53 / 120
27-1 お披露目へ
しおりを挟む「あー、ハハ、ま、色々あってね。速攻でやっちゃった訳だ」
「やっ……」
兄弟のそういう話は聞きたくねー……そう乾いた笑いを浮かべていると、リョウはニヤッと笑った。
「兄貴はやたらと時間がかかったんだなぁ。ま、兄貴のことだから色々細かいこと考えてたんだろうけど。よくあの重い奴がそんな長い時間我慢したな」
「うっ、い、いや、だって、異世界なんかに行くのに、色々処理しないといけないことがあるだろうが! お前だって仕事は!? 家はどうしたんだよ!? そもそも俺に連絡しろよ!!」
「あー、仕事はちょうど退職したところだったし、家も引き払って荷物は実家に送ったところだったんだ。連絡する間もなくやっちゃったもんでね」
「は!? 仕事辞めたってなんでだよ!?」
「あー、まあかなりのブラックだったもんでね。身体壊しそうになったから逃げた」
「そ、そうなのか……お前が過労死とかならなくて良かったけど……」
「うん。ま、そういうことでそっちに帰ろうかと思ってたときに、あいつが落ちてきた」
そう言ってチラリとジェイクを見たリョウ。ジェイクは未だにジウシードとやいやい言い合っている。ハハ。
「んで、喧嘩になった」
「は?」
「そんで、売り言葉に買い言葉で……まあ、やっちゃった訳だ」
「…………」
そんなんでいいのか!! 選定の儀!!
「売り言葉に買い言葉って……そ、そんなんでお前……その……い、入れ……ごにょ」
「ん?」
そんな喧嘩腰に「じゃあやったらぁ!」みたいなノリで掘られるってどうよ!? 男としてそこはこだわったほうが良いんじゃないのか!?
「お、お前はその……良かったのか?」
「んん? なにが?」
「い、いや、その……お、男の沽券とかさ……」
俺はまあ見た目的にも性格的にも、お世辞にも男らしいとは思われないタイプだが、リョウは違う。精悍なイケメンの上に、気が利いて優しく、性格もサバサバしていて男らしい。しっかり者だし頭もいい。両親が死んだときにまだ高校生だったリョウが、取り乱すこともなく冷静に色々対処してくれていたから、俺も哀しみに暮れることなく生きてこられた。
そんなリョウがまさか掘られるなんて思ってもみなかったし……。女子にもモテモテだったしな……。
「男の沽券……」
そんなことを悶々と考えつつチラリと視線をやると、目を見開き驚いた顔のリョウはプッと噴き出した。
「ま、まさか、兄貴……ブフッ……俺が掘られたと思ってんのか?」
笑いを堪え切れないといった様子で、小刻みに肩を揺らしながら言った。
「え!? ち、違うのか!?」
「あ、もしかして兄貴は……ま、そりゃそうか。あれが相手じゃな」
チラリとジウシードに目をやったリョウが苦笑した。そして再び俺を可哀想な奴を見るような目で見る。その意味が分かり、カァァアと顔が熱くなる。
「い、いや、え!? お、お前は違うの!? あんないかついジェイク相手に!?」
「フッ。俺が黙って抱かれると思ってんのか? あれはアホだからな。言い負かした」
「えぇぇ!?」
まさかのジェイクが抱かれる側!? ま、マジで!? あんな顔して!? あ、あんないかつくてデカくて俺様みたいな顔して!? い、いや、偏見か? そもそも入れるのがどっちでも良い訳!? ん? でもそういやジウシードが一瞬悩んで……はないが、「俺は入れたい」とか言ってたっけ? どっちでも良かった訳か……いや、今はまあそんなことどうでもいいんだが……。
あまりの信じられない気持ちでまじまじとジェイクを見詰めてしまい、それに気付いたジェイクがこちらを睨んだ。
「なんだこら! なに睨んでやがる」
「え、い、いや、睨んでないし!」
逆に睨まれ、あまりの鋭い眼にひぃぃとなる。こ、怖いわ!! この顔で抱かれてるとか全く想像出来ん!
55
あなたにおすすめの小説
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる