ショートショートホラーミステリー小説集

キタさん

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便利な世の中は死を招く

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「えーっとね、今や人間の姿をしたロボットが活躍するといったように、全く便利になったものだけど、今年は西暦2×××年だから、まぁ、今は昔ってやつでさ、それもかなり昔、この先に古びた小学校があるんだけどね、その学校に通っていた女の子が縄跳びをしながら帰宅していたら、途中で転んで縄が首に巻きついちゃって、死んじゃったんだって……それでね」

「うわーっ!」

私は飛び退いた。

ここは同じ女子高に通う友人宅で、その友人曰く、まぁ、いわゆる怪談話を聞いていたのだが、本題に入る前に部屋の外から別の友人が大声で入ってきたので、驚いたという訳だ。

実は、外から入ってきた友人は初めから仕込み要員で、ドアに耳をへばりつかせて、私をびっくりさせるタイミングを伺っていたようなのだが、あまりにも早い登場に、家の主たる友人は呆れ果てていた。

「もう、まだ早いわよ!まぁ、彼女、びっくり仰天してくれたから、良しとするけど、何かつまらないなぁ」

私は友人の仏頂面にクスクスと笑ったが、外から入ってきた友人は……真っ青な顔をしていた。

「……私もまだ早いと思ったんだけど、あ、あ、あ……」

キィー……閉まっていたドアがゆっくりと開いたかと思うと、シュッシュっと鳴る音が響き、誰かが縄跳びをしながら入ってきた。

すると、偶然、主人たる友人が大事にしていた洋服ダンスの上に飾ってあった陶器のフランス人形に縄が当たってしまった。

バリーン……見事に人形は落下し、粉々に砕けてしまい、見るも無惨な姿に変貌していた。

縄跳びをしていたのはどうやらおさげ髪のほっぺの赤い女の子らしかった。

女の子は縄が人形に引っかかってしまった拍子に仰向けに倒れたのだが、家の中は薄暗かったので、表情は分からなかったものの、痛い!との怒鳴り声は聞こえた。

突然、謎の女の子が現れたので、肝を潰してしまい、腰が抜けた状態になってしまった部屋に入ってきた友人を私は介抱しようとすると、今まで聞いたことの無い奇声を上げて、主人たる友人が縄跳びの女の子に向かって、罵詈雑言を浴びせかけた。

「ねぇ、このクソガキ!この人形はね、フランスの高名な彫刻家が作った、それは高い値段の品物なのよ!それをよくも壊してくれたわね!弁償しなさいよ!うーん、腹が立つ!エイ、もう、こうしてやる!」

主人たる友人は落ちていた縄をつかんだかと思うと、倒れた女の子の首に巻きつけ、思い切り絞め上げた。

私や部屋に入ってきた友人は女の子よりも怒り心頭の主人たる友人に恐れおののいたが、友人が人形のことを命の次に大事な物と言っていたのを思い出し、仕方ないとも感じた。

グヘッ!

縄で首を絞められた女の子は悲鳴を上げたが、主人たる友人を止めることはまず出来そうになく、私と部屋に入ってきた友人はただただ凝視しているだけだった。

そして、思い切り目を光らせて、大粒の汗をダラダラと垂らしながら、主人たる友人は縄を緩めることは無かった。

やがて、女の子は全く動かなくなり、主人たる友人がやっと手を離したので、縄は解き放たれた。

すると、部屋に入ってきた友人は今度は一目散に部屋から出て行き、私は主人たる友人をじっと見つめた。

私の視線に気付いたのか、主人たる友人はウフフと笑って、再度、床に落ちていた縄をゆっくりと拾い上げた。

そして、倒れている女の子を軽々と片手で起こすと、額にかかる髪の毛をどかし、その下にあるボタンを押したかと思うと、瞬く間に女の子は縮まってしまった。

「彼女、逃げちゃったのね……私の演技も凄かったでしょ?……あなたは縄跳びの女の子がロボットだって気付かなかった?」

私は首を横に振り、逃げ出した友人を可哀想に思っていると、突然、逃げ出した友人が戻ってきて、手には大きな斧が握られていた。

キャーッ!

私と主人たる友人が声を上げたのも虚しく、斧は次々と振り下ろされた。

グヘッ!と私。

グヘッ!と主人たる友人。

そして、私たちは意識を失った。



「あー、こんな遊び、つまらないなぁ!」

そう言って、私は斧で頭がズタズタになった2体のロボットの額ボタンを押し、縮ませた。

様々なシチュエーションを作って、連日私は所有する3体のロボットと戯れていたが、そろそろ飽きてきた。

ちなみに今日の私は、逃げ出した友人役。

他の3体に演じさせたのは、それぞれ女の子と主人たる友人と「私」だった。

そして、晩御飯を食べに、食堂に行くと、お母さんが倒れていた。

あ、いけない、だけど、ロボットって、3体以外にもいたんだっけ?……ん?あらら、ロボットだと思って、トンカチで頭を強く叩いてしまった相手は、何と、本当のお母さん!

まぁ、いいや、ロボットにお母さんに扮して貰えばいい話だから……。

いつからか、ロボットの後頭部の刺し穴に、例えばAという人物の情報の入ったUSBメモリーを挿入すれば、外観も内面もAそっくりなロボットが出来上がるという、便利な技術が開発された。 

そして、ロボットは何度壊してもまた再生するから、コストもかからない。

ちなみに、フランス人形が壊れる音と似た音を録音しておいたものを流すように設定し、人形は陶器製に見せかけていたが、実は私が粘土で作ったまがい物だった。

と、私はハッとなり、手を叩くと、部屋に戻り、底の深い机の引き出しを開け、数百はあると思われるUSBメモリーをまさぐり始めた。

そして、ロボットと勘違いして、殺してしまったお母さんの体をバラバラにして山奥に埋めるべく、3体のロボットに私が付き合ってきた3人のマッチョ男子の情報を流し込んだのだった。

お母さん、また会おうね……私はマッチョ君らがせっせとお母さんを解体しているのを見て、お母さんを埋めた後、ロボットにお母さんの情報をすぐインプットさせようと思った。

好きな人間を間違えて殺めてしまっても、またロボットとなってよみがえらせることが出来るし、本当、便利で、心に優しい世界になったものだとしみじみと感じつつ、部屋のベッドの上で横になりながら、じゃあ、誰か殺っちゃおうかとほくそ笑む私がいた。





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