【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき

文字の大きさ
78 / 120

39-2 馬鹿を好きな馬鹿


「なんでだよ!! お前が俺を避けていたくせに!! それがどれだけ辛かったと思ってんだ!! お前なんか大嫌いだ!!」

 泣いた。声を上げて泣いた。今までずっと我慢していたものを吐き出すかのように、ジウシードの背中を殴った。しかし、いくら拳を叩きつけようとも、ジウシードはびくともしなかった。

「離せよ!! 離せ!! お前なんか大嫌いだ!! 離せ!!」
「アキラ!! アキラ!! すまない……お前に嫌われても仕方ない……でも……お前が俺を嫌いでも……俺はお前を愛している……」
「!? 嘘だ!!」
「嘘じゃない……愛してる……愛しているんだ……」

 ぎゅうっと苦しいほどに抱き締められる。触れる身体から響く声。震える身体。それが本心であることが伝わる……伝わるのだが……でも……まだ信じられない思いもある……。

「じゃ、じゃあなんで避けてたんだよ……」

 もう抵抗する気持ちはなかった。ただ抱き締められているだけ……しかし、いまだ半信半疑であることに変わりはなく、ジウシードの本心を聞きたかった。

「ちゃんと話して。話してくれないと分からない。お前がなにを考えていたのかを教えてくれないと俺には分からないから怖い……」
「あぁ……すまない……」

 震える身体のまま、ジウシードは腕の力を緩め身体を離した。俯いたままのジウシードの表情ははっきりとは見ることが出来なかったが、泣きそうな顔になっているような気がした。

 そしてベッドに並んで座り、ジウシードは膝の上で拳を握り締め話し出す。

「今回、お前が襲われたことに対して、ちゃんと謝罪をしたい……母がしたことは許されることじゃない……本当に申し訳なかった……」
「……うん」
「母がしたことは許せない……許せないのだが、それは俺のせいでもある……」
「? ジウシードのせいじゃないだろ?」

 キョトンとしていると、ジウシードは俯きながら首を横に振った。

「いや、俺のせいだ……俺が母を放置していたから……あの人の俺に対する執着を知っていたのに、お披露目のときに現れて、それだけで済むはずがないことを分かっていたのに……そのまま放置してしまった……だから俺のせいだ」
「…………」
「俺のせいでアキラはあんな目に遭い、下手をすると死んでいたかもしれない……傷付けられた挙句に殺されていたかもしれないなんて……」

 ジウシードはそう言いながら両手を握り締め震えていた。顔はますます俯き、握り締める両手に額を付け、完全に項垂れてしまった。

「俺の伴侶なんかにならなければ、アキラは今も日本で平和に暮らしていたはず……命の危機なんかに晒されることもなく生きていけたはず……俺の伴侶なんかにならければ……なにもかも俺のせいだ……俺がアキラの人生を狂わせた……」
「ジウシード……」
「お前に申し訳なく思いながら、しかし、それをお前に悟られるのが怖かった……「お前のせいで人生がめちゃくちゃになった」と、お前自身にそう言われるのが怖かった……結局俺は自分がそう言われるのが怖くて逃げていたんだ……情けない……すまない……お前に嫌われるのが怖くて逃げた挙句、結局嫌われているのだからな……本当に俺は馬鹿だ……」

 顔を伏せたまま、ジウシードは自嘲気味に笑った。

「ジウシード……」
「…………」
「こっち見ろ」

 なるべく冷静に、と思い声を掛けたら、どうやらかなり低い声が出ていたようだ。ジウシードはビクリとし、項垂れていた顔をそろりと上げた。
 デカい身体のくせに、その顔はまるで怯えた仔犬のようで、思わず笑いそうになってしまった。あぁ、やっぱり俺は……ジウシードが好きだよ……

「ほんと馬鹿だよな」

 睨むように言うと、ジウシードは明らかに目が泳ぎ、涙目になり出した。その姿が可笑しくて、可愛くて……でも……ジウシードを恨んでいたと思われていたことが悔しくて……憎くて……。
 こんな馬鹿を好きな俺も、相当馬鹿なんだろうな、と笑った。

「お前は馬鹿だ」
「うっ……あぁ、その通りだ……」
「俺の人生を思い切り狂わせた」
「あぁ」

 ジウシードは泣きそうな……いや、泣いてるな。今にも零れ落ちそうなほど、目に涙を溜めながら必死に耐えている。

「俺は自分一人でそうやって考え込んで決め付けるお前が大嫌いだ」
「ア、アキラ……」

 ジウシードの綺麗な金色の瞳から、ボロリと大粒の涙が零れ落ちた。そして一度零れ落ちた涙は、まるでダムが決壊するかのように、ダバダバと次から次へと涙を落とす。

「アキラ……アキラ……許してくれ……」

 あまりの泣きっぷりに笑いそうになってしまうが、必死に耐える。俺の想いもしっかりと伝えたい。


感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

【完結】おじさんダンジョン配信者ですが、S級探索者の騎士を助けたら妙に懐かれてしまいました

大河
BL
世界を変えた「ダンジョン」出現から30年── かつて一線で活躍した元探索者・レイジ(42)は、今や東京の片隅で地味な初心者向け配信を続ける"おじさん配信者"。安物機材、スポンサーゼロ、視聴者数も控えめ。華やかな人気配信者とは対照的だが、その真摯な解説は密かに「信頼できる初心者向け動画」として評価されていた。 そんな平穏な日常が一変する。ダンジョン中層に災厄級モンスターが突如出現、人気配信パーティが全滅の危機に!迷わず単身で救助に向かうレイジ。絶体絶命のピンチを救ったのは、国家直属のS級騎士・ソウマだった。 冷静沈着、美形かつ最強。誰もが憧れる騎士の青年は、なぜかレイジを見た瞬間に顔を赤らめて……? 若き美貌の騎士×地味なおじさん配信者のバディが織りなす、年の差、立場の差、すべてを越えて始まる予想外の恋の物語。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

救世の神子として異世界に召喚されたと思ったら呪い解除の回復アイテムだった上にイケメン竜騎士のツガイにされてしまいました。

篠崎笙
BL
剣崎勝利の家は古武道で名を馳せていた。ある日突然異世界に召喚される。勇者としてではなく、竜騎士たちの呪いを解く道具として。竜騎士ゲオルギオスは、勝利をツガイにして、その体液で呪いを解いた。勝利と竜騎士たちは悪神討伐の旅へ向かったが……。 

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。