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三人の精霊と光の精霊の書
荒野
しおりを挟む初めて見る景色に驚くばかりだーー。
生まれ初めて国を出た。一歩出た外は想像を絶する程広く世界は何処までも広がっていた。
見渡す限り広がる荒野、地平線のその向こうは何があるのか。想像するだけでも胸が踊るーー。
これから 生きるか死ぬかもわからない戦いが待っていると言うのに、アーサーの心は冒険心でいっぱいだった。
「アーサー様は、楽しそうだねえ。ワクワク、ドキドキが伝わってくるよ」
「こんなに世界が広いなんて知らなかった。この道なき道の先に何があるのか知りたいしあの地平線の向こう側に何があるのか見てみたい。俺は知らない事だらけだ。 この広い世界を見ていると自分なんて本当にちっぽけだと思うよ」
「これからもっといろんな所に足を運んでみると良いにゃん。いろんな場所でいろんな人と出会い、学びそして自分の糧にするのにゃん。その一つ一つがこれからのアーサーにゃんの血となり骨となるにゃん」
「いろんな場所・・・旅か」
馬車から流れて行く景色を見ながらアーサーは行ったこともない場所を想い描いていた。
何処までも広がる青い海や背筋も凍るような白銀の世界、体が焼けるような炎の洞窟、 その想像出来る全てがもしかしたらあるのかも知れないと思うほどこの世界は神秘と謎に包まれていると思ったのだ。
「悪くない」
★ ★ ★
「今日は、このあたりで野宿にゃん」
夕焼けの茜色の陽がメルルの横顔を照らす。薄い茶色の髪が燃えているようだ。
もうすっかり辺りは暗くなり始めていた。
「何だか 薄気味悪いですね」
ルナが辺りをキョロキョロしながら不安を口にした。
「何もないから逆に周りがよく見えて良いと思ったにゃんけど変えますかにゃ」
「俺、野宿初めてだけど、逆に目立ち過ぎない? ここに人が居ますよって言ってるようなものだと思うよ」
「なの」
うん、うんとエルザも頷く。
今いる場所は、荒野のど真ん中で周りに何もない。もし仮に此処で焚き火でもしたら周りから目立つこと間違いない。
「日も落ちてきたにゃん、適当な場所に移動するにゃん」
手綱を引き再び馬車は走り出す。辺りは先ほどの茜色から藍色の空に変り視界も暗くなり初めている。
「アーサー様、あそこの木が数本生えている場所など良いかがです?」
シルフィーが指を指す方向には荒野の中には珍しく木が数本生えている場所があった。
「メルルあそこはどうだい?」
「私は何処でも良いのですにゃん。
では、あそこにしますかにゃん」
荒野には周りに無駄な明かりなどは無く夜空の星が手に届くように瞬いている。
「星ってこんなに綺麗だったのか」
「私は星空見上げるの好きにゃ。全てを包み込んでくれるような感じがするにゃん」
夜空の星々に目を奪われ、しばらく沈黙が続いた後、アーサーは思い切って疑問に思っていたことをぶつけてみた。
「君とルナは、どういう関係なの? 何故二人が来なければならなかったの」
「相変わらず良い質問で、ズバリ聞きますにゃん・・・荒野の夜は冷えますにゃん。焚き火を囲んで話しでもしますにゃん」
メルルは、少し煮え切らない表情を浮かべていた。
精霊達と一緒にせっせと焚き火になりそうな物を集めて火を起こした。
メルルは、炎を見つめながらルナに視線を送った。ルナはその視線を感じ頷く。
ーー ルナの切ない恋の物語が始まる ーー
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