするとーー。
「アーサー! お前は変わったよ。精霊に感謝だな」
「うん! 兄さんと同じくらいかけがえのない存在だよ」
アーサーは振り返らずにそう言い残し去っていった。照れくさくてフレディを見れなかったのかもしれない。
アーサーからの思い掛け無い言葉にフレディは今までの自分がしてきた事を思い出しながら何もない天井をぼんやりと見つめていた・・・・
その時ーー ノックが鳴ったと思ったら勢いよくドアが開く。
「アーサーを呼び出して何の相談な訳」
煌びやかな宝石を見に纏い天井のライトで眩しいくらいに輝いている。見るからに高そうなドレスを着ている。
高貴さに劣らぬ容姿も美しく他の男たちなら目を奪われてしまう。
「ミランダ姉さん」
「まさか・・・あの能無しの恥晒しを認めたりしてないわよね? たかが精霊を飼いならして魔法を使いこなしている気でいるだけなんですから」
「・・・今回の件は私に預からせて下さい。正直アーサーに助けられたのは事実なので」
うつ向いたまま声のトーンを下げて答える。
「ふーんっ。まあいいわあまり私やお父様を怒らせないことね。フレディ・・・次は無いわよ」
そういうとコツコツとハイヒールを鳴らしながら去って行った。
フレディは、その後ろ姿を見送りしばらく無言で何かを考えていたが、しばらく経つと、執事を呼びつけて至急頼みたいものがあると告げた。
ーー 城下町に家を一軒手配してくれ ーー
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる