三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

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第2章: 三人の精霊と俺の魔導書【グリモワール】

闇の情報屋

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薄暗い店内にいくつか置かれた照明ランプが異様な雰囲気を出していた。店内には客はいるが時折会話をする程度で静まり返っていた。

『・・・何だか少し怖い雰囲気ね』
リサがリンクテレパシーで話しかける。

アーサーは、店内を見回すとある男に目に止まったーー男は、チューリップハットを被っていて薄暗い店内でも分かるほど見窄みすぼらしい格好をしている。一見ただの酒呑みのオッサンのようにも見える。

『あの人が情報屋?なの』

エルザが問いかけてきた。

「分からない・・・話かけてみるよ」

ゆっくりとカウンター席の右隅に座っている男に声をかけてみる。

「あの・・・こんばんは」

「・・・・・・」

「隣宜しいでしょうか?」

「・・・・・・」

男はこちらに見向きもせずただグラスに入った氷を見つめてはチビチビと酒を飲んでいた。

『アーサー様、本当にこの人が情報屋なの?ただの酒呑みのオッサンじゃない』
リサが少し不機嫌そうに声を荒げた。

アーサーは、隣の男と何するわけでもなく黙ってただ時間が過ぎていったーー

ーーーやがて店内にはアーサーと隣の男だけになった。

「・・・何の用事だ?」

「えっ?」

「情報が欲しいんだろ?」

「なぜそれを・・・」

「ハハ、俺に近づいて来る奴は大抵がそれが目的だ。ただ、俺の情報料はちと多額たかいぞ」

「それは肝に銘じてますよ。報酬は弾みます。俺が欲しい情報は反帝国軍バンディッツに関してです」

情報屋の顔付きがみるみる変わる。

「ーーお前帝国軍の関係者か?」

「いえいえ違いますよ」 

両手を前に出して首を左右に振るアーサー。

「ーーじゃなきゃなぜバンディッツの情報が必要だ? 嘘をつくな!!マスター!」

店の奥からBARのマスターが現れるや否やナイフ片手にアーサーの背後にまわる。

「怪しいとは思っていたよ。店に入ってきても酒の一滴も飲まないんでね」

「いや、だから本当に俺は帝国とか関係なく・・・」

「怪しい奴め、口を塞いでやる!」

情報屋も隠し持っていたナイフを取り出しアーサーに向けて構える。


「アーサー様のピンチ!!」
「アーサー様には指一本触れさせないの!」
「私たちにお任せ下さいませ!!」

アーサーの中から三人の精霊が具現化して飛び出して来た。

これを見た情報屋は目を丸くするーー

「さ、三体の精霊・・・まさかアンタがあのペンドラゴン家の・・・・・・」

情報屋の手に持っていたナイフを床に落とし鉄の音が静かな店内に響いた。

「どう言うことだ? 俺にも説明してくれ」
店のマスターが情報屋に尋ねる。

三人の精霊は、訳が分からず顔を見合わせる。

アーサーは、揉め事にならなかった事にホッと一息胸を撫で下ろした。
揉め事で大惨事ともなれば確実に帝国軍の御厄介になるところだったからだ。




「いやいや、悪かったな。 バンディッツの情報を知りたい奴なんて大抵ロクでもない奴か帝国軍関係者だけなんでね、いつも警戒していたんだよ」

「そうだったんですか」

「まさか君があの三人の精霊を操る有名なアーサー・ペンドラゴンだとは思わなかったよ」

「・・・俺はそんな人に誉められるような人間じゃないです」

「何いってるんだよ。実際、円卓の魔導士達とデーモンズゲートを封印したじゃないか」

「ま、まあ・・・」

「おいおい、それくらいで。そろそろ教えてやれよ」

マスターが気の毒そうなアーサーの心情を察した。

「ああ、そうだった。バンディッツに関しての情報だがここが拠点アジトだ」

「えっ?」

アーサーは鳩が豆鉄砲でも喰らったかのように目を丸くした。

マスターが店の奥の方を指差しながら、
「ここから地下に通じる階段がある。その先に彼等がいる。俺らはここの門番みたいな者だよ」

「アーサー様行ってみよ」

リサが一目散に店の奥の方に飛んで行った。

「うん。 あっ、これをーー」

アーサーはカウンターテーブルに分厚い封筒を置いた。

「ガハハ、いらねえよ! 世界を救った英雄から金を取れるかっての」

「いや、でも・・・」

「じゃあ、酒代だけ貰っておくかな」

分厚い封筒から札を一枚だけ抜き取ると封筒をアーサーに投げつけた。
アーサーは慌てて封筒をキャッチする。

「アーサー様早くなの!!」

遠くの方からエルザの声が聞こえた。

「早く行ってやれ、可愛いおチビさん達が待ってるぜ!」

「ありがとうございます」 

アーサーは慌てて頭を下げると店の奥へ足早に去って行ったーー

情報屋は、アーサーの姿が見えなくなると席を座り直し一息ついた。

「ふうっ。 マスター酒くれよ、コレで飲み直しだ」

アーサーからの報酬の札をテーブルに置いた。


☆  ☆  ☆

そこは何もない空き部屋で酒樽が二つ置いてあるだけだった。

「どうなってるの? 誰もいないし行き止まりだよ」

リサはあちこち飛び回り入り口を捜す。

「隠し扉とかになってるんだわ。 帝国軍から身を隠すアジトですもの」

シルフィーは眼鏡を押さえながら地面を探る。

「ーーだろうな。 どっかに仕掛けか何かあるかもしれない」

アーサーもキョロキョロと辺りを捜す。

「ふにぃ、エルザ眠いの」

エルザはふらふらと大きなあくびをしながら酒樽の上に座り込んだ。
そのままエルザが酒樽の上で寝転がると天井にロープが垂れ下がっているのが目についた。

「アーサー様、あれなんなの?」

アーサーはエルザの指差した先にあるロープを引っ張ってみる。

ガコンと音がしたと同時に地下に通じる隠し階段が地面に現れた。

「よく見つけたなエルザ」  

アーサーがエルザの頭を撫でた。

エルザは顔をくしゃくしゃにしながら満遍の笑みを浮かべた。

階段を下りた先にはBARの地下とは思えない程の広い空間が広がっていた。

アーサーと三人の精霊はゆっくりと奥に進むと広間らしき空間になり男が二人座っていていかにも待っていた様子でこちらを見ていた。

アーサーは緊張の面持ちでゆっくりとその二人の元に近寄って行った。

「やあ、話は聞いているよ。ようこそ反帝国軍バンディッツへ」


ーー  二人の男の正体は・・・ ーー
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