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「公爵家令嬢リトア=エーテルザットと第二王子カストリア=リンドブルムとの婚約、この場、現時刻をもって破棄させていただく」
台詞のように、淡々な口調で告げられる残酷な言葉。
合わせることの、舞い散る紙吹雪。
濃いインクで綴られた、二人の名前。
バラバラに宙に浮かんで、
二度と寄り添うことはない。
連れられた法廷、
私は罪人のようにーーというか罪人扱いなので当然であるけれど、
逃げられないよう拘束された状態でその言葉を聞いていた。
見覚えのある、心の支えとも言える、婚約の契約書。
あれがあのお方自身の手でばらばらに引き裂かれる様は、それこそ私にとっての罰だった。
まるで身を引き裂かれるような、
きっと、この手を何者かに貫かれた時よりも激しい痛みだろう。
ーー覚えてないけれど。
けど、
分かっていたのだ。
最初から分かっていた。
所詮私は数ある婚約者の中の一人。
それも、上位ではなく、下位の。
加えて、あのお方の一番は確定していた。
どうしようもないほどに、確定していた。
それに、
イデア=リンドブルム。
虚弱で大人しい、あのお方の姉君。
その血縁から結ばれることは許されない。
だけれど、想い合うだけなら許された。
こうして、王族殺傷の濡れ衣を着せられなくても、別の形でこの終わりに行き着くことは分かっていたのだ。
ただ、
ただ目を背けていた。
見ないようにはしていた。
それだけの話。
周囲もいつかは、姉君との恋を諦めると思っていただろう。
同じ婚約者の身分であり、良き友人であるペコットでさえそうだった。
別の恋を見つけた方がいいと。
私も期待していた。
待っていれば、いつか私にも心を映してくれる、と。
そのためには手段を選ばず、とにかくあのお方のそばにいられるようにと努力した。
一度、この荊の道を選んだからには他の選択肢はなかったのだけれど。
逃走は許されず、
闘争するしかなかった。
綺麗に、或いは汚く。
裏で、或いは表に。
ーーだけれど、結果がこの状況だ。
婚約は破棄され、死罪の執行待ち。
けど、恋心というのはなかなかどうして、厄介だ。
紙切れ一枚で繋ぎ止めれた関係が、
言葉一つでなかったことにされるなんて。
納得できる訳がないのだ。
あのお方の気持ちがどうであろうと。
こちらの想いに変わりはない。
過去も今、きっとこれからも。
「あの……お願いですーー」
私の口が動く。
言葉を紡ぐ。
諦めれきれないと、
まだ終われないと。
「どうか、どうか、その言葉をーー」
願い、
祈り、
叫ぶ。
「撤回して……いただけないでしょうか!」
私は懇願した。
惨めったらしく。
命乞いの言葉より、
逃走の算段のための言い訳よりも。
あのお方との関係の維持を求める言葉が先に出た。
台詞のように、淡々な口調で告げられる残酷な言葉。
合わせることの、舞い散る紙吹雪。
濃いインクで綴られた、二人の名前。
バラバラに宙に浮かんで、
二度と寄り添うことはない。
連れられた法廷、
私は罪人のようにーーというか罪人扱いなので当然であるけれど、
逃げられないよう拘束された状態でその言葉を聞いていた。
見覚えのある、心の支えとも言える、婚約の契約書。
あれがあのお方自身の手でばらばらに引き裂かれる様は、それこそ私にとっての罰だった。
まるで身を引き裂かれるような、
きっと、この手を何者かに貫かれた時よりも激しい痛みだろう。
ーー覚えてないけれど。
けど、
分かっていたのだ。
最初から分かっていた。
所詮私は数ある婚約者の中の一人。
それも、上位ではなく、下位の。
加えて、あのお方の一番は確定していた。
どうしようもないほどに、確定していた。
それに、
イデア=リンドブルム。
虚弱で大人しい、あのお方の姉君。
その血縁から結ばれることは許されない。
だけれど、想い合うだけなら許された。
こうして、王族殺傷の濡れ衣を着せられなくても、別の形でこの終わりに行き着くことは分かっていたのだ。
ただ、
ただ目を背けていた。
見ないようにはしていた。
それだけの話。
周囲もいつかは、姉君との恋を諦めると思っていただろう。
同じ婚約者の身分であり、良き友人であるペコットでさえそうだった。
別の恋を見つけた方がいいと。
私も期待していた。
待っていれば、いつか私にも心を映してくれる、と。
そのためには手段を選ばず、とにかくあのお方のそばにいられるようにと努力した。
一度、この荊の道を選んだからには他の選択肢はなかったのだけれど。
逃走は許されず、
闘争するしかなかった。
綺麗に、或いは汚く。
裏で、或いは表に。
ーーだけれど、結果がこの状況だ。
婚約は破棄され、死罪の執行待ち。
けど、恋心というのはなかなかどうして、厄介だ。
紙切れ一枚で繋ぎ止めれた関係が、
言葉一つでなかったことにされるなんて。
納得できる訳がないのだ。
あのお方の気持ちがどうであろうと。
こちらの想いに変わりはない。
過去も今、きっとこれからも。
「あの……お願いですーー」
私の口が動く。
言葉を紡ぐ。
諦めれきれないと、
まだ終われないと。
「どうか、どうか、その言葉をーー」
願い、
祈り、
叫ぶ。
「撤回して……いただけないでしょうか!」
私は懇願した。
惨めったらしく。
命乞いの言葉より、
逃走の算段のための言い訳よりも。
あのお方との関係の維持を求める言葉が先に出た。
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