虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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52.幕間

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死にたくない。
死にたくない。
どうして、俺が。
ここで、こんなところで終わるのか。
ただの不意打ちで、
ただの油断で、偶然で。

ありえない、
あり得ない。
俺は王になる男、
弟に幾ら敗北しようと、都度復活を繰り返してきた不死鳥。

まだだ、まだ終われない。
王に、玉座に座るまでは。
俺の戦いは終わらんーー

だが、
だが。
どうしたものか。
流石の俺もここで手仕舞いか。
流石の俺もこの傷では死ぬか。

終わりか、
終わりなのか。
受け入れるしかないのか、この敗北を。
弟以外にしてやられるのは、初めてだっただろうか。
というか、誰だあいつは。
名前も覚えていない。
いつも近くにいたが、存在感のない影のような男だった。
足元をすくわれる、とはこのことか。
前提として考えていなかった。
道具が裏切るとは。
刃が自らに向かってくるとは。
次の教訓にしないとな。

ーーいや、もういいか。
もう戦わずに済むなら、これで。
意外と面倒だし。
疲れるし。

けど、
けれど。
思えば随分と楽しい日々だった。
この身分でなければ、味わえない日々だった。
だからこそ、こんな終わり方なのだろう。
誰も彼も迷惑をかけ、駒扱い。
無駄に散らせた命は数知れず。

負けて負けての繰り返し。
予定調和の敗北祭り。
勝つつもりなんて、本当はなかったのかもしれない。
この過程がどこか面白くて、楽しんでいただけかもしれん。
本当の気持ちなんてものは誰にも、自分自身でも分からないものだろうから。

だが、敗北の痛みにはついぞ慣れなかったな。
今現在も苦痛に塗れているし。

あー、俺だけ死ぬのかな。
あの野郎、ついでに弟も殺してくれないかな。
であれば、勝負には勝ったようなものだ。
目的は果たせるのだから。

偶然に身を任せる。
らしくないことをしてしまった。
そもそも、計画の時点で綻びはいくつか見えていた。
だが、実行に移してしまった。
耐えられなかった。
何もしない、何も出来ないという状況が。
ゆっくりと終わるという流れが。

ーーそうだ、あの女。
あの女はどうなるだろう。
弟の大事な恋人に、
俺の妹をぼこったあの女はどうなるのだろう。

あぁ、残念だ。
あの女の末路を見れないのは残念だ。
楽しみだったのにな。
矛盾を抱えた行動の末に、どう壊れるのか。
この目でしっかり見たかったのにな。
残念だ、本当に。

ーーあぁ、
そろそろーー
限界ーー
みたいだ。

俺にはーー
相応しい最後、
ーーかもしれないな、結局。
装備だけ豪華なーー
負け犬。
それが俺ーー


次生まれ変わる時はーー
一人っ子がいいなーー
なんてーー
ーー都合が良すぎるか。

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