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「知っての通り、国王にとってもイデアは邪魔だ。そのために多くの婚約者を用意する羽目になったのだから」
彼は続ける。
「だが、公認なのは途中まで。イデアを消すとこまでだ。そこからが俺たちの領域、犯人を誰にするかと言うところまでは知らない。国王には罪を誰に被せるかまでは説明していないからな。まあ、聞かれもしていない。これまでと同じように適当な役者をあてがうと思っているのだろう」
それでは、最終的なところで綻びが生じるのでは?
国王様の逆鱗に触れるのでは、
と私は思う。
だが、話の腰を折るべきではないと判断し、黙って聞くに徹する。
彼の話に、計画を一旦は全て聞くことにする。
いや、一旦、ではないのか。
ここに来た時点で、この男の思惑に沿うしかない。
出来ることは、限られている。
大筋を曲げない、微調整くらいなものだから。
「そして、それをこの国全土の公認の事実にする。衆人環視の元で、奴が殺したとしか思えない状況を作り出す。汚れた王子は国王にはなれない。ただ、王族は王族、粗末にはできない」
アンドレアル様は私を指さした。
大仰に。
「ーーそこで受け皿が私、ということですか」
王になれない、悲しい王子にするということか。
状況としては、今のアンドレアル様と同じ。
だが、罪が付与されれば違う。
高嶺から落下する。
それを私が受け止める。
……けれど、そう簡単にうまくいくだろうか。
確かにその手法であれば、あのお方を手中に収めることはできる。
だが、王子としてのーー政治的価値を失ったあのお方を、お父様はどうするだろうか。
そもそも、衆人環視下とはいえ、国王様がその事実を受け入れるだろうか。
国王様にとってはイデア様がいなくなればそれで十分。次期国王にしたいあのお方の罪は何がなんでも揉み消すと思うけれど。
12人もの婚約者を用意するほどの溺愛ぶりだ。
衆人環視のその衆人たちを黙らせるくらい、やってのけると思うけれど。
けど、言わない。
私は黙る。
「その通り。遠く離れた箱庭でゆっくりと静かに幸せになるといい。それに足る金や人は工面してやる」
満足そうにアンドレアル様は言う。
穴だらけに思える計画を。
席から立ち上がり、てくてくと私の方へと近づいてくる。
「だが、話は簡単じゃない。まずはあいつがどうなっているか見に行こう」
言いつつ、彼は私の手を取ろうとした。
反射的に振り払う。
不敬とは思う。
だけど、考えるよりも先に手が動いたのだからしょうがない。
「ーー寂しいねぇ、そこまで弟にぞっこん、という訳か。まあいい、恋愛感情なしの利害関係のみの方が上手くもんだ」
不快そうな顔を見せつつ、私に同行を求める素振りをする。
今度は私から離れて。
「俺は第一王子、本来は王になる男。それぐらいの我儘、通せない訳がない」
台詞のように彼は言う。
考えていたのだろうか。
だけれど、先のやりとりで台無しである。
とってつけたようなみっともなさが漂っていた。
彼は続ける。
「だが、公認なのは途中まで。イデアを消すとこまでだ。そこからが俺たちの領域、犯人を誰にするかと言うところまでは知らない。国王には罪を誰に被せるかまでは説明していないからな。まあ、聞かれもしていない。これまでと同じように適当な役者をあてがうと思っているのだろう」
それでは、最終的なところで綻びが生じるのでは?
国王様の逆鱗に触れるのでは、
と私は思う。
だが、話の腰を折るべきではないと判断し、黙って聞くに徹する。
彼の話に、計画を一旦は全て聞くことにする。
いや、一旦、ではないのか。
ここに来た時点で、この男の思惑に沿うしかない。
出来ることは、限られている。
大筋を曲げない、微調整くらいなものだから。
「そして、それをこの国全土の公認の事実にする。衆人環視の元で、奴が殺したとしか思えない状況を作り出す。汚れた王子は国王にはなれない。ただ、王族は王族、粗末にはできない」
アンドレアル様は私を指さした。
大仰に。
「ーーそこで受け皿が私、ということですか」
王になれない、悲しい王子にするということか。
状況としては、今のアンドレアル様と同じ。
だが、罪が付与されれば違う。
高嶺から落下する。
それを私が受け止める。
……けれど、そう簡単にうまくいくだろうか。
確かにその手法であれば、あのお方を手中に収めることはできる。
だが、王子としてのーー政治的価値を失ったあのお方を、お父様はどうするだろうか。
そもそも、衆人環視下とはいえ、国王様がその事実を受け入れるだろうか。
国王様にとってはイデア様がいなくなればそれで十分。次期国王にしたいあのお方の罪は何がなんでも揉み消すと思うけれど。
12人もの婚約者を用意するほどの溺愛ぶりだ。
衆人環視のその衆人たちを黙らせるくらい、やってのけると思うけれど。
けど、言わない。
私は黙る。
「その通り。遠く離れた箱庭でゆっくりと静かに幸せになるといい。それに足る金や人は工面してやる」
満足そうにアンドレアル様は言う。
穴だらけに思える計画を。
席から立ち上がり、てくてくと私の方へと近づいてくる。
「だが、話は簡単じゃない。まずはあいつがどうなっているか見に行こう」
言いつつ、彼は私の手を取ろうとした。
反射的に振り払う。
不敬とは思う。
だけど、考えるよりも先に手が動いたのだからしょうがない。
「ーー寂しいねぇ、そこまで弟にぞっこん、という訳か。まあいい、恋愛感情なしの利害関係のみの方が上手くもんだ」
不快そうな顔を見せつつ、私に同行を求める素振りをする。
今度は私から離れて。
「俺は第一王子、本来は王になる男。それぐらいの我儘、通せない訳がない」
台詞のように彼は言う。
考えていたのだろうか。
だけれど、先のやりとりで台無しである。
とってつけたようなみっともなさが漂っていた。
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