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三人の精霊と光の精霊の書
皇子と光の精霊③
しおりを挟む楽しい日々、 嬉しい日々はそんなに長く続かなかったーー。
「メルル様、また新聖教と思われる刺客が国境で見かけられたとの報告がありましたニャ」
「またですかにゃ、いよいよ動きが活発化して来たですにゃ。部隊は何処にゃ」
「薔薇ですニャ。薔薇十字軍ですニャ!」
「薔薇十字軍ですかにゃ・・・向こうも調べて来てるのにゃ」
新聖教には幾つかの部隊がある。
薔薇十字・百合十字・アイリス十字の三部隊である。
薔薇十字は、魔法や魔術が比較的中心の部隊で、 百合は、騎馬隊が中心の攻撃型、アイリスは、魔法と騎士団の混合で平均的な侵略など主にクルセイダーズといえばこのアイリス十字軍を指す。
よって、薔薇十字軍が出てくる時は本気で国の侵略をしようとしている時である。
更に、騎士団の強いホーエンハイムには薔薇十字軍は打って付けの策である。
「他の部隊にゃら、追い返す事など容易いのだけど、薔薇は流石に厳しいのにゃ」
「奴らの目的は・・・」
「アクセル様には申し訳にゃいけど、間違いなくリリスにゃんなのね」
「リリス様ですか・・・」
神妙な顔つきになるメルルの部下。
「キャットハンズに戦闘配備させろ!!」
「にゃん!」
★ ★ ★
ホーエンハイム最強の騎士団のキャットハンズ。
構成員は、三十名程の精鋭部隊。
騎士団長は、メルル。
三部隊の構成で部隊長は、三毛猫たま・ 白猫ミント・黒猫カスケード。
この四人はずば抜けたスピードと四人にしかできない連携技がある。
王宮のエントランスで集合し、メルルがミーティングを開始しようとしている。
その時ーー、
「おい、メルル。キャットハンズを従えて何の騒ぎだ」
騒ぎを聞きつけアクセルが太々しい態度でメルルに啖呵を切った。
「クルセイダーズが国の近くまで攻めて来てますにゃ」
「何故俺に言わない」
「アクセル様が出るまでではないかと・・・」
アクセルの顔つきが見る見るうちに変わる。
「それを決めるのは俺だろ?お前に何の権限がある」
メルルが片膝を付き頭を下げる。
「申し訳ございませんにゃ」
「メルル様・・・」
キャットハンズの他のメンバーから心配する声が漏れる。
「ちぇっ。どいつもこいつもーー」
そういうとさっさと去って行った。
「アクセル様、チョーこえーッス」
「とても皇子には見えないですね」
カスケードとミントが陰口を叩いているとそれを聞いたメルルが口を挟む。
「陰でもアクセルにゃんの事を悪く言うにゃ! どれだけみんなが助けてもらってきたにゃ? 常に先頭に立ち体を張って国やみんなを守ってきて下さったのは他でもにゃいアクセルにゃんなのにゃん」
「スイマセン」
カスケードとミントは、頭を下げ謝罪する。
「もう良いにゃん。さあ、城門で戦闘配備にーーーー」
その時ーー 危険を知らせる錆び付いた鐘の音が国中に響きわたる。
「マズイにゃ、急ぐにゃ」
★ ★ ★
重々しい地響きがし黒煙がたちのぼる。
爆音と爆音が怒涛のような響きになって国中に響きわたる。
「状況は!?」
いち早く駆けつけた三毛猫たまが高台にいる兵士に現状の状況を確認する。
「もの凄い数のクルセイダーズが城門前で魔法攻撃を繰り返しています」
「大体の数を教えてくれにゃ」
「そうですね・・・三・・・五百くらいかと」
「結構な数だにゃ、城門の被害状況は」
「重大な損傷はありませんが一点に集中砲火させている為にひび割れが出てきてます。恐らくそう長くは保たないかと」
たまが現状把握している間に他のメンバーも城門前に集結した。
城門入り口前に三十名の兵士がズラリと四列に並んだ。
「たま、現状報告してくれにゃ」
「敵の数、五百。被害状況は城門ひび割れでもう長くは保たないにゃ。よって突撃し敵を排除するにゃ」
一気に緊張と不安が漂う現場ーー。
「城門を解放し、空いた瞬間に一気に奇襲をかけるにゃん。注意すべきは相手は薔薇十字軍にゃので魔法攻撃が厄介にゃん。 そこは持ち前のスピードを活かして撹乱させながら的を絞らせないようにするにゃん」
「城門は一度開くがすぐまた閉じるにゃ。その意味が分かるにゃ。勝つまで開かないという事だにゃ」
全員の唾を飲み込む音が聞こえた。
「皆、心に刻め! ホーエンハイムの騎士は勇気・勇敢・友情の誇り高き騎士なり」
キャットハンズの兵士全員が剣を抜き、左胸に構え祈りを捧げるように目を閉じた。
「いくぞ! キャットハンズの騎士達よ!」
「にゃーーーーーー」
メルルの号令と共に全員が剣を天に掲げた。
ーー そして今、 城門が開く ーー
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