虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……

くわっと

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 この気持ちに気づいたのはいつだっただろう。
 最初は、一緒にいて楽しいとか落ち着くとかその程度。
 そのうち、この子のために何かしてあげたくなるとか、そんな感情を抱き始めた。
 ーーあぁ、思い出した。
 彼女があの人のことを好きと言ってくれた時だ。
 目を輝かせながら、彼女は自身の惚れた相手もことを語った。
 どこか素敵で、何に惚れたか。
 聞いてもいないのに、一から十まで丁寧に語った。
 その姿も、私は好きだった。
 だって彼女は笑っていたから。
 私と一緒にいる時よりもずっと素敵な笑顔。

 そこで、私は思い至ってしまった。
 彼女を幸せにするのは、私でなくていいと。
 それに最適な人をあてがえばいいと。

 けれど、それは簡単なことじゃない。
 彼女が惚れた相手は王族、いくら身分が高くても様々な要因で破談になりかねない。
 幾重にも、十重二十重に準備はしないといけない。
 努力しないといけない。
 好きな人が、私じゃない誰かと結ばれるために。

「健気なものだねぇ。女同士の恋愛、俺は別に否定はしないが、荊の道だと思うが」

「それはお互い様だよ。君の方こそ、優れた弟の扱いに困っているのだろう? そこは助けあいでいかないかい?」

「ーー全く、口がうまいね。あの小娘もあんたみたく小賢しく生きられれば、いいだろうがな」

「不器用なところが、リトアの良さでもあるんだよ。じゃあ、アンドレアル。首尾は任せたよ」

「第一王子を呼び捨て、そのくせ駒の一つとして扱うとはーーまあいい、こっちにも益がある話だからな。多めに見てやるよ」

「それはありがたい。今後とも、ご贔屓に」

 彼女の幸せのためなら、
 彼女の笑顔のためなら。
 私は何だって利用する。
 
 ……あぁ、これじゃあ私もあの人のこと、馬鹿にできないな。
 リトアのために、
 リトアだけのために生きてる。
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