三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

文字の大きさ
38 / 216
三人の精霊と光の精霊の書

皇子と光の精霊②

しおりを挟む

「最近姿見せないと思ったらこんなところにいたんだ」

 そこ木々の闇がいっそう荒々しく息づき人は寄りつかない場所だった。

「何のよう? こんな所までわざわざ探しに来て」

「何のようって? ニシシシ。理由がなきゃ来ちゃダメか」

「迷惑よ」

 ルナはアクセルを無視して飛び去って行った。

 アクセルには何で怒っているのか全く見当がつかなかった。

「何だ? アイツ」

 アクセルが肩を落として、つまらなそうな顔をしているとガサガサと物音がして猫耳が頭を覗かせた。

「にゃにゃ、葉っぱが・・・ アクセル様こんなにゃ所までわざわざ精霊を捜しになられて」

「まあ・・・友達だからな。今はだったが正しいか」

  メルルは、遠い目をしながら全てを悟ったような表情の浮かべた。

「アクセル様は、魔女も精霊もそうですがあまりそういった類いの種族に近づき過ぎてるのですにゃ」

「そうか? 人間より素直で良い奴らばかりだからな。俺は人間のが嫌いだ、嘘や偽り裏切りそんなことを平気でする奴らばかりだ」

「お言葉ですが、リリスにゃんは危険ですにゃ。 魔女はいろんな国や悪魔族など災いを運んでくるのですにゃ。これ以上の関係をお持ちになられますと」

 アクセルの表情が一気に険しくなる。

「メルル、それ以上俺の友達関係に口を出すと消すぞ!! 俺とガチでやり合うのか」

 腰に差していた剣をメルルの鼻先に向けて言い放った。

「ーーいいえですにゃ」

 メルルは、苦笑いを浮かべて頭を下げた。

「例え、リリスが災いを招こうが帝国を敵にまわそうが俺が必ず守る! 国もリリスもメルルお前もだ」

「アクセル様・・・」

 メルルは、頭を下げたまま嬉し涙を浮かべた。

 このアクセルという男は最強騎士メルルすら歯が立たない。超人的な身体能力と抜群の剣術そして、特異体質のどんな武器を持ってもそれを魔封剣に変える事が出来る。

 誰かが自分に向かって魔法を使えばそれを吸い取り無形の斬撃として相手に打つ事が出来るのだ。その魔法が強力であればある程強い斬撃を与えることが出来る。

  但し、剣の耐久性と魔法を吸い取り、魔封剣にするまでのインターバルがかかるのが弱点だ。

 皇子にして最強の戦士、いろんな戦場でも全て先頭に立ちみんなを率いてきた。

 メルルは、それが気がかりで仕方なかった。 皇子を護るのが使命の自分達がいつも守られてばかりの現状、 もしもの事が・・・。

「メルル帰るぞ」

「はい。 アクセル様」

★  ★  ★

「何なの?アクセルは。デリカシーが無いのにも程があるわ」

 ルナは戸惑っていた。 絶対に見つかる事のないところに隠れていたのに見つけ出してくれた事。 正直嬉しかった・・・けど、リリスの事を思うと胸が痛む。

「アクセルはリリスが好きなんでしょ?」

 アクセルとリリスの関係って?
 聞きたいけど、何か怖いな・・・。
 そう言えば私、アクセルのこと何も知らないーー。


 気づけばまた、ホーエンハイムの城下町の辺りまでやって来ていた。

  街はずれの小川のせせらぎの音がアクセルと出会った頃の事を思い出させた。

「ここで、アクセルと出会ったんだ」

  アクセルと出会ってから今までのことを思い出す。あんなに楽しい毎日は、初めてだった。契約するならアクセル以外の人はいないと思える存在だった。

「やっぱりここだったんだ。ニシシシ」

  声と同時に目の前にアクセルが笑顔で現れた。

「あくせる」

 思わぬ登場に感情が堰をせきを切って溢れ出しアクセルに抱きつくルナ。

「どうしたんだよ。そんなに俺に会いたかったのかよ」

「ちがうもん」

「そっか。俺はお前に会いたかったし、話がしたかった。それに一緒に居たかったよ」

「何でよ、何でそんなに私をからかうの? 困らせるの?」

「正直な気持ちを伝えてるだけだよ。俺は嘘も冗談も言わない。俺は真っ直ぐな気持ちしか伝えられない」

「あくせる・・・」

 涙を流しながら上目遣いでアクセルを見上げるルナ。そっと涙を優しく拭いてあげるアクセル。

「ルナ、 俺のそばに居てくれ」

「うん。 もう泣かせないでね」

「ニシシシ。 それは保証出来ねえな」

「酷い」

 ポンとアクセルの胸を叩くルナだった。




ーー 一緒にいて良いんだよね アクセルーー
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...