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1章 転生と初めての婚約破棄

10.お風呂の中のお嬢様

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ちゃぽん。
かぽーん。

お風呂の効果音としては的確かは分からないが、そんな音を奏でながら私は浴槽に浸かっている。
金持ちの風呂というのは凄い。
無駄に広い、
無駄にお湯が出ている、
無駄に装飾が多い。

無駄無駄無駄っ!
という感じである。
けれど、その無駄こそが心を優雅にしてくれるのかもしれないな、と浸かりながら思う今日この頃。

湯に反射する自身の姿にうっとりしながら、のんびりと時の流れを楽しむ。
自分の姿形が好き、ということはこんなにも素晴らしいことなのか。
こんなことならば、飛ぶ前に整形手術でも試せば良かったかもしれない。
そしたら、あの世界でも楽しく生きていられたかもしれない。
別の幸せを手に入られることができたのかもしれない。
もしかしたらーー

「失礼します、お嬢様」

がらり、と扉を開けてメノウ氏が参戦した。
タオルで一応はその美ボディーを隠しているが、もっちりとした柔肌の露出度が先程とは比べものにならない。
圧倒的肌色率。
私は恥ずかしさに彼女から背を向ける。
なんでだろう、女の子同士なのに、どうしてこんなにも緊張するのだろうか。
今の私は彼女と比較しても遜色のないレベルに美しいはずなのに。
この胸の高鳴りは、どこから来るのだろうか?
まさか、これが恋?
転生して、まさかの恋の相手が美少女使用人?
なんというトンデモストーリーだろうか。

「お嬢様、こちらへ」

「だ、大丈夫だ」

「何が大丈夫なのですか?お嬢様のお身体を手入れするのは私の仕事。毎晩……もちろん昨日も致しました。今日は何か問題でも?」

手入れとか、
毎晩とか、
性的でないはずの単語が何故か性的に聞こえてしまう。
高鳴る鼓動、
爆ぜる心拍。

「落ち着いてください」

気がつくと、メノウは私が浸る湯船に入ってきた。
しかも、私の背後にいる。
私を後ろから抱きかかえるように、座っている。

「私はいつ、いつかなる時もお嬢様の味方です」

優しく、
耳元で囁く。

「お嬢様だけの、味方です」

甘く、
口説くように。

「私の存在は、お嬢様のために」

私は抱きしめられる。
ぎゅと、
そっと。

「ありが……とう」

そう呟いたところまで、私は記憶している。
その先、何があったのか、何が起こったのか、あまり記憶にない。
ふんわりと、幸せな甘い時間だった、というのは覚えている。
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