100 / 216
第2章: 三人の精霊と俺の魔導書【グリモワール】
情報収集
しおりを挟む月明かりが照らす夜の港街。心地よい波の音をかき消すように酒場は冒険者や船乗りが大騒ぎして活気付いている。
昼間のうちにある程度の店の目星をつけていたアーサーだが、いざ店の中に入ってみると情報屋の検討が全くつかなかった。
「んんー、全然分かんねえ・・・」
『一人、一人に情報屋ですか?って聞いてみたらどお? 』
リサがリンクテレパシーで話しかけてくる。
三人の精霊はアーサーに同化している。
一緒にいると余りに目立ち過ぎるので三人には申し訳ないが同化してもらっている。
『それでは怪しまれてしまいますわ』
「ーーだな、逆に警戒されてそうだとしても違うと言うだろう」
シルフィーの意見に賛成だ。あまり目立つ行動は極力避けたい。
『情報屋の情報を聞いてみたらどうでしょうか?』
「情報屋についての情報収集か・・・あまり目立ちたくはないが聞いてみるか」
アーサーは目星しを付けていた店とは違い活気付いている居酒屋の店へ入って行った。
「いらっしゃいませえ」
店内には冒険者や船乗りが酔っ払い大宴会でもしているように大騒ぎしている。
アーサーは適当に空いている席に座ると店員の女の子が注文をとりにやって来た。
「ーー何になさいますか?」
今がチャンスかもしれない。店員の女の子はかなり若いのでアルバイトだろう。
上手くいけば・・・。
アーサーは目を合わさず女の子の手を握った。
「えっ?」
店員の女の子は一瞬驚いたがアーサーの次の言葉で表情を変える。
「情報屋について何か知ってることがあったら教えてほしい」
店員の女の子はアーサーから貰ったチップをポケットに丸め込み、そっと耳打ちした。
「向かいのBARのカウンター席に毎日同じ席に座っている男がいるらしいわ。その人が情報屋じゃないかって冒険者の男たちが話してるのを聞いたわ」
「ありがとう」
「お兄さんチップありがとうね!」
店員の女の子はまた忙しそうに店の奥に消えて行ったーー
店内の時計は深夜二時を過ぎていた。
「今夜はもう出直すか・・・」
アーサーは席からゆっくりと立ち上がると未だ熱の冷めない居酒屋を後にした。
★ ★ ★
晴れた陽の光の反射が一層眩しく感じる朝、
カーテンの隙間から光線のように光が差し込む。心地よいさざ波の音とスヤスヤと聞こえる寝息・・・ん?
アーサーが目を覚まし左を見るとリサが耳元で寝ている。右を向けばシルフィー。
「・・・一人足りないぞ。それになんか腹が湿っぽい感じがする」
起き上がるとお腹の上でよだれを垂らしお腹を出して大いびきをかいているエルザがいた。
「お前ら起きろおおお!!」
その声でリサとシルフィーは眠い目を擦りながら起きた。
「ふぁぁあ、あーさーしゃまおはようございましゅ」
リサの真っ赤な長い髪はボサボサだ。
「おはようございます、アーサー様」
シルフィーは寝ぼけながら一生懸命メガネを探している。
未だ一人、全く無反応でぐーぐーいびきをかいているエルザ。
アーサーはため息を吐きながら耳元で囁いた。
「エルザ、朝ごはんだよ」
一瞬で目を開き立ち上がるの。
「お腹すいたの。 ごはん食べるの」
立ち上がったエルザの可愛い小さなおへそが丸見えだった。
☆
「やっぱりな。 昨日も少し気になっていたんだよ」
夜まで時間があるのでアーサーは、港街を散策していた。レンガ調の石畳の道を歩いている。
『何が気になるのお?』
『帝国兵、いいえ帝国騎士ですわね 』
リサの問いかけに即座に答えるシルフィー。
アーサーはシルフィーの答えに頷いた。
「昨日の酒場にも他の客に混じって数名の帝国兵がいたのが分かった。 今日の感じを見ても俺らを追ってとかそういう感じじゃない。しかも、今そこに立っているのは兵ではなく騎士だ」
『帝国兵と騎士では何が違うの?』
リサは疑問を問いかける。
またも即座にシルフィーが答える。
『まず階級が違いますわ。歩兵・ 兵士、衛兵・闘士・騎士・聖騎士・勇騎士の順となります 』
「その通りだよ。 わざわざ帝国騎士団の人間をここに配置してるって事はこのローズクラウンは帝国軍の配下になってるのかもしれない」
『えっ! そうなのお』
『アーサー様の言うとおりですわ。 まだ帝国とはかなり距離のあるローズクラウンに意味もなく騎士を配置するあたり何か理由があるのですわ』
「この前、ミランダが参加していた帝国議会で何かあったに違いない。俺らの指名手配だけでなく帝国が有利になる何かがね」
『ーーですわね。 何にしても余り出歩かない方が良いですわ』
『何言ってるかわかんないの』
首を傾げているエルザの姿が目に浮かんだ。
ーー 再びローズクラウンに夜が訪れるーー
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる