華麗なる転生を遂げたのに、いきなり婚約破棄とか。

くわっと

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1章 転生と初めての婚約破棄

4.婚約者『候補』

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「アリシア=ラインバルトです。どうぞよしなに」

ふりふりのふわふわのスカートの裾を持ち上げて、挨拶をする。
これが正しい礼儀なのか知らないが、ノリでやるしかない。
可愛いは正義なのだから、この体で行う全てのことは正義と化すのだから、きっと問題ないだろう。

当のアルベルトも爽やかな笑顔を向けている。
うむ、問題なしだな。
私は彼に促されるままに席に着く
机は異様に長く、対面しているはずなのに彼の存在を物理的に遠くに感じる。
声が届かない距離ではないし、
相手の顔が見えない距離でもない。
きっと、近づき過ぎると暗殺とかそういった暴力的な行動を防止するためのこの世界独自の文化なのだろう。
とりあえず、そう受け止める。

「アリシアさんはお噂通りお美しいね」

「まあ、アルベルト様ったら、お世辞がお上手ね」

私の記憶にある貴族っぽい喋り方で対処。これも正しいかどうか分からない。
だが、可愛いは正義なのだからーー以下略。

「アルベルト様も、お噂通り端麗な外見をしていますわ」

「そうかな、僕は生まれた時からこうだったから分からないな」

その発言には少しカチンときた。
私の中の、美しい体の中の醜い心と記憶が音を立ててひび割れるのを感じた。
ーーいや、落ち着け私。
これが彼らの『普通』なのだ。
美しい生き物たちの『普通』。
彼らには醜く生きている時間がないのだから、過去の私の思いや考えなどに配慮できないのは当然なのだ。

「それで、アリシアさんは僕たちの婚約についてどう考えてるのかな?」

「どう、とは?」

アルベルトはふふっと微笑する。

「惚けなくてもいい。この婚約は政略的な意味合いしかない。僕と君のこれまでにはどちらも良家の血族、ということ以外関わりはないのだからね。君だってわかっているだろう」

「それは、まあそうですわね。では、私との婚約は本意ではないと?」

「そういうわけじゃない。君は若く綺麗だ。僕の婚約者『候補』として十分条件を満たしている」

アルベルトは『候補』という単語を強調して言った。
候補、それはつまり私意外にも彼の婚約者になりうる人間がいるということだ。

「アルベルト様、今のお言葉聞き捨てなりません。候補とは一体どういうことですか!?」

メノウの言葉にアルベルトはため息をこぼす。

「使用人風情が、僕らの会話の邪魔をするんじゃあない。僕は君とは話していない。そこにいるアリシア=ラインバルトと話しているんだ」

語気を強めるアルベルトに対し、メノウは「申し訳ありません」と俯く。
彼の使用人は変わらず薔薇の花びらを撒き散らしている。
撒き散らしては拾っている。
会話に参加することなく、自身の役目を全うしている。

「さて、アリシアさん、ここからが本題だ。君が婚約者『候補』から婚約者になるためのお話をしよう」

「その前に、一つ確認よろしいでしょうか?」

「どうぞ、何でも聞いてくれ。ここには君と僕しかいないのだから」

やはり、彼を残念系イケメンと判断した私の直感は正しかったようだ。
顔さえ良ければ政略結婚も楽しかろう、と考えていた自分が浅ましい。
こんなナルシスト野郎と一つ屋根の下ーー豪邸だろうから厳密には違うのだろうが、同じ領内で暮らすなんて息が詰まる。
せっかくのお嬢様という身分、
せっかくの神がかり的な外見を犠牲にするのは惜しい。
ならば、私が取るべき選択肢は一つ。
力関係をはっきりさせることだ。
奴の鼻っ柱をへし折り、アルバート家はラインバルト家には勝てないということを再認識させた上で婚約を成立させることだ。

「このことは、私のお父様とあなたのお父様はご存知なのでしょうか?」

「君のお父上は分からないが、少なくとも僕の父は知っているよ」

なるほど、なるほど。
そこさえはっきりさせれば十分だ。

「他に質問は?」

「ございません。先のお話の続きをお願いします。私が婚約者候補から、婚約者になるためのお話を」

蓬莱の玉の枝か、
火鼠の皮衣か、
燕の子安貝か、
さあさあ、難題を言ってみるといい。

「出会ったその日に婚約破棄とか、笑えない冗談ですからね」

と私は笑いかけた。
美を手にれた私にできないことなど、そんなにないのだから。
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