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七十八話 初級魔法ですら異常だった
しおりを挟む「はぁーーー!」
声を上げながら魔族に切りかかる女性、勿論瑞希だ。そして、瑞希の攻撃を防ごうとする魔族。だがその行動は瑞希に対しては無意味で簡単に切り裂かれた。
「次!」
そう言って瑞希は次の魔族へとそこら中にいる魔物を倒しつつも向かっていく。
敵の数は数百体といるが、瑞希が押されている様子はない。別に敵が弱いからという訳では無いのに、だ。それだけ瑞希は十分に強い。
「数多すぎじゃない?」
疲れている訳では無いが、瑞希はそう呟いた。流石に多すぎて面倒なのだろう。
「涼太早く来てー!」
瑞希はそう叫ぶのだった。
*
「瑞希が助けを求めてる!」
涼太がいきなりそんなことを言った。涼太には瑞希の声が聞こえたのだ。ただエリスには聞こえていないので、こいつは何を言ってるんだ?とでも言うような目で涼太を見ている。だが涼太はそんなことは気にもせず、まずは瑞希の位置を確認する。そして、確認が終わったあと、
『ファイアボール』
とただの初級魔法を唱えるのだった。ただ異常な魔力で作られたファイアボールだ。ただの初級魔法ではない。
ただそんなこと涼太は気にしていない。
「もう1発『ファイアボール』」
1発でも十分であろうファイアボールをもう一度放った涼太。そして、そのファイアボールによって殆どの敵は殲滅されたのだった。
*
「魔王様!魔法が飛んできます!」
「ただの魔法だろう?」
「いえ、それが…」
異常な魔法です、と言おうとしたが魔王に睨まれてしまい発言できなくなる魔族。
これ以上言うと殺すぞ?とでも言うように。何故なら人間の使う魔法など効くわけがないと思っているからだ。それなのに何度も言われるのは鬱陶しいと思っているのだ。
そう、魔王は油断しているのだ。そして、そんな魔王の元に人間が放った魔法が届く。
「なんだ、これは?」
急いで防御魔法を張る魔王。だが、間に合わない。
「なんなのだ、この魔法は…」
そう呟きながら、魔王はファイアボールの中に飲み込まへていったのだった。
*
自分の上を通った火球を見て、瑞希は後ろを振り返った。
「涼太!」
振り返った先には涼太とエリスがいる。瑞希は近くにいる敵を倒しながら二人の元へと走りよった。
「今の魔法、助けてくれたんだろうけど、私に当たったり、周りに被害が出たらどうするの!」
「そこはちゃんと考えてやってるよ」
涼太はそういったあと、説明を始めた。
簡単に言うと、敵の位置を把握して、敵だけに当たるように魔法を撃ったんだそうだ。ただ瑞希の近くの敵は瑞希に当たるとダメだから、と倒せていなかったらしい。
「まあ、考えてくれてたならいいけど」
俺の説明を聞いて、納得した瑞希。
こうして、大量の魔族は殲滅されたのだった───。
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