虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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何が起こっているのだろう。
理解に苦しむ、
理解できない。

頭が認識を拒絶している。
私の存在がなかったことになっている。

一度湧き上がった嫉妬と怒りの炎。
それは思いのほか早く鎮火した。
じゅゅう、と水がかけられたような音が聞こえた。
それは私の心の内なのだろう。

限界を超える、
一周回る、
振り切る。
私は冷静を取り戻すことに成功した。
いや、ただそう感じているだけかもしれない。
容量以上の情報を強引に詰め込まれ、故障しているだけなのかもしれない。

私はいつも通りの私と、
狂った頭で。

「イデアーー」

「……カストリア、……っ、……ああ」

服こそ脱いでいないが、二人は抱きしめ合い、唇を重ねていた。
椅子に座るイデア様に、覆い被さるようにして。
指を絡めたり、首に手を回したり。
手を変え品を変え、いちゃつき始めた。

私の存在は完全に忘れられている。
置いてきぼりである。
何をしにきたのか、分からなくなる。

「イデア、ごめん、ごめんね。こんな風に会いに来てしまって」

「会える……だけでっ、……いいの」

少し前まで、自己紹介していた記憶はある。
私が少し他ごとを考えていた間に、この状況まで進展した。
二人はお互いを見つめて、
私を全く見ていない。
二人の世界、そこに入り込んだ異物、それが私だ。

声をかけることも、出すことも躊躇われる。
無言の聴衆であることを強いられる。
獣の交尾を見ている時と似たような感覚。

何もすることがない。
ただ呆然と、流れる景色を見ることしかできない。
いや、体は動けなくとも思考は自由だ。
何を考えようと、誰も私の頭の中までは除けない。
ーーまあ、この状況において、誰も私のことなど気にしていないのだけど。

落ち着いた頭で考えてみる。
私は、この人が好きなのだろうか。
自分に問いかけてみる。

「イデア、大好きだ」

「私……もっ」

全てを投げ出すほど好きなのだろうか。
自分の命を危険に晒す程に好きなのだろうか。

「愛してる」

「愛し……てる」

わからない、
分からない。

この人を、他人の前で恥じらいもなく性を貪るこの男のことを。
愛しているのだろうか。
愛していたのだろうか。

「イデア!」

「カスト……リア!」

分からない。
分からない。
分かりたくもない。

もう、どうでも良くなった。
ここで終わってもいい気がした。
計画もどうでもいい。
頑張る意味がない。
早いか遅いか。
私は、私を手放した。

何も考えず、気の向くままに。
思うがままに、体の操作権を手放した。
私は、全てを投げ出した。
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